珍説・ティタノマキア①
ゼウス・レアの勢力に、盟主というべきクロノス王をタルタロスに幽閉された、ティタンの一味.
オリンポスの支配をよしとしない、ティタンの一族は、対オリンポス戦争の準備を進めた.
クロノスの予言通りである.
ティタン軍の主力は、イアペトスとその息子たち.
イアペトスの息子たちの中では、
アトラス、メノイティオスがティタン軍の主力として戦った.
プロメテウス、エピメテウスは参戦しなかったらしい.
なぜ彼らが参戦しなかったかは、
ヘシオドスの「神統記」、
アポロドーロス、
フェリックス・ギラン、
ブルフィンチ、
いずれにも詳細な記載はない.
ゼウスの勢力は、オリンポスの山に布陣した.
ティタンたちは、オトリュス山にて、オリンポスに対峙した.
二つの山は、標高差で言うと、オリンポスの山が1200mほど高いそうである.
結果的に10年にわたる戦争、そして、天地を震わす、大戦争だったというから、ものすごく大規模な戦闘が行われたということだが、具体的に、誰がどこで、誰に攻めかかり、という、実際の戦闘の記録が全くない.
大元締めである、クロノスは、多分、幽閉された後の戦争だからもちろん参戦はしていない.
10年戦闘が膠着状態で、ヘカトンケイルと、キュクロプスを急遽、タルタロスから救出して、アンブロシアとネクタルで接待漬けにした上で、味方につけて、戦況は一気にオリンポス側有利に傾いて・・・・
と書かれているが、具体性に乏しい.
神話に具体性もなんもないとは思うが、人々の、理念とか、想像の世界の最大公約数的な数々の物語に、隠し味として、歴史的事実を少々加えることにより、神話が形作られるとしたら、これではあまりに貧弱な物語の気がする.
まあそういえば、国譲りの時に神々がどんな動きをしたか、ということも、国家編纂の歴史書「古事記」には書かれていないのだが・・・・・
「そんじゃ、うしししししし・・・」ドクトルが例のいたずらを思いついた時に発する不気味な笑い声を発した.
これから、私、想像の赴くままに、物語をでっち上げたいと思います!
ということで、表題は「珍説」と銘打ってある.
レアとその息子・娘たち、はオリンポスの山頂から、南からやや東にずれた、オトリュス山を望む.
この二つの山の間は概ね平野で、途中に視界を遮る高い山はない.
ゼウスが世界を旅したときの各地の友達、開戦が間近いということで、ギリシャの地に残ったものが多い.
東の果て、オケアヌスの入り口の島国からは、大国主命、嫁である、須勢理毘売命、その舅である須佐之男命、
レバントからは、主にイスラエルあたりから、ベルゼブルとその仲間たち.
神話の多くには、戦闘がある程度、膠着してから、ガイア様の助言に従って、ヘカトンケイルと、キュクロプスを急ぎ救出して、接待してから仲間になってもらったというが、そんな悠長なことはしていられない.彼らはすでにゼウスたちの仲間になっており、兵器の整備、戦略はすでに万全の体制となっている.
ふと、岩場に目をやると、その割れ目から、ガスが吹き出している.
「シュー・・・・」ニオイはしないのだが.
兵の1人の誰かが、火を起こすのに、火打ち石を使った.途端、そのガスに引火して、小さな爆発が起こった.
その後、噴き出すガスは、朦々とした炎をあげて燃え続ける.
その中から3人の人影が浮かび上がった.
「よお、ゼウス、久しぶりだな・・・」
なんと!
「ペルシャのゾロアスター!!」
後の2人は、火の神を守る一族の長、ゾロアスターの父上.
そしてもう1人は・・・・・・
「ああ、二の姫!!」
ゾロアスターの姉上である、二の姫、神殿の巫女になると聞いていたが・・・・
「友達の、大事ないくさ、助太刀するぜ!」ゾロアスターが言うと、長と、ニノ姫がニコニコしながら黙って頷いた.
ゼウスはニの姫の前に跪いて挨拶をした.
ゼウスは、姉のヘスティアを紹介した.
「私の二番目の姉のヘスティアです.かまどと、家事一般の神で、ゾロアスターの姉上と同じような、立場です.しかし残念ながら私の姉は、ゾロアスターの姉上ほどは、お淑やかではありません・・・」
「ゼウス!またなんか余計なこと言ってんじゃないだろうね・・・ダメダメ、だめ、め!でしょ、ふん、ぶう、ブウ・・・」
と言ってヘスティアがゼウスを睨みつけ、「ベー」と舌を出して、豚の鼻をしてみせた
「ふん!よその方に、変なこと言うと、今晩のおかずにしちまうよ.お前のこと焼いて食っちまうよ!」と言うと、ゾロアスター一向の方に向き直り、ニの姫の前に出てきた、跪いて挨拶をした.
