神々の狂宴
別館の一行、7人は、8人掛けのテーブルになんとか収まった.
シェフの奥さんが、入り口で振り分けた、横一列にならんで、そのまま一人しか通れないドアを押し通ろうとする彼らを、テキパキと一人ずつテーブルに連れて行く.
連れて行く順番は、
1.菊理媛
2.須佐男
3.ミタマ
4.ルシフェル
5.アテナ
6.はるな
7.ドクトル
そして、さらに男女は向かい合い、隣り合う配置になっている.
つまり、
壁側、入り口から一番奥、真ん中に、菊理媛が座った.
つまりテーブルのはじに座るかんじ.
残りの6人はその左右に3人横並びで座る.
菊理媛の左に須佐男と右にミタマが向かい合って座り、
須佐男の隣に、アテナ、ミタマの隣がルシフェル、
ルシフェルの隣が、はるな、その向かい、通路寄りが、ドクトルである.
菊理媛から見て、左手は、須佐男、これは古来中国や、日本の宮廷の席次は、天子南面する、そして高貴な臣下は、日の昇る方角、つまり東の方から順に座る、つまり南に向いている、天子の左という原則に従った、らしい.左大臣が右大臣より偉い、理由である.
そのあとは、適当に男女を向かい合わせ、隣り合わせ、にして、いかにも「幹事」のドクトルは一番末席にしたということらしい.
レストランのマダム、シェフの奥さんは一瞬のうちに、客をそのグループの中で序列付けて、座席の配置を決めたということで、まさに「プロの仕事」である.
須佐男もルシフェルも異論を挟む余地はない、というか、あまりそういったことに関する知識がないから、
「まあ、なんでもいいか」
とか
「おお、早く食いてえ」
という感じだったかもしれない.
「あの、ちょっとよろしいですか・・・」
ドクトルが、菊理媛と、須佐男に耳打ちした.
「申し訳ありませんが、くれぐれも、店の中でいつもの追っかけあいっこしないでいただけますか、お店の人に迷惑ですし.あと、絶対、剣を抜かないこと、龍に変身しないこと.出禁にでもなったら・・・」
「おお、俺はちゃんとわかってるぜ、十握剣はちゃんと家に置いてきたぜ.
それくらい、子供じゃねえんだから、わかってる、わかってるって・・」
須佐男が言うと
「私が挑発しなきゃ、あいつもかかってこないからさ、わかってる、わかってるって・・」と菊理媛も大人しくしていてくれるらしい.
なんか二人の話し方、特に「わかってる、わかってるって・・」は同じ言い方だった.
似たもの同士、プラス同士、マイナス同士は反発すると言うことか?
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一同が席についたところで、
「お飲み物はどうなさいます?」シェフの奥さんがドリンクのメニューを持ってやってきた.
「おや、これはフランスのワインとか言うお酒だね、わたしゃ、お酒は嫌いじゃないけど、日本酒ばっかり飲んでたからね.日本酒はないのかい?」
「こちらにございますよ.」
「越後のお酒なんかは・・・・」
お、あった!
「お、色々揃えてるね・・・」
久保田(久保田・長岡市)「千寿」「萬寿」が有名.
八海山(八海山・南魚沼市)雑味の少ない上品な辛口.和食との相性が非常によい.
越乃寒梅(越乃寒梅・新潟市)「幻の酒」と呼ばれたこともある名酒.淡麗辛口の代表格.学生の飲み会では、1級酒はまず出てこないし、店に置いてない.
〆張鶴(〆張鶴・村上市)(しめはりづると読む)上品で繊細な味わい.地元でも特に評価が高い銘柄です.
「お、私、村上にいる時、〆張鶴、飲んだことあります.」
アルコールを基本飲まないドクトルが新潟で飲んだことのある唯一の日本酒といってもいいかもしれない.
菊水 「ふなぐち菊水一番しぼり」は生原酒の定番で全国的に人気.
上善如水 水のように軽快で飲みやすく、日本酒初心者にもおすすめ.
吉乃川 新潟最古級の酒蔵の一つ.定番の食中酒として親しまれています.
