もう一つの国譲り
ゼウスを中心に、その兄弟姉妹たち、イスラエルの神々、出雲の神々の、キュクロプス、ヘカトンケイルで、クロノス攻略の戦略が、日夜議論された.
高天原と出雲の「国譲り」を参考に、ゼウス一味は強大な武力を背景とはするが、まずは、レア様とその子供の神々を中心に、なんとかクロノスの引退を説得する.
それが不調に終わった時こそ・・・
「全面対決・・・・・」というレア様の表情は優れない.
大国主命が、レア様に声をかける.
「母上、やはり、迷いがありますか?なんといっても夫である、クロノス王のこと・・・決断がつきかねるということ、お察し申し上げます」
「おや、命、お気遣いいただきありがとうございます.それにしても、あんたは本当に優しいね.ゼウスが、惚れるのも無理はない.お国の旅、クレタに戻ってからも息子は毎日のように、楽しそうに話すんですよ.よっぽど楽しい旅だったようだね.
本当にありがとう」
「いえ、私もゼウスと旅した時、ほんとに楽しかった、一生の思い出です・・・
ご主人の説得が、うまくいかなかった時、ですよね、ご心配は・・・」
「そう、うちの人、反撃してきた時、それこそ大戦争・・・」
「私に、会わせていただけませんか、クロノス王に、なんとか戦を思いとどまるように、穏便に引退願えないか、説得してみようと思うのですが・・・」
「・・・・・」レア様は黙り込んでしまった.
彼女が思うのは、
(そんなことができたら、苦労はしない.あの人の頑なな心は、異国の方にほぐすことはできますまい・・・)
「母上、是非、私と、ゼウスをクロノス王の元にお連れくださいませ.私は、友の父上と、語り合ってみたい・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
レアは、ゼウスにのみ、大国主命の提案を打ち明けた.他の息子や娘には話さなかった.
ゼウスは母の話を黙って聞いていた.
「親父の頑なな心、ほぐすことできるかな?」ゼウスは友に尋ねる.
「それは、お前の、誠意にかかっている、のではないかな・・・」友の言葉に、ゼウスは黙って頷いた.
ゼウス、大国主命、レア様の3人の姿が、クロノス王の宮殿にあった.
王の近衛隊長が、200人からの兵を率いて、彼らを捕らえようと押し寄せてきた.
それを制したのは、クロノス王であった.
「その方ども、無用じゃ、王妃と息子は、丸腰できておる.それにお前らが、1000人、束になってかかろうともわしの息子を捉えることはできぬ・・・・」
ゼウスら3人は玉座の前に控えた.
「お前、が、ゼウス・・・・」
「はい、父上・・・」
「ほお、なかなか不敵な面構え・・・・」
クロノス王は、自分にとって変わる可能性があり、自ら排除しようとした、息子のゼウスとは初対面である.
「そのほう、クレタでは島の悪童どもを集めて、ガキ大将だったみたいだな.それに、世界をあちこち旅して回ったそうだな.レバノン、イスラエル、ペルシャの火の山、インド、大陸の砂漠・・・大陸の東の果て、オケアヌスの入り口に浮かぶ神々の国・・・・」
「父上はよくご存知で・・・」
「その方の動きは逐一みておったよ.逞しく育ったな・・・・」
クロノス王は、王妃の方に向き、
「レアよ、ありがとう、この子を救い出して、このように立派に育ててくれてな」
「あんた、全部わかっていたの・・・」
「わしも馬鹿ではないから、石ころと赤ん坊の区別くらいできる」と言い、レア様の方を少しにらめつけた.
「ははは、全て、お見通し!そして、東の島から来られた、息子のご友人・・・息子がえらく世話になったようで、お礼を申し上げます」
「ははあ・・・」と大国主命は平伏した.
彼はクロノスと語り合いたいと言いながら何も言えずにいた.
しかし、精一杯発した言葉である.
「異国の私が、意見を申し上げる、御無礼をお許しください.
私は思います.譲るべき時に、譲ってこそ、退くべき時に退いてこそ、
王だと、思うのです.いかがですか?」
「もとより、私は、戦うつもりはない」
(なんと!母とゼウスはお互いの顔を見た.)
クロノスが続けていう.
「それに、時間は、自分の生み出したものを食い尽くすのに、いい加減飽きてしまった.新しい子供を作るのも、そしてその子供を食い尽くすのも・・・もう腹一杯じゃよ.ははははははは」
と、豪快に高笑いした.
すぐに厳しい顔に戻り、クロノス王は言った.
「しかし、わしが退いたとて、イアペトスとその息子たち、鼻息の粗い、ティタンの精鋭たち、わしを幽閉した後、奴らが黙っておるまい.戦になると、長くなるぞ・・・」
・・・・・・・・・・・・
オリンポスの山の近くで、クロノスからゼウスに、「国譲り」の儀式が行われた.
それぞれ、武装した配下を、控えさせている.
クロノスの背後のティタンの軍勢は、王に何かあった時には、襲いかかってきそうな、油断のない目つきである.
もちろんそれぞれの手に槍や棍棒と、盾を持って、ガチャガチャと大きな音を立てている.
クロノスの周囲を、青柴垣で多い、大国主命が、祝詞を唱えて、クロノスを幽閉しようとした.
しかし、すぐに、ティタンの軍勢に担ぎ上げられた、クロノスは、青柴垣から、外に抜け出してしまった.
レアと、その子供の神々がすかさず、大国主命の周囲を固め、彼と一緒に、同じ印を組む.
出雲奥義、「天の逆手」である.
二礼
四拍手
一礼
ギリシャの神々も、大国主命に倣った.
空間が歪み、時が逆に流れた.
次元には隙間ができて、そこから、何やら訳のわからないものが、ものすごい勢いで大量に出入りしているようにも見えた.
青柴垣の中に隠れた、クロノス王はそのままタルタロスに送られた.
ゼウスを中心とする、オリンポスの神々による支配が始まった.
それに反対する、ティタンとの大戦争が、勃発し、10年の長きにわたって泥沼の戦いが続いた.クロノスの予言の通りであった.