「おお、ほほほ・・・私、ゼウスの姉でございますのよ、ほほほ、お見知り置きを・・・」と急にお淑やかな、ふりをした.
このギリシャの台所の火と竈門の女神に、ゾロアスターとその父も跪いて、挨拶をした.
「以後お見知りおきを・・・」
物見の兵が、ゼウスに報告する.
「オリンポスの北の斜面を、3人ずれの怪しいものが、駆け登っているそうです.背中に腕のような突起のついた、変な背負子を背負っているとのことですが・・・」
「3人づれ、背中には腕のような突起のついた背負子・・・もしや・・・」
山頂にたどり着いた、3人連れは、インドの神々であった.
シヴァ!
ヴィシュヌ!
そして、ブラフマー・・・
「あれ、ブラフマーじゃなくて、君は・・・シヴァと私の立ち合いを、かぶりつきで見てたね・・・名前は確か・・・」
「私は、インドラ!あなたの雷の技を、見てから、あなたを目標にシヴァの指導を受けて修行を続けてきました!今度の戦、お役に立ちたいです!」
「と言うことで連れてきた.結構使えると思うぜこいつは」ヴィシュヌが言うから間違いあるまい.
「ところで、ブラフマーは?」ゼウス尋ねると、
「ああ、あいつ、弾が飛んで来ないところで、戦術とか戦略をああでもない、こうでもないって、御託を並べるのには多少使い道があるんだけど・・・」ヴィシュヌははっきり言いにくいらしい.
「ブラフマーは、足手まといだから置いてきた.あいつは来たがってたけどね」とシヴァがいう.友達に対する友情の表れか?
(あ・・・ブラフマーどんくさそうだしな、怪我すると危ないからな)
インドラの方を見てゼウスはいう.
「ああ、インドラ、私がインドを旅した時はまだ子供だと思っていたけど、立派になったね.うん、強そうになった・・・・」
インドの神々と旧交を温め合っている時、
東の空で、何やら、ゴロゴロと雷の音・・・・・・
雷雲が、オリンポスの山頂に近づいてくる.
雷雲の中から、柄を先行させて、剣のようなものが飛んでくる.
オリンポスの山頂の岩の上に、切先を上にして突き刺さった.
東の空から近づいてくる、雷雲から、いきなり、稲妻.
それは東から西の方角に天空を水平に走り、
オリンポスの山の上で、垂直に折れ曲がり、
上を向いた剣を避雷針のようにして、落雷した.
閃光と、大音響が同時に起こり、あたりは、しばらく、黒煙に覆われた.
煙が山頂を吹き荒ぶ、風に流れて、消えたところで、先ほど雷が落ちた、剣の先端.
なんと、屈強そうな、男が、あぐらをかいて座っている!
「武甕槌!!」
大国主と、須佐男が叫んだ.
ゼウスもすぐに気がついた.
「師匠!」
剣の柄を岩に突き刺して立て、だから、剣の先端をお尻の下に敷いて、その上にあぐらをかいているのだ.神話ならではだと思うが・・・
その、剣の名前、実はよくわからない.
神武東征の時に、武甕槌が、高倉下に下して、神倭伊波礼毘古命のちの神武天皇の軍の窮地を救った、剣は、「布都御魂」と言われる.神代三剣の一つとされる.
じゃあ、国譲りの時の浜辺で、たけみ数地が、稲佐の浜で、大国主を威嚇した時の、これまた尻に敷いていた剣は?古事記を見ると、十拳の剣になってんだよね.
まあ、どっちでもいいか・・・
実際に国譲りの時の武甕槌神はこのような登場をしているのだ.
(「古事記」ごときのファンタジーに負けてたまるか!
ということで、ドクトルは物語を続ける.)
剣の上から、ひらりと舞い上がった、武甕槌神は、ゼウスの前に降り立った.
「武甕槌神、参上!」
「ひい!」大国主命はドン引きであるが.
「我が愛弟子、ゼウスよ、助太刀に来た!師匠直々だ、ありがたく思え.俺が来た以上、この戦の勝利、間違いなし!」
「おうおう、武甕槌、おめえ、ええかっこしいな、登場すんじゃねえぞ、けつ切れたらどうすんだ.おう?
そもそも、俺の方が先に弟子の危機を助けに来たんだ!言ってみれば先輩だからな」
と須佐男が例によって、武甕槌と一番弟子の取り合いである.
・・・・・・・
ティタノマキア、もはや、多神教の神々の世界大戦の様相である.
結末はいかに?
次回をお楽しみに!




