六六変じて、九九鱗に・・・「白山様、暴れる!」
夕方、晩御飯前、別館の図書室.
今日も子供達は学校の勉強の復習中.
2X3(二、三が)、6
2X4(二、四が)、8
2X5(二、五・・)10
2X6(二六・・)12
・・・・・・・・・・・・
健ちゃんは九九をすでにマスターしている.
六の段と、七の段がちょっと怪しいが、愛ちゃんも、ほぼマスターしつつある.
「六六・・・」「36!」
・・・・・・・・「九九?」「81!」
子供達が楽しそうに勉強、そお、楽しそうな声で、勉強している.
勉強を楽しいと思ってできることはある意味幸福なことであり、子供の頃も、大人になってからも勉強は楽しいからする、そうあるべきだというのは、別館塾、塾頭のドクトルの、日頃の意見である.
玄関で声がする、お客さんのようである.
「ヤッホー、ごめんください!海丸くんいる?」
「はーい・・・」
はるなと海丸くんと健ちゃんが玄関の方に走っていった.
「ヤッホー、ああ、あんたが海丸だね、あたし、菊理媛、雪姫の友達、新潟つながりね.そんでさ、高倉下も連れてきたかったけど、あいつもなんか色々忙しいみたいだからあたし一人できたさー」
いやーなんか楽しそうなおばさんがきた、という感じであった.
ちなみに、高倉下は、越後一宮・弥彦神社の御神体で、伊夜日子大神、天香山命のことである.
神武東征の時、熊野で立ち往生した、のちの神武天皇、神倭伊波礼毘古命の軍勢を、武甕槌から授けられた霊剣で救ったという、日本神話の重要人物である.
客間に通されて、皆でお茶を飲んでいる時、
ドタバタと廊下を誰かが走ってくる.
「は、は、は・・・」
珍しくヘルメスが息を切らしている.そして、いつもは足音を立てない彼が、姿も足音も消さずに客間に入ってきていうのは・・・
「理事長、お久しぶりです!」
「お、なんだ、ヘルメスじゃん、どしたん?あんたもここにいたんだ・・・」
皆は、ヘルメスと菊理媛の関係がよくわからない.
「この菊理媛様、こそ、我々プシコポンポス学会の永久名誉理事長で在らせられる!」
現在は、ヘルメスが理事長だが、菊理媛は、その前に何期も会長、理事長を務め、今はプシコポンポス界のレジェンド、名誉、さらにその前に永久がついて、永久名誉理事長である.
また他の足音が走ってくる.
ドアが開いて、
「くくりの姉さーん」となつかしそうにいうのはなんとヘラ様である.菊理媛は結婚問題やら、縁結び界においても世界的に有名である.
「え、なんだって、くくり姉さんが・・・」
「ねえさーん!」アフロディーテは、彼女もいわば縁結びの神.そして、アレスとの仲がこじれた時に何度か、菊理媛に間に立ってもらったことがある.
菊理媛は、かのイザナギ、イザナミが黄泉国で、分かれる、別れないで、揉めた時に円満に離婚を調停した腕利きである.腕利きのなんというのだろうか?
現代社会においては、離婚調停弁護士?あるいは家庭裁判所の調停員のようなものか?
(縁・結びではなくて、実は、縁・ほどき?)
海丸くんはちょっと考えてしまった.
(神社にそんなご利益かけないか・・・)
「で、その菊理媛様がなんで、別館に?」
「え、私、神社の中ずっといてもつまんないから時々抜け出して、旅行するの.オリンポス行ったり、インド行ったり、あちこち旅すんのが好きなんさ」
このレジェンド女神、オフの生活をエンジョイされているようである.
しかし、
「最近は長期の休暇取りにくいから、それに円安で海外行きにくいしさ.お賽銭収入、1月に集中しているしね.ほら、初詣の時だけ、収入ががっぽりってことだね.そんでね、近場でどっか面白いとこって探したら、ここのことが、最近なんか、投稿小説とかなんかで有名になってきたから来てみた」ということらしい.
「で、母上とはどんな関係なんですか?」
「まあ、雪姫とは、越後のスケバン連合みたいな感じかな・・・」
「へえ・・・・」
いろんなご縁を大切にされている方でもあるらしい.
菊理媛様は、数日こちらに滞在するらしい.
