国譲り④ 最終奥義、「天の逆手!」
ゼウスと、大国主が大の仲良し.
「性格が、違いすぎると、男同士、仲良しの親友、と言うのは実はあまり多くないのではないかと俺は思う」
ルシフェルの意見である.
「まあ、そうかもしれませんね、性格の違いすぎる先生、大体、私も仲が悪かったかな・・・」と、ドクトルも同意する.
国譲りの時の、大国主命の優柔不断
トロイヤ戦争でどっちつかずの、ゼウス=ルシフェル
2人は似ているから、お互いのことを分かり合える親友になれたのかもしれない.
大国主命、せっかく苦労して作り上げた、国土と、民、譲れと言う、高天原との交渉を、優秀な2人の息子に丸投げをした.
ゼウスはゼウスで、トロイア側、養女のアフロディーテ、ギリシャ側の正妻のヘラと娘のアテナ、結局どっちに味方すればいいかわからないで、戦争が複雑化して、泥沼化した.
高天原の強引な要求.
「国を譲れ!」つまり、天にいまします、神々の「天下り先」の確保が目的である.
最初に打診されたのは、アマテラスの長男、天之忍穂耳神である.
この長男、どう言う人だったのか?
母上に呼ばれて、退官して、天下りの打診をされた.
高天原の神といえば、中央省庁の上級官僚のようなものだ.
一方で、地上は支配者といえ、いわば、民間だ、せいぜい、いいところ、大企業の社長程度の認識なのだろう.
「その方、地上の国を治めてみないか?楽しそうだぞよ」
もちろん天下りは、「天孫降臨」の略なのだが、すると、天下り、ではなくて、
天降り(くだり)と無理矢理読むしかないか・・・
天之忍穂耳神は下界を見下ろしてみた.
なんとそこは、争い、飢え、訳のわからん怒り、身内・友達の死、その他の悲しみ、貧困、嫉妬、策略、詐欺、ありとあらゆる災いに満ちた、禍々しき、土地である.
「楽しみとか、喜びとか、あいつらにはあるのだろうか・・・」彼は、小声で呟いた.
現実主義、なのに厳しい現実からは逃げ回る、お坊ちゃん育ちの長男坊は、即座に断った.大国主命と少彦名命が心血を注いで地上の楽園と思っていた土地でさえ、天上の神々から見れば、「なんと薄汚れた・・・」と言うことになったとすれば、大国主、結構へこんだのではないだろうか?
「あんなめんどくさそうな国、総督府の長官でも私はお断りだ!」
そこそこできのいい長男には、その本来の頭の良さ、知恵の切れ味の鋭さのゆえに、赴任を断られてしまった.
「じゃ、誰を送り込むか・・・」
こう言う時、高御産巣日神が、まず最初に意見を求められる.
それを参考にして、アマテラスが決定すると言うことになるのだが、その前に八百万の神々が、天の安の河原に集まって評議をするというのが習慣である.八意思金神も高天原のオピニオンリーダーである.
皆で相談した結果、天菩比命(天穂日命、あめのほひ)を派遣しようと言うことになった.しかし彼は、大国主と仲良しになり、すっかり、葦原中国が気に入ってしまった.3年経っても高天原には帰らず、国譲りが成就したあとは、裏切り者として、左遷人事が待っていた.彼は、高天原から再度、国の中枢から、一地方に格下げになった.出雲に出向になり、その子孫は、大社の神主を代々務めることになったという.
次に派遣されたのは、天津国玉神の子である天若日子である.目付け役として、天之麻迦古弓と天之羽々矢がつけられた.
彼は大国主娘の1人、下照比売と結婚し、自分が葦原中国の王になろうと企み、8年たっても高天原に戻らなかった.これを不審に思った天照大御神と高御産巣日神は八百万の神々と思金神の勧めで雉名鳴女(きぎしのななきめ.鳥のキジ)を派遣して使命を果たさない理由を天若日子の様子を偵察させた.
キジに託した、天照大神の言葉を、鳥や獣の言葉を解する、天探女はねじ曲げて伝えた.
「あの鳥はスパイ、殺しておしまい!」と.
彼はこのキジを弓で射て殺してしまった.その矢は、高天原の届けられた.
「天若日子にもし、叛逆の心があるなら、この矢は、きっと彼に災いをもたらすであろう・・」と高御産巣日神は、この矢を地上に向かって投げ返したところ、天若日子の胸にあたり、彼は亡くなってしまう.
・・・・・・・
結構ドロドロのスパイ合戦の後、と言っても、高天原のスパイが、大国主の娘にいいように、「逆ハニトラ」で絡め取られて、さらに、組織内の伝達の不行き届きやら、仲間の足を引っ張るとかで、なかなか、内部から、切り崩しにかかれないと言う感じになってしまった.
「ううん、皆、手ぬるい!何を、そんなまどろっこしいことをしている!大国主など、一気に攻め滅ぼすべし!」
次に、派遣されたのは、武甕槌神.
火の神、火之迦具土神の血から生まれた.
高天原、最強の武将であり、雷神である.
ウラノスの血の滴りを受けたガイアから生まれた、ギガースのような存在なのかもしれない.
「へえ、こうしてみると、ギリシャと、日本神話、結構似たような話が多いですね・・・」などとドクトルが脳天気に新しい発見をしたと嬉しそうに話すので、建御名方はちょっとムッとして、いった.
