須佐之男命、別館に降臨!
別館の門から玄関に向かう途中、スサノオは
「ここだけは、高天原の連中、入ってこれねえ、と見えるな・・・・」
玄関の前にたち、ルシフェルに促されて、須佐男は敷居を跨いだ.
両脇に事代主と、建御名方.
玄関の前には、デメテルと、ヘスティアがいた.
「舅様、ご無沙汰しております」デメテルが言う.
「一の姫様もお変わりなく・・・」須佐男は、デメテルに対して、深々と礼をした.
ヘスティアの方に向き、彼女にも、須佐男は深々と頭を下げる.
ヘスティアも深々と頭を下げる.
ゼウスの姉である、デメテルとヘスティアに丁重な挨拶する.
それは、高貴な女神に対する当然の礼である.
「須佐男、久しぶりだね・・・」おばば様もいつの間にか玄関先に立っていた.
「母上様、お久しゅうございます.こいつらと、孫娘、よくしていただいているみたいで・・・」
こいつら、というのは、事代主と、建御名方のことである.
「なんだよ、あんたが、そんなに礼儀正しいとなんか気持ち悪いよ、ははは」おばば様は笑う.
そしてすぐに、少し、真面目な顔になってささやく.
「で、今日、あんたがここにきたってことは、みんな話すのかい、あの子に・・・・」
「そのつもりです・・・・」須佐男も消え入るような声で答えた.
廊下で、すれ違った、海丸くん、愛ちゃん、健ちゃん.いつものようには、お客さんに対して、馴れ馴れしく話しかけない.
「こんにちは・・・」と丁寧に頭を下げた.
「お、みんな行儀がいいな!」須佐男はにこやかに挨拶を返した.どこからどう見ても優しい、好々爺である.
子供達は、緊張した、顔つきから、いつもの明るい笑顔に戻った.客間に向かう須佐男を廊下で見送った.
玄関の方から、ドタドタと音がする.「何!須佐男様がお越しだって・・・なんであらかじめ言ってくれねえんだよ、ちゃんと挨拶したかったのによ・・・・」
と廊下を走っていくのは、ポセイドンである.
応接室に通された須佐男のところに、お茶を運んできたのは、健ちゃんと愛ちゃんのママである.
「おお、あなたが、先程の男の子と、女の子のお母さんですな、いや、わかる.立派に育てられているのはあなたを一目見たらわかる!」
静香がお菓子を持って入ってきた後、はるなが部屋に入ってきた.
そして、須佐之男前で一礼して、椅子に腰掛けた.
「あの、私・・・・・」
「はるな、大きくなったな、母親によく似てきた.うん・・・・」
そこまで、言うと、須佐男の顔がぐちゃぐちゃになってきた.
「ぐ、ぐ、び・・・・ぐえーーーーーん・・・・」
なんと須佐男の大号泣が始まってしまった.
「ゼウスよ、よくぞ孫娘をここまで育ててくれた、ありがとう、うん、うん、ありがとう、礼を言うぞ、お前はやっぱり俺の一番弟子だ・・・」須佐之男号泣は、突然始まり、あまり長くは続かないで、すぐに収まり、他に伝染することはなかった.
