アルコール関連疾患①「総論」
内科の教科書より.朝倉出版、内科学、第11版から.
ほぼ教科書の丸写し、しかし、電子版の書籍を丸々コピーペーストではなくて、ほぼ書き写しであることをご理解いただいて、この機会に今までのあやふやな知識を、なんとか整理しようと、干からび始めた、頭脳に鞭を打っている、老医師の誠心誠意と受け取っていただけるとありがたいのだが.
「そんなこと言って、教科書程度のこと、言ってみれば医者としての常識だろ、なんでそんなこと、サラサラ、って書けねえんだ、何十年同じ仕事してたんだろ、おめえはよ」
とルシフェルはいつもながら、容赦がない.
(あんただって、全知全能と言いながら、子供の宿題できねえじゃねえかよ!)とドクトルは心の中で毒づく.
「まあ、教科書一冊分の知識、さらさら書き出せたら、それこそ天才なわけだし・・ドクトルは、凡人なりに、頑張っている方だと思いますよ」海丸くんはいつも優しいのだが・・・・
(凡人なりに・・・・)
子供に凡人と言われた.
日本で、医者になるのは結構大変なんだけどな・・・
ドクトルの学習成果、の発表は以下の通りである.
飲酒は、
アルコール依存症
肝障害
膵炎
脳神経障害
などの多くの病態に関係し、2002年のWHOの報告によると先進国の全ての疾病の負担の9.2%が飲酒に起因する.
これはタバコの12.2%、血圧の10.9%についで、三番目である.
有害な飲酒は多くの心身の疾患や、交通事故、暴力、自殺、外傷との関連が深く、本人だけでなく、他人への身体的、精神的・社会的な害も大きい.
他者への有害性も含めたイギリスの現状評価ではタバコやヘロインを含むすべての薬物の中でアルコールはしだいの有害性があるとされている.
2010年にWHOは、「アルコールの有害使用低減のための世界戦略」の決議を行い、施策の実行を加盟各国に求めている.2013年に我が国ではアルコール健康障害対策基本法が成立しアルコール関連問題に対する様々な施策を実現していくことが期待されている.
https://www.ask.or.jp/downloads/pdf/other/who_summary.pdf
(所々、ネットの参照ページを張ってある.)
習慣飲酒者の割合
2012年度の国民健康栄養調査では、週3回以上1合以上飲酒する飲酒習慣者の割合は、男性34%、女性7%で、過去10年間で男女とも横ばいである.
健康日本21
2000〜2012年(第一次)_
「節度のある適切な飲酒」 男性で20g.女性と、すぐ顔が赤くなる人、65歳以上ではさらに少ないようである.
2013年から始まった「健康日本」第二次では
未成年者と妊娠中の飲酒を無くすことと並んで、
1日量にして、
男性で、40g以上
女性で、20g以上
の「生活習慣病のリスクを高める飲酒者」
を減らすことを目標としている.
厚生労働省の令和4年(2022)「国民健康・栄養調査」の結果によると、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人の割合は、男性13.5%、女性9.0%である.この10年間でみると、男性では有意な増減はなく、女性では有意に増加している.
年齢階級別にみると、30~40 歳代男性ではその割合が高く、3割を超えている.
https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010355.php
アルコールの代謝
アルコールの代謝と、薬物代謝は主に肝臓で行われている.
(所々で、薬理学の教科書、Katzung's Basic & Clinical Pharmacology .Lange Medical Books.しかしドクトルの本棚にあったのは、かなり古くて、fourth editionで 1989年版である.一番最新は、16th editionらしい.)
アルコール脱水素酵素 ADH:alcohol dehydrogenase
ミクロソームエタノール酸化酵素系MEOSによりアセトアルデヒドへと酸化され次にアセトアルデヒド脱水素酵素ALDHにより酢酸になる.
MEOSは薬物代謝酵素チトクロームP450を含む酵素群である.
