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「セントミカエル病院」へようこそ!

面接で(?)採用が決まって、楠本はるなが「セントミカエル病院」に初出勤の日である.


はるなが女性の事務職員の制服に着替えたあと、事務長さんが色々と病院のことを教えてくれた.


はるなはおそるおそる質問する.


「あのー、ここの理事長さんとか、院長先生とか、ゴリゴリのキリスト教徒、とか・・・ですか?」


「あ、いや、どうだろうね、よく知らないけど、違うんじゃない、だって、理事長の部屋に、神棚があるし、マリア様の像とか、十字架のキリストとか、全然ないよ.

それにこの前、理事長のお父さんだか、お母さんが亡くなられた時も、お葬式はお寺であったみたいだし、おうちの宗教は曹洞宗だったかな?理事長はいつも、般若心経唱えてるよ.」


「あ、そうですか・・・・」


玄関には、「セント」のつく、東京のあの大きな病院みたいな、英語の理念を書いた、看板は置いてないみたいだった.(あの看板の日本語訳は結構怪しかった、かな・・・)


地下鉄サリン事件の時にチャペルを救急処置室にしたというあの病院である.

そしてあのチャペルには、酸素の配管があるらしい.


内科だか救急科の先生が、サリン中毒にピンときて、PAMとか硫酸アトロピンを使って多くの患者さんを救命したと言うことは有名な話しである.


ドクトルとはるなのセントミカエル病院は、セントがつくのは同じだが、もうちょっと規模は小さい.


「いやーうちの理事長、そんなに理念とか厳しくない人で、フツーの日本人の宗教観みたいだよ・・・」


「あーそうですか・・・」ちょっと残念そうに、はるなが言うと、


「え、なんか残念そうだね」

「いえいえ、あの、私、大天使ミカエル!みたいな強くてかっこいい、理事長がいたりしたらどうしましょう、って思っていたもので・・・」


「ははは、うちの理事長、禿げて太って、喧嘩は全然弱し、毅然としたところが皆無だから、それはないな、ははははは」


(こんなところで新人職員に理事長さんの悪口言ってもいいのだろうか、この事務長、もうすぐ首になるのでは・・・)はるなはちょっと心配になった.


事務長に病院を一通り案内してもらうところであった.

廊下の向こうから、ドクトルが歩いてくる.


「あ!ドクトルせんせーい」大きな声でドクトルを呼んで大きく手を振る.


ドクトルは、ちょっと恥ずかしくなって、知らんふりをして、どっかの病室に入り込もうかとも思ったが、あいにくそう言う部屋はなかった.


それでも、ちょっと下を向いて、知らんふりを続けていると、なんとはるなは、手を振りながら駆け寄ってきて、ドクトルの腕を掴んだ.


「ドクトル先生、何知らんふりしてるんですかあ?事務長さーん、私、ドクトル先生に病院の案内してもらいますから、もういいですよ、これまでありがとうございました」

と、事務長を追い返してしまった.流石に掴んだ腕は外してくれたのだが.


結構ぴったり寄り添って、ドクトルと一緒に廊下を歩く.


「いや、はるなさん、あの、ちょっと近くないですか・・・」

「えーなんで、いいじゃないですか、同じ職場の仲間なんだから!」


「いや、まあそうなんですが、ほら、看護師さんたち笑ってるでしょ・・・」


若い看護師さんたちの3、4人のグループとすれ違った.夜勤あけ?


「ドクトル先生おはようございまーす.」

「あ、先生、昨日と別の子連れてますね、その子とはどう言う関係ですか?」

「ああ、先生また、新人狙いですかあ・・・」


「え、いや、またーって、昨日は誰も女の人連れてませんけど・・・」


「きゃー!そういえば私が新人の時もドクトル先生、いやらしい目で私のこと見てましたよね」

「はははははは・・・」


「そ、そんな、こと、あんまりからかうと、せ、セクハラですよ」

ドギマギしならがドクトルは若い看護師さんたちをやり過ごす.


