生体内における、酸化還元①「TCAサイクル」
オリンポス工業株式会社中央最先端技術研究所、カンファランスルームにて.
生体内の脱水素酵素が実際にどのような働くのかを視覚的に、示すモデルを開発しようという企画である.
『生体エネルギー生成機構(つまり生体が分子から水素と電子を抜き取る過程)の視覚化モデル』の開発プロジェクトである.
例によってオリンポスの開発部の面々と、別館の科学班(ドクトル、海丸君、静香、補欠のルシフェル)のメンバーが会議をしている.
「生体の酸化・還元がどのように行われているか、その検討ということだが、モデルを作るとしたら、やはり.円周上を走る、おもちゃの列車みたいな形になるかね?」
ヘパイストス社長が言う.
「鉄道模型とか、プラレールみたいな、線路を丸く繋いで、その上を、いろんな列車の模型を走らせてみました、では、なんかこの会社、おもちゃ作る会社になったんだ、と思われて、軽くみられるかもね」
技術主席顧問のアテナは、あまり、簡単な仕事じゃ、ダメだぞ、と言うように腕を組んで参加者を睨みつけた.
普段の彼女をみていると、食いしん坊のただの若い娘で、ちょっとばかり喧嘩が強いかも、と言う感じだが.
流石に、これまでに名だたる英雄たちの後ろ盾となり、都市国家アテナの守り神であり、戦争と知恵と学問と、工芸の神だけある.
妥協を許さない!と言う気迫が彼女の目の中でメラメラ燃えている.大リーグボールを初めて投げる星飛雄馬のようだ(若い人は知らない?)
「でもよ、いろんな物質が変化しながら、分解していくのを視覚的に表現しようと思ったら、鉄道模型みたいになるのしょうがなくね?」と四天王の増長天朱雀がいう.
「それこそさ、トヨタ自動車みたいに、各パーツをくっつける作業、どこで、何をやるって考えて、自動車工場の流作業を、丸いレールの上でやると考えたらどうだろうか?」多聞天玄武の意見はいつもスマートだ.
「それはなかなか、効率的でいいかもな.作業をするロボットをいろんな反応を触媒する酵素に見立てればいいわけだからな」広目天白虎の意見を言わせるとそこはかとなく頭が良さそうである.四天王の中では主に、戦の記録を担当している.そして彼のアトリビュートは戦の時でさえ、巻物と筆である.
「でもね、結局、炭素原子、三つの化合物を、さらに水と、炭酸ガスにする反応だろ、自動車の製造工場ではなくて、解体工場のモデルじゃねえの?」
持国天青龍の意見も尤もである.
「まあ、そうだな、まるまる一台の車を半分にして、そっから各パーツを取り出して、エネルギーを取り出すって過程だから、あんま、自動車の工場とかは、例えとしてはよくねえかもな.分解工場もおんなじで、結局は分解してもエネルギーは出ないもんな.アテナ、なんかいい考えはねえか?」社長がアテナの意見を聞く.
「うーん・・・」アテナもちょっと困ったと言う顔をした.
「そうだよね、なんかをぶっ潰して、エネルギーを取り出して、最後は、もえかすだけ残って、効率的に排気、って言うんだからね.工場だとなんか例えるのがむづかしいかも.工業廃棄物ができちゃうもんね・・・・」
工場から水銀やら、カドミウムやらを排泄するのはもってのほかだろうが.
一昔前なら、工場廃棄物が、炭酸ガスと水だけならそれはなんとクリーンな工場だということになろうか?
しかしこの頃は、工場からの炭酸ガスの排泄も結構厳しい基準がある.
オリンポス工業のスタッフたちは、皆考え込んでしまった.
今日もこの会議に参加させてもらっている、静香が意見をいう.
「私は、やっぱり、何か現実のあるものとか工場に例えれば、と言う形にするより、クエン酸という最初の産物を、いろんな形に変えながら、中間のエネルギーを取り出して、原料だけ補充して、サイクルを回転させる、その目的の円形のベルトコンベアでいいのではないかと思うのです.
コハク酸とか、アルファケトグルタル酸なんかは、分子の形そのままで表現して、酵素に見立てた、作業ロボットが、決まった場所を切断して、そこに新しい部品を繋げる工程をそのままみせる、みたいな・・・
それで、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)の変異があって、2HGが、できてそれが、いろんな悪性腫瘍発生の元になるなんてことも追加でモデルにしたら、結構いいのができるのではないかと思いますが.」
「螺龍と繋ぐと、発癌のメカニズムを視覚化できるかも・・・」
「いや、まだ、螺龍、ヒストンタンパクを動かして、転写複製を変えると言うところまでできないからな」
「あ、そうか・・・」
「まあ、それは今後の課題として.」
「生化学でわかっていること、ロボットのモデルにすることは、螺龍で大成功したから、このモデルでも不可能ではないと思うのですが、酵素の反応、ミクロの世界で起こる、ブラウン運動とか、熱の影響とか、自由エネルギーとか、色々とめんどくさい数式が出てきそうなんですが・・・・」
ドクトルの意見は化学反応を、マクロの模型にしてしまうのはどうか、量子の運動と位置を特定することはマクロでは不可能ではないかという考えのようである.
ここで皆がまた「うーん・・・」である.
「TCAサイクル、途中の生成物質を、丸く並べてみませんか.分子の構造式と一緒に、するとなんかわかることがあるかもしれない.それに順次動きをつけるみたいなことでやってみれば、それらしいモデルができるのではないかと思うのですが」と言い、海丸君は家であらかじめ用意してきた、TCAサイクルを構成する中間産物の模型を並べてみた.
大きなテーブルの上に広げられた、 中間産物の名前、を皆で覗き込む.
オキサロ酢酸
(アセチルCo A)
クエン酸
cisアコニット酸
イソクエン酸
(オキサロコハク酸)
αケトグルタル
スクシニルCoA
コハク酸
フマル酸
Lリンゴ酸
からまたオキサロ酢酸に戻る.
これを丸く並べて、さらに途中の、脱水素、とNAD ,FAD ,CO2,水の排泄とうを書き加えると、モデルっぽくなるか.
「水素原子、電子e、それから、NAD,FADをからめると、それらしくなるか」四天王の誰かの意見である.
「じゃこれに動きを加えてみましょうかということだと.まあ関連する分子の形だけそれらしく整えて、その分子がなんて名前かだけ貼り紙でもし解けば、クルクルサイクルが回れば何がどこからどんな感じでできるということはわかるんじゃないだろうか・・」アテナが言うと、
「文字で読むより、面白いし、ダイナミックに整体内の化学反応の理解ができそうだな」社長のヘパイストスも同意した.