大酒家では、P450が誘導されてアルコール分解能が亢進する.この酵素の誘導は、酒をやめると、一週間で消失する.
P450を介して代謝される薬物(ジアゼパム、クロルプロマジン、ワルファリン)とアルコールを併用すると、拮抗阻害や、薬物代謝の亢進により薬効が増減して危険である.
アルコールの分解過程
アルコール→(アルコール脱水素酵素、ADH)→アセトアルデヒド
アセトアルデヒド→(アセトアルデヒド脱水素酵素、ALDH)→酢酸
ALDH2には東アジア人特有の遺伝子多型が有る.国民の約40%に活性の欠損した、ALDH2を有し、飲酒後に高アセトアルデヒド血症を生じる.
アセトアルデヒドの作用で、少量の飲酒で、顔面紅潮、動悸、眠気などのフラッシュ現象が起こりやすい.ALDH2活性型の人よりも二日酔いを起こしやすい.
ALDH2ホモ欠損者は日本人に7%くらいの頻度でいて、飲酒ができない.
ALDH2ヘテロ欠損者では、飲酒できる人が多く、アルコール依存症患者の90%弱
は、ALDH2活性型で有るが、10%弱はヘテロ欠損者である.
アルコールを アセトアルデヒドにかえる酵素が、ADHである.
ADH1Bにも、遺伝子多型がある.
黒人と白人の、90%がホモ低活性型である一方、
東アジア人は、90%以上が、超高活性型 ADH1Bを持っている.
ADHの超低活性型は、欧米人と黒人に多い.このような人は、顔が赤くになりにくい.翌日になってもまだ息がアルコール臭い.
ADHの超低活性型でかつ、ALDHの活性型の人は、アルコール依存症になりやすい.
飲酒量と死亡リスクの関係
Jカーブ.つまり少量飲む人の死亡リスクが最も低い.男性では20g 、女性では10g程度.
飲酒と循環器疾患
冠動脈疾患により死亡リスクは、
J型、U型のカーブ.最小は、20g程度の飲酒.
血小板凝集能の抑制
HDLコレステロールの増加
フィブリノーゲンの低下
高血圧は少量でもリスクになる
大量飲酒は、アルコール性心筋症や、心房細動のリスクになる.
飲酒と脳卒中
出血性脳卒中とくも膜下出血のリスクは増える.
少量の飲酒は、脳梗塞のリスクを下げる.Jカーブ.
飲酒とがん
口腔、咽頭、喉頭、食道の扁平上皮癌、
肝細胞癌
直腸・結腸癌
女性の乳がん
膵臓癌との関連も疑われている.
休肝日がないと、死亡のリスクが上がる
女性の飲酒の害
胎児への影響
肝障害等の健康被害が少量のアルコールで起こりやすい
アルコール依存症に摂食障害を合併する
アルコール依存症
アルコール離断症状
振戦譫妄
アルコール離断性痙攣
飲酒量が調節できない
アルコール離脱症状がある
飲酒による、身体的、精神的、社会的な問題がある.
2013年の全国調査では、アルコール依存症者は、約60万人.
治療を受けている患者は、年間約4万人と報告されており、多くの患者が治療を受けるチャンスを失っている.
同じ年に改定された、米国精神医学会の診断基準DSM-5は、
「アルコール依存症」と「アルコール乱用」を、「アルコール使用障害:alcohol use disorder」という一つの概念にまとめた.そしてスコアによる重症度分類をしている.
アルコール関連認知症
頻度は増加している.大量飲酒、ビタミンB1欠乏などの栄養障害、肝障害、脳血管障害、頭部外傷など多因子が関与している.60歳代と比較的若年で認知症を発症する.長期の断酒で、改善が期待できるが、進行性認知症患者にアルコール問題が併発した場合は鑑別がむづかしい.
大酒家の突然死
中年男性の突然死、35%はアルコール大量摂取と関係がある.
