蕁麻疹(じんましん)
健ちゃんが体を痒がるので、ルシフェルが診察してみると、体幹に蚊が刺した後のような、少しピンクがかって、盛り上がった、発疹が見られた.
「おや、これは蕁麻疹だな・・・」
ルシフェルはママに聞いてみた.
「時々起こるのかい?」
「はい、時々起こるみたいなんですけど、この子、皆にあまり色々言われるの嫌がって、多少痒くても言わないんです.今日は痒がり方が結構強いから、服脱がせてみてみたら、こんな感じだったのですよ.」
「あ、私も子供の時にある時期、毎日、蕁麻疹ができたことありましたよ.近くに、母の父、つまり私の祖父の、友達の先生が開業医院をしてしていたので、見せにいっていましたけどね.あんまり母親に言うと、めんどくさいから、多少痒くても黙ってました.数日で出なくなりましたね.まだ、10歳頃の話だったと思います」
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蕁麻疹
定義と概念は、内科の教科書にも詳しく書かれている.例によって朝倉書店、内科学11版からである.
一過性の真皮上層の血管拡張と血管透過性の亢進により生じる膨隆(皮膚の表面が盛り上がること)反応で、強い痒みを伴う.24時間以内に消退し、掻爬などの機械的な刺激で、膨疹が生じる・・・・
「dermographiaという現象で、物理的な刺激で、皮膚に先の丸い金属なんかで字を書くと、同じところに、皮膚の盛り上がりができる現象です.日本語では、皮膚描起現象っていうんでしょうかね・・・」ドクトルの追加の説明である.
病態生理は、アレルギーの原因になる物質が、IgEと結合して、それが皮膚表面の肥満細胞(マスト細胞)のIgE抗体受容体に結合することで、Caイオンが細胞内に流入することによって、脱顆粒が起こり、マスト細胞から、大量の
ヒスタミンが、
放出されて起こると言われている.
ヒスタミンは血管透過性を亢進させ、末梢神経を刺激して、痒みを起こす.
ヒスタミンこそが、皮膚の膨隆、つまり局所の浮腫と、強いかゆみの元凶である.
いわゆる、I型アレルギーと言われる.
大雑把だが、気道とか、消化管に起こって、血圧がさがってショックになると、アナフィラキシーショックと言われる.
さらに、病態はもうちょっと複雑だが、
アトピー性皮膚炎、
花粉症、くしゃみと鼻水もIgEとヒスタミン.
アレルギー性結膜炎なんかも、同じような、IgEとか、マスト細胞が関与しているらしい.
「免疫学で習った、アレルギーIからIV型くらいまで、あるんですよね、そうなると、どの病気がI型で、なんてことは、私の手に追えませんね・・・・」とドクトルはいう.
近くに然るべきかのお医者さんが、いる時にはドクトル、自分で、病態の深追いしないで、専門の先生に相談することにしている.患者を見ている、時間帯夜間とか休日とか、その近辺に医者が自分だけ、という事情の時は別だが.
ヒスタミンの他に、マスト細胞表面の、リン脂質から、アラキドン酸を経て合成される、プロスタグランジン、ロイトコルエン、PAF(血小板活性化因子?)、トロンボキサンなども蕁麻疹の発症に関与している可能性がある.
物理的な刺激等で、末梢神経から、遊離されるサブスタンスPや、細菌由来の因子、補体フラグメントなどによっても非特異的な、脱顆粒が生じる.
特殊な蕁麻疹として、IgE抗体受容体などに対する自己抗体により生じる、自己免疫性蕁麻疹や、補体のC1ステラーゼインヒビター欠損症による血管神経浮腫がある.
一生涯で、個人が蕁麻疹に罹患する率は、約15%とされている.
4週間以内に軽快する急性蕁麻疹は多くが再発なしで経過するが、一部は慢性化する.
ある報告では、90%が1年以内に軽快しているが、数10年にわたって良くならない、例もあるらしい.
治療のガイドラインでは、基本は抗ヒスタミン薬を使うらしい.眠気の来ない、H 1ブロッカーが基本らしい.
「大体、皮膚科の先生は、第二世代以降、つまり眠気の少ない、抗ヒスタミン剤を内服薬で出しますね.私なんかはおっかなびっくりで、レスタミン軟膏なんて出すのですが.全身どこに出るか分からないですからね.体の内側から、元からたつ、って感じですか・・・」ドクトルのコメントである.
「まあ、でも良い子と、その親御さんに言いたいのは、蕁麻疹、俺やら、ドクトルみたいな、怪しげな医者じゃなくて、ちゃんとした、皮膚科の先生に診てもらうことを勧めるな!」
(なんだそこか、結局・・・・)
「はいはい、今日明日のうちに、近くの皮膚科に連れて行きますね」ママはその日のうちに、近くの皮膚科に連れて行った、とさ.
その時にこんな会話が交わされた可能性が、医者の家族あるあるで、ある.
「え、やだな、お医者さん、行くの、ママ、痒いのもう治ったから、また今度にしない?僕お医者さん行くの、あまり好きじゃないんだけど・・・」
「何言ってるの、お医者にかかるの好きな人なんていませんよ、それにあなたのお父さんもお医者さんでしょ・・・」(健ちゃんのパパは腕聞きの脳外科のお医者さんである)
「でも、よそのお医者さんでしょ・・・」
「いいから、ほれ、行くよ、ついてきなさい.」
その後、健ちゃんの蕁麻疹は再発はなかったと伝わる.




