娘が彼氏を連れてきた!
日本列島、龍の形・・・
しかし、この龍というか、この龍に限らず、
龍とか蛇とか、細長い紡錘形で、お腹の当たりはくびれていない.
日本列島の龍、ちょうど、お腹の当たりが一番、太い、メタボ体型である.
娘は、その一番、日本列島ドラゴンのお腹の太いところを横断して、彼氏に連れられてやってくる、予定である.
折りあしく、と言うのだろうか、ちょうど、台風、7号と、8号が西の方から、日本列島の太平洋側、長軸に沿ってやってくる時で、梅雨前線の影響もあって、各地で線状降水帯が発生して大雨の被害が懸念される.
東海道新幹線は、当日朝から運休になるらしい.奥さんは前の日にやってきてドクトルのうちに泊まった.
「ええ、これは、ひどい、しかし、8号と9号が一緒でなかったのはまだしも・・・」とドクトルが意味不明のことを言うから、奥さんは聞いてみた.
「なんで、7号と8号だと良くて(よくはないけど)、8号と9号はダメなの?」
「考えてもみなさい、9というのは、陽数、つまり奇数の中で最大の数で、8は陰数の最大の数、つまり一桁の数字の中ではこの二つの数字が最強と言っていい.そしてその合計である、17という数字には、さらに深い意味がある.17条の憲法って知ってるでしょ、あと、御成敗式目は、51条、これも17の倍数です.だから8と9を足すというのは古来から日本では深い意味があったのです」
「はあ・・・」
例によってドクトルの話は、深遠すぎて、奥さんには理解できないし、彼女は理解する必要性をこれっぽっちも感じていないのだが.
「まあ、大事なものは人それぞれだから・・・」
台風、どうかすると、最強の数の組み合わせで来たら大変だったろうに(まあ、7と8でも同時に来たら大変なのだが・・)それに加えて、台風の経路に沿って、地震でも起こったらおおごとだろうに・・
こんなところで、南海トラフ地震・・・
「日本列島の太平洋側、壊滅・・・・」
考えただけでもゾッとすることだが.
しかし夜中に本当に地震があった.
「明日の雨が、ひどくないことを願いばかりですね」
と9時過ぎに就寝した.
午後10時頃に、かなりの揺れを感じた.
棚の本は落ちるほどではないのだが.すぐにテレビをつけて地震情報を聞く.
震源は富士五湖のあたり?山梨県は、震度6だったと言うから結構な揺れである.
揺れは一回だけで、交通インフラに大きな影響はなかったらしい.津波の心配もないらしい.
翌日.
縦に長い、日本列島、横断するのは、短いところだと、せいぜい、兵庫県とか、青森県の数十キロくらい?
一番長い、メタボのお腹の部分.富山、新潟から、日本アルプスを跨いで、長野県を通って静岡に出るところ.
最短を横断で、300km以上ありそうである.さらに高い山を迂回してくるから、車の走行距離は、350から400kmくらいにはなるらしい.一番大変なところを車に乗って彼氏に連れてきてもらうらしい.
「台風、大雨、大丈夫だといいが・・・」
朝は、雨が降っていた.しかし、豪雨というほどではなかった.
昼ごはん買いにいくとき、傘も買いに行きますか・・・・
奥さんはよそ行きの傘を持っていないから、専門店行ってみる.
落ち着いた茶色の、おしゃれな、花柄の傘、
「これなら日傘にも使えるわ」と喜んでいる.
雨は思いのほか早く止んで、というか、それほどの雨量ではなくて、高速道路もつつがなく、娘たちは、予定の時間よりも、3時間ほど早く到着したらしい.
午後は、のんびり過ごして、ちょっと昼寝をしたら、さっきのような夢を見たというわけである.
ダラダラと出かける支度.
待ち合わせのレストランまで、ドクトルの家からは歩いて、20分くらい?
ちょっと早めに出かけますか・・・
背広を着ていくほどではないのだが、いつもの運動靴ではちょっと・・・
今日は、革靴を履いていくことにした.ズボンにもちろん穴は空いていない.
奥さんは、若い頃にきた、ワンピース.歩いていくときは運動靴で、レストランについてからハイヒールに履き替えるつもりらしい.
午前中に買ったおしゃれな傘を持って.
雨が上がってよかった.
せっかく買った傘はさせないから、それはちょっと残念だったが.
娘が宿泊するホテルに行ったが、
「あれ、部屋にいないみたいなんだけど・・・」
向こうから、若いカップルが近づいてくる.
二人してドクトルに向かって手を振っているではないか!
「あれ、なんと、小さい女性、自分の娘ではないか?」
奥さんは、ホテルの中に入って事務の人と話している.
間近で見る、若いカップル、女性の方は、確かに我が娘だ.
よそ行きのワンピースは、お母さんのお下がりらしい.
眼鏡をかけた、肥満していない若者が、ドクトルに丁寧に挨拶してきた.
名前を自己紹介されたが、ちゃんと覚えていなかった.
ホテルの玄関の前、排水の網の近くて、何を考えたか、母は、ルビーのついた、ネックレスを首から外して、娘に渡そうとしたら、その大事なルビーが落ちてなくなってしまったらしい.
ドブの中に転がり落ちた感じはないし、下の排水溝の中をのぞいてもなさそうである.
ホテルの部屋の中で、服の中を調べてみましょうということで、母と娘はホテルの部屋の中に行ってしまった.
彼氏に「やれやれですね、いつになるか分からないから」と言って、先にレストランに行き、そこで待っていることにした.
宿泊のホテルから、レストランまで、歩いて、200歩くらい?
座って待っていたが、なかなかこない.様子を伺いにドクトルは、携帯で電話かけたり.間も無く彼女たちがやってきて、レストランで合流した.
結局ルビーは見つからなかった.つまり紛失したらしい.
あまり気にとめていない様子であった.
「それではお飲み物は・・・」店の人がメニューを持って注文を聞きに来る.
それぞれ、飲み物を頼んだところで、彼氏さんは立ち上がり、
「娘さんと、結婚させてください!」
直球の申し出だった.カーブとかシュートとか変化球ではない.
しかも、かなりの豪速球だ.
ドクトルは野球をしないし見ないからその辺の例えはいい加減だが.
(おやおや、いきなりそうきたか・・・・)と思い、ドクトルは少し動揺した.
「あ、まあ、こんな子でよければ、むしろもらっていただけるのはありがたいことで、・・・お願いいたします」
ドクトルは、ちょっと緊張して答えた.
しかし、何か言ったほうがいいのかなと思い、余計なことを言った.
「あ、この子の他に妹もいますし、お母さんも・・・・
一緒にもらってくれると嬉しいですが.」
「いや、それは・・・・」
あっさり断られた.
それもそうだ、一人だけでなくて、さらに追加で、2人も面倒見てもらうのは申し訳ない.
木花之佐久夜毘売が、邇邇芸命に嫁ぐとき、大山津見神は、姉の石長比売も一緒に片付けてしまえと、姉むすめも一緒にどうですかと勧めてみたが、案の定というか、お姉さんの方は断られてしまったというのは、日本神話の有名な話である.
「まあ、一人だけでももらってくれたら、それでいいか・・・」
「お父さん、ひどい・・・」娘に言われて、
「本当に、ねえ・・・」奥さんには呆れられた.
彼氏は、それに対して、軽く受け流してくれたから助かった.
乾杯の後、料理が次々と運ばれてきた.
和やかな会食が続いた.
こんなに幸せそうな娘の顔、これまでに見たことがあっただろうか・・・




