昆虫の社会性 「ミツバチから学ぶ」
考えてみれば、昆虫とは不思議な生き物である.
我々脊椎動物とは全く違った、呼吸、循環システム、
血液、そう、虫の血は赤くない・・・
筋肉と骨格の仕組みはまるで違う.
空を飛ぶときの仕組みも、鳥、コウモリとは全く異次元である.
さらにさらに、生まれてから、大人になるまで、
幼虫→(幼虫の間にも何度か脱皮する・・・)→蛹→そして成虫になるという、
「変態」という体の変化を起こす.改めて変態と変体について調べてみた.
変体は、漢字の文字を変形させた場合に使う言葉らしい.
「きゃーあの人変態!」の変態とか、
「ドクトルって、行動が変態・・・」というときの変態も、
昆虫が形態を変えるのも、どっちも「変態」である.
そう、昆虫のように、ガラリと、形を変える動物、他にいるか?
おたまじゃくし、かに、ウニ、プラナリア、それぞれに個性的な形態変化をするが、昆虫の、幼虫→蛹→成虫ほど劇的な変化ではない.
なんと、昆虫の蛹の時、何が起こっているか?体のほとんどを、一旦溶かして、成虫原基という、設計図をもとに、一から成虫の体を作るのが、蛹の時期、そして蛹の体の中で起こっているらしい.
「ひえー、これはもう驚異の世界ですよね・・・・」
人間の体の形が形成される時も、かなりダイナミックな事が起こるが、ここまで、劇的ではないかもしれない.
昆虫の蛹の中で成虫が出来上がる過程、これはすごく興味のある出来事であるが、今日のところは、これくらいにしておいて.
今日のテーマは、昆虫がどうやって、「社会性」を持つ事ができるかということを、
養蜂の神様、オリスタイオス先生に伺ってみよう.
「では、先生よろしくお願いします」
演題のテーマ:ミツバチたちがどのようにして「社会」を作っているか.そして、その作り上げた社会の中で自分の役割を果たすか.
ということである.
「特にアリとか、蜂の社会行動について教えてください.これら昆虫の行動、学習によるのですか?.それとも全て、遺伝的に決まっているのですか?」まずドクトルの質問である.
アリスタイオス先生の答えは?
「それは本質的で、しかもとても難しい問題です.」
つまりこういうことである.
女王蜂になるべき幼虫に、働き蜂たちは、ローヤルゼリーを与える.
それではどの幼虫に与えるか?
まず、ミツバチの集団内の、女王が高齢となり、生殖力等の女王としての力が衰えていないときには、幼虫に対する、ローヤルゼリーの給餌は起こらないらしい.
そして、ローヤルゼリーが給餌される、幼虫は、その給餌担当の働きバチの、アクセスの良い場所にいることが条件である.
次に、一度、働きバチから、ローヤルゼリーの給餌を受けた幼虫に対しては、他の働きバチも習って次々、給餌するという、いわばpositive feedbackのようなことが起こり、どんどんその幼虫には、ローヤルゼリーが供給されるようになる.
「それって、生まれたとき、どこに生まれたかによって、なれる職業が変わる、出生地ガチャ、みたいな感じなんでしょうか?」海丸くんは面白い質問をする.
静香も、経験からそれはあるかも、と思う.そして彼女は、結構そのことで、したい勉強ができなかったという経験があるかもしれない.
「うーん、まあ、基本的に、誰にローヤルゼリーが配られるかということは、初めは機会均等、その後、配られる濃度というか、密度が変わってくる、という感じでしょうか・・・」アリスタイオス先生の考えである.
その後は、ローヤルゼリーで育てられた幼虫は、女王の候補となり、同じような候補達との競争を経て、女王になり、群れを率いて、卵を産む・・・
「他の働きバチの役割分担、どうなるのでしょうか?」
あるものは、蜜を集めに遠くに営業活動を行い、
あるものは、幼虫の世話を主に行い、またあるものは厨房で調理師として、幼虫達のワーカーゼリーや、女王とその候補のためのローヤルゼリーを調理する.
実際に、それらの、食事を配る係
幼虫や女王のシモの世話をする係
巣の建築、メンテナンス
外敵が侵入したときに、撃退する係
蜜を見つけて、仲間に知らせ、収集する係
・・・・・・・
「一つの巣のなかで、ミツバチ達の中ではどのような役割分担があるのでしょうか?」はるなの質問である.