「え、あの・・・おじいちゃん・・・・」はるながおそるおそる、祖父にまず、確認のために言ったのは、
「私、別にルシフェルに育てられたわけじゃないから.お父さんと、お兄ちゃんたちに育てられて、それからはいつの間にか、この家に1人で住むことになっちゃたけど.それで、おじいちゃんに聞いていいですか?」
「うん、うん、それで、なんだ、なんでもこのおじいさんに聞きなさい・・・」
「あの、私の母は、実は、須勢理毘売命、あなたの娘で、私は、大国主命の娘であること、それは兄たちの話で、最近なんとなく知りました・・・・」
「うん、うん・・・・」
「それで、おばば様や、デメテルの母さん、ヘスティアおばさんの話から、私もクロノス制圧とか、巨人の戦争の時、ギリシャに連れていってもらったってこともなんとなくわかりました.」
「うん、うん・・・」
「でもわからないのは、私って、結局、人間なの?それとも、神々の1人なの?古代ギリシャ時間旅行したところ見ると、神様っぽくもなくはない、でも、今も、ドクトルも、静香も時間と空間、オリンポスの神様にひっついていけば比較的自由にできるから・・・」
はるなが続けて、質問の大大、大核心部分をぶつけてきた
「神々と、人の違いって一体何?」
「はて?」
ここで、須佐男はもちろん、ルシフェル、ヘスティア、デメテル、そして後から部屋に入ってきた、ポセイドンやら、アテナ、四天王・・・・
神々と呼ばれる人たちが、皆、頭を抱えて考え始めた.
海丸くんも日頃疑問に思っていたことである
「自分は人間なのだろうか?それとも、神々の1人なのだろうか?」神々の1人として生まれながら、生活は時々、神らしい仕事が舞い込んでくることもあるが、基本的に人間と同じである.
朝起きて、掃除したりして、ご飯食べて、学校行って、帰ってきたら、宿題したり、皆と勉強したり、遊んだり.夜はお風呂入って寝て、朝また起きて・・・
生活は人も神も変わりはない.
「じゃ、神と人の違い、とは?」
キューピーもお菓子目当てで、部屋に入ってきて、皆が、ああでもないこおでもないと考えているときに、言うには、
「あ、なんだそんなこと、簡単だよ、神と神の間に生まれたものは、神だし、1人の神から生まれたものも、神だし、人と神の間から、生まれたものは基本は人だけど、修行を積んだら、神になれるってそう言うことですよね・・・」
「じゃ、私は、神と神の間に生まれたから、神?」
「まあそう言うことになる、かな・・・・・」須佐男はいつものハキハキと断定的な物言いでなくなった.
「しかしな、金髪の巻毛の若者よ、自分は果たして神か、人か、それは、何千年、考えに考えても、ついぞわからなかった・・・・
神の体の中にも、人の心が宿るし
人の体にも神の心が宿る
・・・・・・・
そういう感じなのかな?
なあ、ゼウスはどう思う?」
「いや、師匠、そういうこと、私は考えたことありませんね・・・」
「だろうな・・・」
「母上はどうです?人と神の違い・・・・」須佐男は、おばば様にこの難問をぶつけてみた.
「いやまた、むづかしいこと聞いてくるね・・・」
「精霊の声・・・・それを聞いて、あの子たち力を自分のものにする力・・・・あとは、不老長寿、そして、時間と、空間の超越・・・・」
「あ、そうか、母上、上手いことおっしゃります.時間と空間の超越、そして、不老長寿・・・そこなんでしょうかね・・・・・」
「人の心、人の体、強い思いを抱いたまま、体が消滅してしまう.
しかしその後も、強力な、思念は魂として生き残り、この世にとどまり続ける
吉田松陰という幕末の獅子の時世の歌と言われています.」ママが紹介する.
身は、たとい、武蔵の野辺に朽ちぬとも、留めおかまし、大和魂
肉体を離れて、この世にとどまり続ける魂こそが、神の正体?
報われぬ、魂、怨霊として残り、人の代に災いをもたらすことも.
菅原道真公のように・・・・・
結論なんか出るはずのない話で皆がウジウジしている時・・・・
そこに、ドクトルが、応接室には入ってきた.
須佐之男命、「は!」と椅子から飛び上がり、
その場に平伏して言うには
「ははははは・・・・」
皆が「?」である.
須佐男がいう.
「孫が、本当にお世話になりました、あなた様は、命の恩人でございます.」
「え、おじいちゃん、どういうこと・・・・・」
「お前ら、頭が高い、このドクトルこそ、はるなの手術をしてくださった、偉い先生で、命の恩人だ!」
「え?」ますます謎が深まる、別館界隈であった.