大量飲酒者には、心血管疾患が多いことと加えて、
脱水、貧血、低カリウム血症、低血糖、アルコール性ケトアシドーシスなど生命を脅かす病態をきたしやすいからである.
「要するに、アルコールを代謝するのに、NADが、大量に還元型の、NADHになる.補酵素のビタミンB1、酒飲みに、もともと不足がちなのが、浪費されて、正常の糖代謝、脂質代謝に支障が出る、脳症は起こるし、尿酸は上がるし、中性脂肪もどんどん溜まるし、ってことなんでしょうか?」海丸くん、なかなか鋭いかも.
「そんなとこ、なのかな?」ドクトルは恐る恐るルシフェルを見る.
しかし、彼は、自分が知らないことについては、意見を言わないで知らんふりをする、というのがルールである.
おそらくそこまでは知らないらしい.他の本の今回のテーマと関係ないとこを開いてそこを一生懸命読んでいるふりをしている.
しょうがない、AIに聞いてカンニングだ.
「エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸
の各段階でNAD⁺が使われ、NADHが増えます.すると肝細胞内が還元過剰になり、
乳酸↑ → 高乳酸血症、尿酸排泄低下
糖新生↓ → 低血糖
脂肪酸酸化↓、中性脂肪合成↑ → 脂肪肝・高TG
TCA回路の流れ低下 → 代謝の渋滞
という方向へ行く.
ただし、ここでビタミンB1がNADの補酵素として浪費されるという言い方は少し違います.
ビタミンB1、つまりチアミンは、NADそのものの材料ではなく、主に
ピルビン酸脱水素酵素
αケトグルタル酸脱水素酵素
分岐鎖αケト酸脱水素酵素
トランスケトラーゼ
などの補酵素です.
だから酒飲みでB1欠乏が起こる理由は、
摂取不足
吸収障害
肝での貯蔵低下
リン酸化障害
糖質代謝需要との不釣り合いが中心です.」
以上がアルコール関連疾患の総論的なことである.
以下に述べることは、アルコール関連疾患の各論的なことである.
アルコールの多飲により起こりうる病気はさまざまで、ざっと挙げただけでも以下のようなものがある.
脳神経系
急性アルコール中毒
二日酔い
アルコール使用障害
アルコール依存症
アルコール離脱症候群
脳萎縮
アルコール関連認知症
Wernicke-Korsakoff症候群
橋中心髄鞘崩壊
アルコール幻覚症
二次性うつ病
パニック障害
不眠症
末梢神経障害
肝臓
脂肪肝
アルコール性肝繊維症
アルコール性肝硬変
消化管
食道炎
食道静脈瘤
Mallory -Weiss症候群
急性胃粘膜障害
消化性潰瘍
吸収障害
下痢
痔核
膵臓
急性膵炎
慢性膵炎
糖尿病
心血管系
高血圧
不整脈
冠動脈疾患(少量の飲酒ではむしろ少ない)
アルコール性心筋症
出血性脳卒中
脳梗塞(少量ではむしろ少ない)
癌
口腔癌
咽頭癌
喉頭癌
食道癌
肝臓癌
女性の乳がん
大腸癌
膵臓癌(疑い)
筋骨格
骨粗鬆症
大腿骨頭壊死
骨折
アルコール性ミオパチー
横紋筋融解症
血液
大赤血球症
大球性貧血
血小板減少
顆粒球減少
代謝
高尿酸血症
脂質代謝異常
電解質異常
脱水状態
アルコール性低血糖
アルコール性ケトアシドーシス
大酒家突然死症候群
生殖
性腺機能異常
精巣萎縮
インポテンツ
妊娠異常
胎児アルコール症候群
胎児アルコールスペクトラム障害
自殺
外傷
暴力
事故
ニコチン依存症の併発
アルコールの常用でなぜ、これらの病気が起こるかという、病態生理学的な考察はおいおい行っていきたいと思います.
この辺のことは教科書を元に考えていきたい.




