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歴史を動かす原動力は何なのか?

「うひゃー、またすげーテーマをぶち上げたもんだね」

今日の勉強会には、ルシフェルも加わっている.そしてなんと、ポセイドンのオトシャンや、ハーデスまでいる.


言うまでもなく、ギリシャはオリンポスの偉い神様たち・・・・


海丸くんの隣では、事代主と、建御名方のおじさんも、資料を見ながらなんか怖い顔をしている.

あれ、ヘラ様と、レト様、おばば様まで・・・・


図書室の中を見渡すと、

「ムネモシュネおばさんに、テミスおばさんまで・・・・・」


これはすごい集まりになりそうだ・・・・


「さあ、キューピー、会議の始まりを宣言しなさい!」

ヘラ様がいきなり命令である.


「ひえー・・・」キューピーは母親のアフロディーテと同じく、この女王様が結構苦手である.


「・・・・・」キューピーは固まってしまって何も喋れなくなってしまった.


「まあ.まあ、ヘラよ、そんなにかしこまってやる会でもないからよ、まあ、気楽に

おしゃべりしましょう、ってくらいにしようじゃないか」

とルシフェルがその場を収めるようにいう.


ヘラの扱いがあまり上手ではない彼を援護するように、ポセイドンや、ハーデスも、うんうんと頷きながら、賛成する.


「結局ですね、今日話したかったのは、歴史は必然なのか、必然だとしたら、誰が、あるいは誰の意思が、そのストリーとかシナリオに反映されるか、ってことなのですよ.


だから神様、あるいは我々のような神々の意思、利害、思惑、そのほかのいろんな変数を代入した時に、その関数から、何が、どんな物語が生まれてくるか、そう言う話なのです」


海丸くんは精一杯に説明するが、どうしても理系的な話し方になってくる.


「すると、結局、歴史は、ラプラスが言ったように、初期条件と、どんな運動をしているかを入力すると、全部、決まった話になる.

歴史の神というのがすなわち、ラプラスの悪魔、ってことになりますか?」海丸くんの発言は、すごいようでちょっと脱線している感じである.


「ちょっと意義ありですね.結局はラプラスの悪魔は存在しません、というのが現代物理学の見解のようですが.原子とか電子といった、微粒子の運動と、位置は、確率的にしか特定できないということになってますから・・・・」

静香の補足である.


一同、「うーーん・・・・」と誰も意見を言わなくなってしまった.


「すると、なんだ、歴史の物語は、誰かが、描いたストーリー、あるいはシナリオの通りに進行するから必然的に見えるってことかね?ストーリーは、あらかじめ出来合のものを使い回しているということかね.物語に出てくる、役者、俳優と、舞台の場所とか、大道具だけをちょこちょこと変えて」ハーデスの意見である.


「じゃ、いったい誰だね、そのシナリオを書いているのは・・・」


冥界の王の鋭い目で、彼は一同を睨め付けるように一人一人の顔を見た.


「母さんかね?」おばば様に聞いてみた.

「いやいや、滅相もない・・・・」おばば様は、長男にこういう目で睨まれると、いつもの勢いで話かがができなくなるのだ、というのは、初めて知った.


「ムネモシュネのおばさんかね・・・」

「いえいえ、私など、とてもとても・・・・」


「そんじゃ、テミスのおばさん、あんたかね、歴史のシナリオを書いているのは.シナリオ進行の決まりを掟とか法律という縛りをつけて、神々も人も、思いの通りに動かしている・・・・」


「いや、違うよ、ハーデス、掟やら法律があるのは、神々も人も、皆それぞれに気まま勝手に動きまわるから、その中で枠組みっていうか、秩序っていうか、法則性っていうか、それをある程度担保するためにあるんだよ.私が法律決めて、歴史の動きを決めてるわけじゃあない」


こういう法廷論争的なこと、地獄の王に睨みつけられても怯まないのがテミスおばさんのすごいところである.

彼女は、ティタンの神々でありながら、ティタノマキアの後も、オリンポスの神々に排斥されることなく、尊敬を受け続けた女神である.

こういう、胆力の座ったところが、法と掟の女神の真骨頂というべきであろう.


要するに、「筋が通っている」ということか?


ここでドクトルが初めて発言した.

「私、ヤスパースの本、結構集めていて、といっても全然読んでないのですけど・・・


『歴史の起源と目標』、この本は読もう読もうと思って難しそうでまだ手付かずです.

なんとなく買った本に、『哲学的思惟の小さな学校』、という本がありました.

その中に、歴史と現在という、20ページくらいの文章があったので、それから読み解いて行くと、いいのではないかと思うのです」


哲学的思惟の・・・はヤスパースがバイエルンテレビ放送で行った、13のテーマの講演を本にしたものらしい.その2回目が、「歴史と現在」である.


まず、ここでヤスパースが述べていること.


宇宙に関する知識と同様、歴史に関する知識はどんどん拡大する.知られていなかった遺跡、文字が我々に語りかける.


人類の文書に残る記録された歴史は、せいぜい6000年くらいのものであること.