麒麟山 超辛口で、刺身や焼き魚との相性が抜群です.
鶴齢 淡麗さの中にも米の旨味をしっかり感じられる酒.
雪中梅 新潟では珍しく、やや甘みのあるやさしい味わい.
「ふん、何が越後のお酒、だ、ウワバミは、八塩折之酒でも飲んでりゃいいのさ・・・」
と須佐男が悪態をつくと、
「お父さん!喧嘩はダメでしょ!」とミタマが目を釣り上げて、ちょっと牙を剥く.
「あ、はいはい、喧嘩はダメだったな・・・
ところで、島根県、出雲地方のお酒ってなんかあるか?」
「島根県・出雲地方のお酒という意味でしたら、代表銘柄は次のようになります」
李白
月山
七冠馬
出雲富士
大御所の二人は、フランス料理店ということを忘れて、居酒屋で好みの日本酒を頼みそうな勢いになってきた.
「え、でもなんでフランス料理屋に、こんなに、出雲とか越後のお酒が取り揃えられているのですか?」とドクトルは素朴な疑問を、マダムに聞いてみた.
「いえ、なんのことはない、シェフが、つまり旦那が、新潟県の出身で、私が島根の出身ってだけですけどね」
くくりの姐さんは、〆張鶴を頼み、須佐男は月山を頼んだ.
ミタマは、白ワイン、なんていう銘柄かはよくわからないから、「これ」と適当に指を差しいておいた.
アテナはそれをみて、ちょっと背伸びをしたくなった.
スパークリングワインを指さしそうになったのだが・・・・
アテナはまだ見た目が未成年ぽいので、マダムに止められた.
「お嬢さんは、ノンアルコールですかね」
メニューの一番下にノンアルソフトドリンクが書いてある.
アテナは渋々と、ジンジャエールを頼んだ.
「じゃあたしもジンジャエールにしようかな.お店の特製、って書いてあるし」
アテナなとはるなはジンジャエールにした.
「まあ、ここには、ネクタルはないみたいだしな・・・」
ドクトルとルシフェルは、烏龍茶を頼んだ.
「今日はどのような、お集まりで?何かの記念日?」マダムが尋ねてきた.
「まあ、かわいい娘に頼まれて、断りきれないで、というか・・・」
ルシフェルがいうと、
「まあ、娘が他のうちの親父が、優しいとかなんとかいってくるもんで、それに対抗して、というか、荒ぶってばかりもいられねえっつうか.まあ、俺も文化人の端くれ、みたいなもんだしな・・」
須佐男のいうことはよくよく聞いみると支離滅裂と言って良い.要するにミタマにうまい具合に乗せられただけである.
「私たちは違うよね、はるな.子供たちにこんな素晴らしい、食文化があることを伝えるため、だよね」ミタマが言うとはるなも、
「え、あ、まああ、そうかも.食文化、大事よね・・・」
「いや、いや、美味しい料理を食べること、そのこと自体に意味があるとあたしゃ思うね」
とアテナは普段のおてんばの喋り方である.
「とりあえず、乾杯をしましょうか、音頭は、菊理媛の姐さんにお願いします」
幹事のドクトルが言うと、
「今日は、私一人のためにこんな会を設けてくれてありがとう!」
と菊理媛がいうと、
「ちぇ、図々しくねえか、後から割り込んできただけだろうがよ、このウワバミゆばーば」素戔嗚がすかさずチャチャを入れるというのは、いつもの図式である.
しかし今回は、一同が、
「まあまあまあ・・・」と取りなして、二人をいつもの通りにはさせない.
菊理媛はスピーチを続ける.
「でも、せっかくだから皆んなで楽しもう.
これをご縁にして、
因縁のあるものも、
父も娘も、
家主も店子も、
師匠も弟子も、
医者も患者も、
先生も生徒も、あ、子供たちは皆置いてきたか・・・
まあいいや、
男も女も
出雲も、越後も、
ギリシャも日本も、
みんな一括りにして、仲良くしましょう!」
「かんぱーい!」
神々の饗宴、いや、「狂宴」の始まりである.