「はははははは、あなたも、ドクトルに、弄ばれないように気をつけてね!」

「今年で何人目だろ、ドクトル担当の事務の子、皆長続きしないんだよね、はははは」


「もお、先生!あの子達が言ってた、毎日違う女の子連れて歩いてるんですか?セクハラして何人もやめてるんですか!もう、ぷんぷん!」


はるなは指を立てて、顔を近づけて、ドクトルの目を見て、ほっぺたを膨らませて見せる.


「そ、そんなわけないでしょ、毎日いじめられて、辞めたくなるのはこっちの方ですよ・・・・」


気を取り直して、ドクトルは病院の各部署を案内して回った.


1階は、外来.外科とか、整形外科とか、脳外科、非常勤の腎臓内科とか

玄関を挟んで向こう側に、内科の外来.


循環器内科は、ちょっと離れたところにあって、ドクトルはしばらく知らなかった


MRIは3Tと、1.5Tが操作室を挟んで並んである.

CTは2台ある.救急室の方に一台、外来からエレベータの前を曲がったところに、一般撮影とか、もう一台のCTがある.


放射線科の診断用の撮影は大体、一階に集まっている.核医学とか放射線治療室は地下である.


放射線科の一角の隣に臨床検査室がある.

脳波室、エコー室、心電図室・・・


放射線の撮影室の向こうに救急室がある.


2階に上がると、手術室、集中治療室、心臓カテーテル室.


外来部門は、2階には歯科とか泌尿器科があって、他に、検査科とか病理科がある.


手術室に、最新の血管撮影装置を置いて、血管外科の先生が、大動脈のステント入れたりできるみたい.


脳外科は、他の大学の先生が来て、頸動脈のステント入れたり、血栓回収したり、コイル入れたりしてくれたこともあるが・・・・

ドクトルも時々その手伝いをしていたが


一般の手術室は、8つある.


3階は、循環器科の病棟.当直室

4階から上は、北病棟と南病棟があって、4階の北病棟は外科とか、脳外科の病棟.


怒ったような顔をした若い先生が、廊下を走っている.

ドクトルがはるなを連れて歩いているのと、すれ違いざま、しばらくはるなのことを目で追視していたことをドクトルは厳しくチェックした.


「あれは外科の先生.おなかを切る先生」

「へーなんかおっかなそうですね・・・」


5階も外科とか、整形外科

病棟のクラークさんやら、看護師長さんにはるなのことを紹介する.


「ドクトルとはどういう関係?」

「あ、恩師のお嬢さんですよ」


「え、私とドクトル先生って、夫婦とかに見えませんかーあ?」とはるながいうが、

「うーん、そうは見えませんね.まあ良くて父と娘・・・」


「あ、そうそう、娘みたいなもんだねえ」

ドクトルがなんか嬉しそうな顔をしたのを、はるなはちょっと気に入らない.


6階には、療養病棟.

7階には医局とか、管理部門がある.あとはリハビリの訓練室.


半円形の病棟、真ん中にナースルームにつながる渡り廊下があって、ガラス張りで向こうが見える.医療ドラマのロケに使われたこともあるらしい.


向こうから看護師さんがドクトルに手を振る.ドクトルはガラスに、反対向きに、「バーカ」とか

「ブース」と書いて、それを見た看護師さんは、口を膨らませて、怒った顔をして、プイッとどっかに行ってしまった.


毎度のことみたいである.


「へー、なんかおしゃれな病院ですね・・・」

はるなは感心するのだが、

「でも広くて、迷子になっちゃいそう」


「はるなさんは、1階の外来の事務、受付の仕事ですかね.事務長に何か言われましたか?」


「あ、事務長追い返して、先生のとこ来ちゃったから、自分の仕事のこと何も聞いてなかった・・・」


はるなは、束の間のドクトルとのデートを楽しんで、自分の仕事のことを聞きに、事務長のところに戻っていった.


「やれやれ、箱入り娘、これからどうなることやら・・・・」


ドクトルは、事務長室に急ぐ、はるなの後ろ姿を見送った.



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