その日の夕ご飯をみんなでわいわい楽しくおしゃべりしながら食べて、別館で泊まって、次の日は、子供達と一緒に近くにお出かけすることになった.
アフロディーテ・愛染の母ちゃん、キューピー、珍しく、ヘラ様、愛ちゃん、健ちゃん、ママにはるなに静香.
ヘルメスが護衛でハーデスの兜をかぶって、姿を消して見守る.
野外ステージで、皆でなんかのショーを見る.
皆、好き勝手な席に座るから入場はタダである.何が演じられるかは、皆あまり興味がない.
仮面ライダーとか戦隊モノとかプリキュアとか、なんだろうか?ちゃんと見ないから覚えてないや.
とにかくこういう場所で時間を共有するというのが重要なようである.
「はい、姉さん、ル・レクチェのシャーベット」
アフロディーテは、菊理媛の姐さんの好みをよくわかっている.新潟にはよくあるのだろうか、ル・レクチェ・・・
白根、今でいう新潟市の南区のあたりには昔、家族で訪れて、マスカットとか、桃とか、ルレクチェを自分でとって持って帰れる家庭農園みたいなのが何箇所かあったのだが・・・
皆が、お菓子やアイスを食べながら、おしゃべりしていると、後ろの方で悲鳴が聞こえる.
黒い服に帽子、マスク、サングラスをかけた武装集団登場!
銃やら刃物を持っているらしい.
その一人が、機関銃を撃ってみせた.
壁に立てかけられた、木の看板に、点が並んだ、直線が描かれた.
あいた穴から煙が出ている・・・・
どうやら舞台の演出ではなくて、本物のテロリストらしい.
「あ、やばい・・・」即座にキューピーが、若武者姿に変わり、どこから連れてきたか、馬に跨って、流鏑馬のように、テロリストが銃を持つ手を、弓矢で射抜いていく.
倒れた敵を、姿を消した、ヘルメスが縛り上げていく.
しかしまだまだ多くの敵が会場になだれ込んでくる.
「ああ、しょうがないね・・・・」と菊理媛は舞台の上に駆け上がる.
「みんな!」なんと菊理媛の姉さん、舞台に落ちていたマイクを拾い上げると、観客やら、テロリストに向かって語り始めた.
「菊理媛のお姉さんだよ!」
「わーい」ぱちぱち・・・・・
歓声と、拍手が起こる
「じゃあ、いくよ!」
「おおお!」
まるで台本があるかのように、菊理媛のお姉さんと観客と、テロリストが一体となる.
「六六・・・?」
「36!」
愛ちゃんと健ちゃんも拳を振り上げて、大きな声で答えを叫ぶ.
目の錯覚かもしれないが、菊理媛の後ろに鯉が現れ、滝を登って行き少しずつ大きくなっていくようだ.
菊理媛は続ける
「ろくろくへんじて、九九?」
「81!!」
会場一体となって、拳を上げて、さらに大きな声で皆が答えを叫ぶ.
「そして、100ひく1は?」
「99!」
「漢字で書いたら、百ひく一は?」
「白山姫の白の字でーす!!!」
会場の皆が、完全に敵も味方も心が一つになった時、
テロリストは、「は!」、と我に返ってまた銃を構える.
「サンキューベイビー!!」菊理媛がそう叫んだ.
その時、上昇を続ける鯉の姿は上空で弾けるように消えて、
同時に菊理媛の姿は、九つの頭の龍の姿となり、
その後ろには、さらに巨大な十一面観音が立っている.
まだ制圧されていない、テロリストに向かい、巨大な九頭龍は、
火を吹きかけ、敵を焼き、
暴風を起こして、敵にまとわりついた炎をあおり、
大量の水を吹きかけて、炎は消すが、敵をアップ、アップさせる
そして、順次悪者たちを、観音様の掌の中に送り込む・・・・・
会場は、あっという間に平穏を取り戻した.
ヘラも、愛染の母ちゃんも、愛ちゃんも健ちゃんも、ママも、静香も、はるなもぽかーんと見ているだけだった.
他の客もテロリストも何があったか、わからなかった.
テロリスト達は残らず手錠をかけられて、警察に引き渡された.
その後、別館には、野外ステージのオーナーから定期的に、「あの舞台をやってくれ」というオファーが、ひっきりなしに来たそうである.