「そんな軽々しく言わないでもらいたいね.俺たちにしてみれば、国家存亡の危機だったのだから」
「そお、国家存亡の危機・・・だが、国家元首、決断できずに、俺たちに丸投げした・・・・」事代主も遠い目をした.
地上に降り立った、武甕槌神に、まず建御名方神が立ちはだかった.
「おう、武甕槌、俺と相撲して勝ったら、話を聞いてやらあ!」勇ましく立ち向かったのだが.
戦神としての格は、武甕槌が遥かに上であった.あっさりと投げ飛ばされた、建御名方は、出雲あたりから、諏訪まで飛ばされてしまった.そこには、結界が張られ、彼はその中で幽閉されることになった.以来彼は諏訪神社の結界の外には出ることはできないということになっている.
あるいは、こんな説があると面白いかも.
武甕槌に投げ飛ばされた、建御名方は、遠く越後の糸魚川まで飛んで行った.ゴロンと落ちて、そのあと、高い山に挟まれた、大地の溝にはまり込んで、コロコロ・・・山の谷間の溝を転がっていった.信濃から、遠い、甲斐と駿河の方まで転がって、富士山に当たって、ころんと弾き返されて、倒れて、手が当たったところが富士五湖で、頭が当たってできた窪みが、諏訪湖であり、その近くが、諏訪盆地であると(そんな話は、ないか・・・)
「うんうん・・・・」皆は、高天原と葦原中国の、攻防に手に汗を握った.
「親父、どうすれば・・・・」事代主は、一応(?)父である、大国主命の意見を伺った.
この国家元首、
「まあ、最後の手段、出雲の最終奥義、を出すしかあるまい・・・・
しかし、あれを出したら、私も、お前もしばらく、地上には出てこれなくなるが・・・」
「最終奥義ですか、私にはまだ、できません」
「まあそう言わずに、事代主、お前がやってくれ、私も喜んで地下に潜ろう・・・」
「それでは父上、
我々の要求はどうしましょうか?」
「そうだな、
まずこんなところか・・・・・・・
人民と、国土はほとんどは高天原に譲りわたす
そして高天原は、稲作の技術を全て、人民に教えること
しかし、国津神々、あくまでも、葦原中国に所属すること、年に一回、必ず出雲国にあつまり、評議を行うことを認めること
そして、大国主命の宮殿は、天孫が降臨遊ばした後に営まれる、高天原の宮殿よりも、壮大、かつ壮麗たるべきこと.神殿のみならず、その邸宅まで、こちらの要求の通りに建造されるべきこと
「と、まあ、こんな感じでどお?」
「武甕槌が怒り狂って、交渉を拒否した時はどおします?・・・あいつ絶対怒りますよ、無礼者!みたいな感じで・・・」事代主は心配そうに父に尋ねる.
「そお、その時こそ、我らの奥義が意味を持つ、はずだ」大国主は、含みを持たせた言い方をした.しかし、自信は無さそうである.
いよいよ、高天原と、葦原中国の最終交渉の日が来た.
国家元首は、神殿の奥深くに隠れて出てこない.
国の命運を背負って出てきたのは、外交担当の、事代主ただ1人、である.
相手の武甕槌神は、「なんだ、事代、おめえだけか?親父はどうした?」
「・・・・・」
事代主命、黙って、父に言われた、要求事項を差し出した.
予想通りに武甕槌神は怒り狂い、そこらのものを殴り倒すは、雷をあたり構わず、ぶっ放すはで大変だったのだが・・・・
おもむろに立ち上がった事代主、
「それでは・・・・」
妙な印を結んで、何か唱え始めた.
後から考えてもあんな、印を結ぶのは、無理なのであるが.
だから誰も真似ができない
「出雲、最終奥義・・・・」
その、奇妙な印を結んだ手で、事代主は叫ぶ.
「天の逆手!」
逆手とはいわば、呪いの印なので、気安く真似をしていいものでもない!
事代主は、小舟の上にあった.
それは、青柴垣、つまり青葉のついた柴で囲われていた.
彼は、印を結んだまま
二礼し、
四拍手
さらに一礼したところまでは、皆が確認できたのだが.
拍手が終わる頃から、そこにいたものたち皆、天と地が、回りながらどこかに吸い込まれるような、錯覚を覚えた
あたりは不思議な気が充満し、海は溢れ、川の流れが逆流し、
太陽の光は、地上から、太陽に戻るように見えた.
さらにその太陽は西から登って、東の方に向かい、天空を逆に歩む.
「時計」が当時あったとしたら、おそらく、針は逆に回ったのだろう.
あるいは針そのものがいびつに蛇行して、変な動きをしていたかもしれない
空間には裂け目が起こり、こちらのものが皆向こうに吸い込まれる.
向こうの空間からこちら側に何かが流れ出してくるような・・・
気がついた時には武甕槌神は、葦原中国の要求を全て飲まされて、条約文章にサインをした後だった.
「あれ、俺、いつの間にか条約に署名してるぜ・・・」
事代主命が乗っていた、小舟はいつの間にか転覆している.
彼はその後、行方不明となった.
ある人の話では、海の中に身を投げたといい
青柴垣の裏に隠れたともいい
またあるものは、根の国に隠れたともいう
「事代主は恵比寿として、恵まれない人々に、福を配って歩いている」という伝承もある.
彼に、ごく近しいものの話では、
外交官の仕事、疲れたので、定年前に退職して、海に船を浮かべて、釣り三昧の「天下り生活」だとも・・・




