大国主を蘇生せよ!
正確には大国主命ではなく、須佐男命に、その名を与えられる前の話である.
彼がまだ大穴牟遅神と呼ばれていた時の話である.
彼は、地方のそこそこ大きなヤクザ組織の下っ端、「パシリ」のような存在だったらしい.あるいは、そんな使いっパシりに使われるよりももっと下位の「荷物持ち」だったかもしれない.
そお、八十神と呼ばれる多くの兄たち、つまりは、組(暴力団?)の「アニキ」のことだろう.血の繋がりはもちろんない.隣の街の勢力、親分のお嬢は、それはそれは美しい人だったらしい.八神姫という名前らしい.親分同士が仲良しで、兄弟の盃を交わしていたかもしれない.
「どおでえ、兄弟よ、俺んちの娘がよお、いい女に育ったから、おめえの子分の中で、誰かいいのがいたらくれてやっけど、どおでえ?」
大穴牟遅の親分「おお、そりゃ、ごうきな話じゃねえかい兄弟よ、俺っちの子分の中、見込みのありそうなの、中から誰か選んでやってくれい!」
アニキたちが、チャラチャラといいカッコして
「おう、見ろよ、俺のこと、いけてる、カッコをよ、八神姫は俺がいただきでえ」
「おお、兄貴、俺も負けちゃいねえぜ、このカッコ見てくれい、八神姫は俺がいただきでえ」
どれだけそのヤクザものの行列が続いたかわからない.
一行は途中で、サメにあちこち食いつかれて、ボロボロになったうさぎが倒れていた.しかしサメにちょっかい出して怒らせて、食いつかれて、よく、皮膚が剥ける程度の怪我で済んだなと思うが.
伝承にそうあるから仕方ない.サメに食いつかれたら、一口か二口で体ボロボロだろうに.
サバンナの川、ワニの川を渡る、しまうまの群れの動画を見たことがあるか?結構大きなしまうまも、一瞬で、肉の破片だ.
アザラシに食らいつく、ホオジロサメとかシャチの動画も似たようなものだろう.
うさぎだったら・・・
やめておこう.字数が勿体無い.
因幡の白兎の物語とか、色々すったもんだの末に、八神姫はどういうわけか、
大穴牟遅を結婚相手に選んでしまった.
「何もお嬢、一番下っ端の、パシリ未満の荷物もちだぜ、あいつ、もう一回考え直して、俺と結婚してくれよ、頼むぜ」
「おい、兄貴それはねえだろ、なあお嬢、俺と一緒になろうぜ・・・」
八神姫のお嬢はなかなか兄貴たちに振り向いてこない.
自然と兄貴たちの嫉妬とか、競争心とか、いろんな感情が、
あたりの禍々しい瘴気を吸収して、巨大な暗雲のように
「敵意」とか「殺意」としてモワモワと膨れ上がった.
アニキ達の敵意と殺意は、自然と大穴牟遅に向けられた.
「てめえ、指詰めろや!」くらいでは治らない.
ヤクザの兄貴たちのいじめである.
集団のリンチ、で済んだらまだいい方だ.
かなり手の込んだ処刑の儀式が行われたらしい.
「おう、おめえ、お嬢に好かれたからっていい気になんじゃねえぞ、いい女を嫁にもらうには、通過儀礼通のがあってよ・・・」
「あの山を見てみい、大きな赤い、猪がいるっつう話だが、俺たちがそいつを追い立てるから、てめえは下で、しっかり受け止めて、捕まえてみろ、そしたらお嬢はおめえにくれてやらあ」
大穴牟遅は別に八神姫などどうでも良かったのだが、姫様がかなり彼に熱心になってしまって引っ込みがつかなくなった
いじめられっ子の心理としては、
目立つことはなるべく避けたい
なるべく褒められないように、
極力女の子にはモテないように地味なカッコ
背筋は伸ばさず、なるべく眼鏡をかけて・・・
勉強や体育でなるべく中くらいを目指す
出来過ぎはダメ、かと言ってできなすぎも良くない
力の入れ具合は、中くらいというのが一番むづかしい
学級員などもってのほか
「ええ・・・嫌だな、俺、別にまだそんな結婚なんていいですよ、アニキ・・・」
と言ってみたが、
「いやいやだめだ、おめえも男を見せてみよ!」
「ええ・・・」
アニキたちに言われた通り、山の下で猪を捕まえようと待っていた.
上から、赤い塊がゴロゴロと転がってくる.
よく見ると、赤々と熱せられた、巨大が岩石のようだ.
もちろん、大穴牟遅は、逃げる暇などない.
絶体絶命!
あっけなく、岩石の重みで押し潰されて、その熱で全身の大火傷で、
大穴牟遅は、死んでしまった.あっけなかった.
当時は、まだ心電図がオランダのアイントーベンによって発明される前だから、モニターがどうなっていたかはわからない.おそらく自発呼吸はなくて、頸動脈も鼠径動脈も触れなかったのだろう.顔も火傷していたら、目をこじ開けて瞳孔を見たかどうか不明である.
とにかく、大穴牟遅は「死んだ」と診断された.
彼の母親はひどく悲しみ、神々の母親のような存在であった、神産巣日神になんとか息子を生き返らせてほしいと懇願した.この方、子供向けの日本の神様の本には、女性の姿で描かれることもある.
日本の神話における、地母神的な存在らしい.
しかし、Wikipediaの肖像画は、烏帽子をかぶって髭を生やしている.
男だか女だかよくわからない.
その、神産巣日神さま、子供の、キサガイヒメ・ウムギヒメを派遣した.
蚶貝比売は赤貝の貝殻を砕いて、それを、
蛤貝比売が蛤の白い汁で溶いて、薬液を製造した.
この薬を塗ると、全身火傷で爛れて、膝下も内臓も骨も全部岩石で押しつぶされた、大穴牟遅は元通り、美しい体になり蘇った、らしい.
「おお、すごい、赤貝の粉と、蛤のエキス・・・」
「ドクトル先生、一体この薬の中、どんな物質が効いたのでしょうかね」
「さあ・・・・」
この効果、科学的に証明されれば、かなり有望な蘇生薬になりそうだ.
あるいは、貝殻を母胎と見立てて、亡くなった人を再び蘇らせたいという、呪術的な意味合い、なのかもしれない.
SFでは、不治の病の人、貝殻のようなカプセルに入り、冷凍保存されて、何万年か後に目を覚まして、未来の進んだ医療を受けて完治するとか.
アフロディーテとか、人魚姫のアリエルはどういうわけか貝殻から生まれてくる.
貝の女神、復活の儀式に活躍は、ありそうな話である.
貝殻は、子宮?母の胎内?
「古事記」未来の医療を予想して、それを暗示していたとしたら、すごい本である.




