北陸スケバン、頂上決戦!
西から、菊理媛が攻めてきた!
親知らずを見下ろす、北アルプスの山の頂上.西の空を睨みつける、雪姫の前に、突然そいつは現れた.
九つの頭のある、龍
十一面の顔を持つ巨大な仏神
・・・
「や、ほー・・・・・」
と陽気で能天気な声をあげているように聞こえたが、高速で近づいてきたかと思うと、あっという間に雪姫の頭の上を通り過ぎて、はるか北東の方角.さらに北に少しずれて佐渡島の上空にまで飛んでいってしまった.
「おっといけねえ、行きすぎた!」
と佐渡島の上空で、Uターンした、その「神」は、急いで、戻ってきて、雪姫の前に立ちはだかった(?).
なんかニコニコしている.背景は、観音様と九頭龍だが、本体は、ちょっと派手だが、なんか優しそうにも見えるお姉さん・・・・
「あんた、雪姫、だろ?」ニコニコと笑みを浮かべながら聞いてくる.
「そうだ・・・」雪姫は硬い表情を変えない.
「あたし、菊理媛.加賀国の白山の神さ.」
「その白山の神が、越後に何をしにきた!」雪姫の詰問である.
「え?何しにって言われても・・・
越後国、なんか楽しそうだから、遊びに来たんだけど・・」
「だめだ、ここを通すわけにはいかない、私にはこの国を守る役目がある」
「ダースケ、だすけ、だすけ・・・」イエティも同意しているらしい.
「ええ、なんで・・せっかくだから、仲良くしようよ、信濃川の河口あたりで、あたし、住んでみたいんだよね、白山と新潟行ったり来たりの時ここ通るしさ・・・」
「じゃ、私とタイマン勝負をして勝ったらここを通す、それでどうだ!」
「え、そんなんでいいの?」ニコニコしていた菊理媛も顔が少しまじになった.
そして、口元にはかすかに、不敵な笑みを浮かべて、
「言っとくけど、あたし、かなり強いよ・・・・」
「面白い!」
菊理媛と雪姫が、対峙した.
雪姫は手にした唯一の武器のである竹刀を縦横無尽に繰り出す.
菊理媛は、
「はい、」
「ほ!」
「それ・・・」
「よっ、」
と雪姫の攻撃をニコニコしながら、僅かに1寸の間合いで全て避ける.
五条の橋の上で、弁慶の攻撃をひらりひらりとかわした牛若丸よりもさらに華麗な舞であったと思われる.
敵を一時見失い、背後を取られた、雪姫.
菊理媛はその肩を、トントンと叩いて、振り向いた、雪姫のほっぺに、人差し指を突き立てた・・・・
「おのれ、おちょくりおって・・・・」
もう怒ったぞ、という顔をした.
かなり多くの男をその容姿で、
遭難させた?
あるいは腑抜け?にした経験の多い、
雪姫が、ちょっと怖い顔になった、のだろう.
空高く舞い上がると、両手を広げて、その手を大きく左右に振る.
すると、そこから、強い北風に煽られたような、大粒の雪が、大量に、そして容赦無しに吹き出してきて、菊理媛に襲いかかる.
「お、なかなかやるね・・・」
「六六変じて、九九鱗!」小さくつぶやいた菊理媛は、巨大な九頭龍となった.
その龍のそれぞれの頭から、大量の火炎やら、暴風やら、水やら、
それを雪姫の放つ、吹雪に向かって、吹きかけた.
「ああああ・・・」と日本海に向かって飛ばされた、雪姫・・・・
「だすけー」とイエティが宙を舞って追いすがり、雪姫を抱き抱えて、二、三回宙返りをして、海沿いの狭い、親不知の難所の陸地に着地した.
続いて菊理姫も浜辺の岩の上にひらりと降り立った.
「ごめんごめん、ちょっと力入り過ぎたよ、今日のところは、アイコ、だね?」菊理姫がいう.
「また今度改めて、勝負しようよ、次は私が勝つよ・・・」
「いや、今日は、私が負けていた.これから何度勝負しても、私はあんたには勝てないと思う.悔しいけどね.」
雪姫が続けていうには、
「だから、わかったよ、あんた、このまま東にいきな、特別にここを通ることを許す.ただし・・・」
「ただし・・・何?」
「私と・・・」
「うん、うん」
「私と、どうか友達になってください!」
雪姫の抜けるような白い肌が、少し赤みを帯びているようであった.
ちょっとはにかんだような顔.
下を向いて、目を瞑り、右手を差し出した.
「お願いします・・・・」結構、真面目な懇願であった
「いいよ!」菊理媛が右手を差し出して、雪姫の手を握った.
「だから最初からわたし、こうしたくてきたんだっていわなかったかい?」
「え、そうだっけ?」
その後、いい友達になった二人の交流が始まったということである.
白山から、新潟に行く時、菊理媛は必ず、雪姫の家を訪れた.
山を散策して、夕食のおかずの海やら川の魚を釣ったり、
罠を仕掛けて、山鳥や猪を狩ってくる、
山菜やキノコ、筍を取ってきたり、
ウララかな春の日には、野原に出て、
野山に咲く花を愛で、
花の蕾のついた、木の枝をかんざし代わりに、
お互いの髪に飾ったり、
レンゲや、白詰草を束ねて、編んで、冠にしてみたり・・・
時に、興が向けば、
雪姫が笛を吹き、イエティが鼓をうち、
菊理媛がそれに合わせて舞を舞う
ちょっとお腹がたるんできたなと言う時には、
野山をかけて、
武芸の立ち合いの練習をしたり、
ゆうげには、
越後のお米を美味しく炊いて、
山川海の食材を、料理して、
皆で楽しく食事をする
囲炉裏端で焼いた、串で刺したあゆを、頬張りながら、
姫たちは笑いが絶えない
見守る、イエティの毛に覆われた深い目も、
ニコニコと優しげである.
ごくたまに、一緒に勉強したり読書をして、
夜中まで楽しげに語り合ったということである.




