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天照大神に問いただす「神意はいかに?」


ところは高天原.

ウズメは、ここにいる.

天照大神付きの側近中の側近、と言っていい.


しばしば気持ちの沈みがちな、大神オオミカミのそばに仕えて、何かと相談に乗ったり、面白い話をして、オオミカミノ気持ちを盛り上げるのが彼女の仕事のようである.


この有名な女神は、天孫降臨の随行団に加わり、

見るからに怪しげな、大天狗に、「天孫の行手を阻むもの、貴様何者!」

と手弱女ながら、詰問したとか、

のちに、その相手である、猿田彦と結婚したり、

海難事故で、夫を亡くしてからは、「猿女君」として、猿楽をはじめ、芸能の発展に尽くしたという.


そして、稗田氏の祖となったという.

古事記の原文を暗記してその記録に大きな功績があった稗田阿礼を輩出した、由緒ある家柄である.


「オオミカミ、葦原中国のものどもが、数名、高天原に向かっております.中には、須佐男様もいるようです.他には、なんと、事代主、建御名方、それに、異人と思われる、正体不明のもの・・・・・」


かつて、高天原に、「ちょっと姉さんに挨拶をして、それから母さんのところに・・・」

軽い挨拶のつもりで高天原を訪れて、ここを天空に浮かぶ地獄に変えた張本人、須佐男が来たことを最初に、大神に報告したのもこのウズメであった.


「あやつ、今度こそは、高天原を攻めに来たな、その証拠が、少ないとはいえ、手勢を引き連れてきたこと・・・」


天照大神、太陽の女神で煌びやか、と思われがちだが、その心は結構ネガティブである.古事記や、日本書紀を読まれた方なら、わかると思う.そして、彼女の言葉、というものはあまり伝わっていないし、国家の重要な決定も大体において、高木神やら、思兼神の意見を入れて下している.しかし、一度引きこもると、天界下界、あまねく暗黒の世界である.だから、お付きのものども、ウズメをはじめ、日々戦々恐々しているということらしい.


「しかし、あのものたち、一人として、武具を携えておりません.戦に来たとは思えないいでたちです.そして一人、女性にょしょうを連れております・・・」


「誰だ、その女は?」アマテラスが聞く.

「え、なんと、あれは、菊理姫!」思わず、ウズメが叫び声をあげてしまった.


「何!菊理媛が来たと?奴ら、何かに気が付いたか・・・・・」

アマテラスが不安げな顔をする.


「とにかく、ウズメ、彼奴等を、なんとか押し留めて、神殿の中に入れぬよう、頼みましたよ.

そして、全てそのほうが相手をしておくれ.私は、今は人と会う気分ではないから・・・・」


「ははあ!」ウズメは跪いた.

天照大神は、神殿の奥深くに隠れた.


「我々、葦原中国のものです.天照大神様に御目通り願いたく、下界より罷り越しました、開門、かいもーん!」事代主が外交儀礼に則って、案内をこう.


神殿の門が、ゆっくり、もったいぶった感じで、開いた.


門の向こうには、ウズメが立っている.女官の正装である.


須佐男一行の芦原中国のものたちは、ウズメの前にひざまづいた.


国譲り以降、葦原中国は、高天原に併合されて、いわば植民地なので、その使節団が、本国の宮殿に参るときは、自然とこの態度にならざるを得ない.


「その方ども、何用じゃ?」ウズメが尊大かつ短く尋ねた.

「はは、これは天宇受売神様.ここに控えるものども、芦原中国のものでございます

この度は、天照大神様にお尋ねしたき儀があり罷り越しました・・・」

事代主が、挨拶をする.


「ついてまいれ」ウズメに案内されて一行が神殿の中庭を行く.


神殿の方にではなく、宮殿の、前庭、右手に小さないおりのようなところに案内された.


外から見て、古くて、小さくて、見窄らしいたてもの.いおりの周りには雑草が生い茂っている.


とても外交使節団を迎え入れる場所とも思えぬ.


中に案内されてまたびっくり.畳のない、板敷の部屋.薄っぺらい、座布団だけ、人数分あてがわれた感じである.


「う、これは、いささか、無礼ではござらぬか!」普段は温厚な、事代主が、怒りを爆発させそうになる.


「まあ、まあ、落ち着いて・・・・」須佐男が、激昂しそうな、事代主の膝をぽんぽんと軽くを叩いて、宥める.


「今日は喧嘩しに来たんじゃねえんだ.まあ、落ち着いて、な・・」

「俺たち、どうせ、植民地の朝貢団ってことですか?」建御名方もブスッとしている.

「まあ、落ち着け.天照から情報をちょっとでも引き出すのが今回の目的だ、それを忘れるな」と須佐男がいう


隣で、ルシフェルも、座布団の上に正座して、黙って目を瞑ってしきりに頷いている.


須佐男は、流石に正座はしないで、あぐらを描いて、袴の裾をたくし上げて、自分のすね毛を引っ張りながら、若い外交官たちを宥めている.








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