「蜜蜂、役割分担というか、大きく役割が三つに分けられる.それは
女王蜂、卵を生み出す、子孫を増やす
少数のオスバチ、女王と交尾して、子孫を増やす
大多数のメスの働き蜂
働きばちが巣の運営、維持、その他の実務を全て行う・・・」
アリスタリオス先生は、簡単な日齢と、業務内容を図にまとめてくれたのは、次のような感じである.
日齢 → 役割
0日 清掃
↓
3日 育児
↓
6日 ローヤルゼリー製造(MRJP= Major Royal Jelly Proteins,ローヤルゼリー主要タンパク質))
↓
10日 加工・建築(蜂の巣建設)
↓
15日 防衛(門番)
↓
20日 外勤(営業・採集)
ミツバチの有名な、八の字ダンスで、蜜のありかを仲間に知らせる.
カール・フォン・フリッシュが解読したという、有名な話である.
彼は、「ソロモンの指輪」で有名な、ローレンツらとともに、1973年ノーベル生理学・医学賞を受賞している.
その他にも、女王が暖簾分けで他の巣を作るとき
スズメバチなどからの攻撃に対する防御・・・
偵察に来た数匹を、フェロモンを撒き散らして、仲間のスズメバチを呼ばれてしまう前に「熱球蜂殺」で焼き殺して、攻撃される前に、巣を守る.
スズメバチが数匹で巣に攻めてきた時は、もう遅い.巣の仲間達は全て殺されて、幼虫はスズメバチ達に連れ去られて、彼らの大事なタンパク源にされてしまう.
「これらの行動が、全て、遺伝的に規定されているというのは驚きですね.本能行動?」
動物の行動は、一番原始的な、走性から、だんだん複雑化して、学習行動になる?
あえて分類をするとすると、以下のようになるか?
1. 動物の行動の分類
生得的行動(本能行動): 遺伝的に決定され、経験なしで行われる.
走性: 環境の刺激源に対する方向性を持つ移動行動.プラス(近づく)とマイナス(遠ざかる)がある.
例:光走性(光へ移動)、化学走性(物質へ移動).
反射: 外部刺激に対して無意識かつ高速に起きる反応.例:膝蓋腱反射.
定位: 特定の刺激源に対して体の向きや位置を定める行動.
習得的行動(学習行動): 経験や学習に基づいて変化・習得される行動.
条件反射: パブロフの犬に代表される、本来無関係な刺激(ベルの音)と反射反応(唾液)が結びつく学習(古典的条件付け).
学習: 慣れ(Habituation)、鋭敏化、刷り込み(Imprinting)、試行錯誤学習、洞察学習などがある.
「今ひとつ納得いかない感じですよね・・・反射と、条件反射の間に何かありそうで、群れを作る哺乳動物とか、わざわざ川を渡ってワニに食われるリスクを背負って、草原を求めるとか、蜂が巣箱と花の位置を八の字ダンスで仲間に教えるとか、この分類ではわからないですよね・・・」
一つの受精卵が、細胞分裂を繰り返して、生物としての形を作る時、同じ遺伝子なのに、いろんな臓器が出来上がるのは、考えてみれば不思議な現象ですよね.
ミツバチの社会も、言ってみれば、母親から生まれた働き蜂、遺伝的には同じ、クローンみたいなもんだ、それが、いろんな仕事を皆で分担してこなす・・・
「置かれた場所で咲きなさい・・・」ママが、ある詩を引用する・・
ラインホルド・ニーバーの詩「Bloom where God has planted you.」
神があなたを植えた場所で咲きなさい.
諦めるのではなく、むしろ人生の最善を尽くしなさい、そして花のように咲きなさい.
咲くことは幸せに生きることです.
あなたの喜びが他の人々を幸せにします.
あなたの笑顔が広がっていきます.
あなたが幸せで、それを笑顔で示せば、他の人々は、それを知って、彼らもまた幸せになるのです.
神はあなたを特別な場所に植えたのです.
もし、あなたが他の人々とそれを分かち合えば、あなたの人柄は輝くでしょう.
私たちが「咲く」と呼ぶのは、この「輝き」です.
神が私を植えた場所で私が咲く時、私の人生は人生の庭の美しい花になります.
神があなたを植えた場所で咲きなさい.
細胞の一つ一つ、ミツバチの一匹一匹、全てに役割があり、「置かれた場所」で力を全うする・・・・
しかし、「実存主義哲学者」達にしてみれば、このように、実存よりも本質に先立つというのはどう思うだろうか.
神とは、つまり遺伝情報・・・・
実存は普段の生活、本質が遺伝情報.本能?
「いやーなんかすごい問題に足を突っ込んでしまったみたいですよ」
今後議論がどんな方向に進むのやら・・・




