レトの胸騒ぎ
レトはここ数日、自室に篭りきりである.
彼女の部屋には、天井を覆う、天球図があり、
そこかしこに置かれた、「魔法の」水晶玉?で、天体の運航が部屋に居ながらにして、つぶさに知ることができる.
太陽の自転、
月の道かけ、
惑星の運航、
遠い銀河に生まれては消える星々の一生のことまで
・・・・・
皆は、彼女の執務室のことを「光と闇の部屋」、と呼ぶ.
「アポロンと、アルテミスを呼びなさい」
彼女はいつものように穏やかに、そして静かに話す.
「それと、ヘルメスを呼んでください.東の島国の、三貴子に確認したいことがある.急いで・・・・」
穏やかで、静かに話すが彼女の指示は矢継ぎ早にくる.
「それと、レア様、おばば様にもすぐに会いたいと伝えてください.本当はクロノス様とも話をしたいのですが・・・・・・・」
ヘルメスが、日本に向けてすでに飛び出した直後、
レトの執務室にやってきたのは、アポロンとアルテミスの姉弟である.
「お母様、何か?」アルテミスが尋ねる.
「お母様からお呼び出しとは珍しいことです、何か?お急ぎですか?」アポロンも少し不安げに尋ねる.
レトは基本的には、自分から希望を言うことはない人である.多くは受け身、そして自発的に何かをしようとはしない人なのである.母のことをよくわかっている、姉と弟は、少し不安そうな顔をする.
「胸騒ぎがするのです・・・・」
「胸騒ぎ?」
「天体の動きが不穏です、これを見なさい・・・・」
「私にはよくわかりませんが・・・」アポロンがいう.アルテミスも母の顔を見ながら、アポロンと同じくよくわからないという顔をした.
「日本の神々、三貴子に、すぐ会いたいと、今ヘルメスを使いにやったところです.」
「親父に連絡は?」アポロンがいうと、
「言わずとも、ヘルメスのことですから、お父さんにも、伝えてくれると思います.」
「それにあの人は、危険を察知する能力は、並外れて、高い.私が言うまでもなく・・・・とにかく別館の方々も皆動いてくださると思う・・・」
「しかし、母上、須佐男様は、すぐに会えるかもしれませんが、天照様と、月読様、なかなか、会えないのでは・・・・」
「そお、天球の運動、最も強力に支配する、太陽と、月の神々、最も尊い、日の本の神・・・」母ば静かにつぶやく
続けて、
「特に、天照、あなたの心をまた闇が支配しようとしているのでしょうか、私はそれが心配・・・」
「大きな闇の力が、天照様の心を支配しようとすると、ぼやぼやしていられませんね、私たちもヘルメスを追って、日本にいきましょうか?」アルテミスが言うと、
「いえ、日本の神々のことはヘルメスと、お父さんに任せましょう、アポロンにアルテミス、あなたたちはこれからすぐ、おばば様と、そしてできたら、おじじ様・・・クロノス様のところに使いに行っておくれ」
「クロノス様?なぜ?」アルテミスが母に聞く
「それは、いずれわかります.そして、この重大局面を打開するには、クロノス様の力が是非とも必要・・・・」
「時間を・・・」母がぼそりと呟いた.
「時間が?」アルテミスは、母の言葉を自分なりに修正してしまった.
母が、言った、「時間を」ではなくて、
「時間が」・・・「ない!」と理解して、言いつけに従って即行動を開始した.
しかし、レトが言ったのは、確かに「時間を・・・」であった.