紀元前800年から、200年の間に精神文化的な枢軸時代がやってきたこと.


中国、インド、イラン、パレスチナ、ギリシャにおいて(メソポタミアやエジプトではなく)ーほとんど相互に独立にー我々が今日までそれによって生きている意識を基礎付けた、精神的諸事件が起こった.当時宗教的、哲学的に根本問題が提起され、そして我々にとって現在なお標準となっている、いろんな答えが与えられた.我々はこの時代を、世界史の基軸時代(axil age)と名づける.そこから三つの並行した、発展が、中国、インド、西欧において行われた.キリスト教紀元後1400年頃には、なおこれらの三大文化文化領域の生活形態、技術的手段と労働様式は相互に似たものであった.その後になって初めて、ただヨーロッパの我々のところでのみ、または我々によってのみ技術的時代が始まった.すなわち全てのものの徹底した合理化、科学とは異質ないかなる知識様式によっても曇らされることのない、純粋な経験科学、計画的に発明し、絶えず進歩する技術である.これまで未だかつて経験されたことのない歴史の変革が、自然支配と商品生産を推し進め、船舶、飛行機とラジオによって地球上をつなぐ交通を作り出した.


「しかし、この書き方、ヨーロッパ中心主義とでも言いますか・・15世紀以降のヨーロッパが、強力な、技術力、最初は銃と火薬、その後は大量の産業発達、自然科学の発達を他の地域より強力に推し進めて、世界地図を自分たちの集うの良いように書き換えた、そのことだけをいっているようで気に入りませんね.西ヨーロッパは、ローマの属州にされて、いずれゲルマン人が支配した、中世においても、後進国だった・・・」


「そお、人類の知恵の源流は、やはり、中国、インド、メソポタミア、エジプト、そして、中東、そして我らのギリシャだ!」お、ルシフェルが珍しく雄弁だ.


「そのギリシャの哲学と学問を、ヨーロッパに持ち込んだのはそもそもイスラムの人たちだしな.」ポセイドンが言っているのは、イスラムの学者がギリシャの文献を集め、それを自分のものとして取り込み、さらに、シチリア、イベリア半島を経由して、12世紀ルネサンスと呼ばれる学問の運動で、西ヨーロッパに持ち込んだのだからな.


「ギリシャの学問がヨーロッパの源流と、西ヨーロッパの奴等には言われたくないわな」ハーデスも同意である.


本の内容を続けて読んでみよう・・・・


広い宇宙の中で、生物が生まれたことは、非常に低い確率で起こったことであること


「宇宙から見ると、我々の歴史は一つの奇跡である」


広い銀河の中で、生物が、存在する可能性は、確認されている中ではないこと

さらに、長い生物の歴史の中で、知性を持った人類の歴史は、ごく短いこと


「我々は、生なき物質、その変化、運動、爆発と形成の宇宙の中で、孤独である.宇宙は我々を必要としない.例え、塵粒の大きさの地球が消滅し、地球と共に我々が消滅つるとしても、宇宙はそれがいかに途方もないことであるものであるにしても、同じままであるだろう.宇宙はまた我々のために存在するものでもない.プラトン、あるいはクザーヌスあるいはカントは、宇宙をそれ自体として見ることを教え、我々との関係において創造されたものしては見ないように教えた.宇宙は我々の支配の領域ではなく、おそらく我々の異形の対象なのであろう.


我々が神話や文字の記録で知っている歴史と、歴史科学は別である.

我々の記憶にある、あるいは神話で認識している歴史と、実際の遺跡や資料からわかる、歴史は別である.歴史を科学的に分析して、得られた知識は事実かもしれないが、我々の知る歴史とは違うのだ、ということらしい.


「それは、何かすごく本質的なことを言っているような気がする・・・」


「トロイ戦争は、実際にはなかったかもしれない、しかし、記録や神話に残ったものとは違った形で行われたものかもしれない、とそういうことかな?」


「あるいはギガントマキア、実際にはオリンポスの神々とヘラクレスは、ギガースとは戦っていない、敵のギガースとは、つまり、北方から侵入してきた、異民族であったり、自然災害であったり・・・・」


「記録を紐解いてみると、おそらく敵の本質は、自然災害なのだろうが、出てきた遺跡からは、多くの人骨が出てきて、敵は火山とか地震といった自然災害ではなくて、実は海の民の残党だった、ということを突き止めるのが歴史科学・・・そんな感じのことをヤスパース入っているのかもしれない.」


「日本の神話、大国主は何台もいて、大和が、出雲やクマソを討伐する過程を、一代の神の物語にまとめてしまったのが神話であるとか・・・・」キューピーの意見.


「そして、歴史から学び、現代の我々は、将来のために選択する余地は少ないのだが、確かにある、ということも言っていると思う」事代主も同意する.


「うーん、ここまで基礎となる知識がわかると、なんか「歴史の起源と目標」も読みこなせそうな気がしてきましたね」ドクトルがいうと、


「そうか、じゃ、ドクトル、しっかりやれ」神々の偉い神々、一同、後の勉強は、皆ドクトルに丸投げをした.


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