昆虫はなぜ、空を飛べるか?
「蝿の王」の講義である.なんと、昆虫はなぜ飛べるかという、おそらく知っている人は少ないのではないかと思われるテーマについてである.
そもそも昆虫のことを、勉強や、研究できる大学の学部は少ない.
受粉の媒介をしてくれる存在、あるいは、害虫としての昆虫の研究なら、農学部
解剖や、生理学、発生学の研究なら、理学部だろう
病原体を媒介する、昆虫の研究なら、医学部、特に感染症科とか医動物学教室ということになるのだろか.
ベルゼブルの存在の大きさ・・・
世界昆虫学会双翅目学会の毎年変わる、年次総会の会長とか、何年かで変わる、理事長とか、そんな中途半端な存在ではない.「王」なのである.つまり蠅の全てを知り、そして支配している人の講義なのだ.
「その、言葉の重さを、皆、よく噛み締めるべきである」とちょっと褒められたからって、ドクトルが調子にのって、ベルゼブル先生のことを持ち上げている.
「まあ、君、私なんか、そんな大したものではありませんから、気楽に聞いてくれた前.」ベルゼブル先生である.見た目と経歴とかから、世にも恐ろしい人かと思いきや、意外と、フランクな方なのだ.
考えてみれば、地獄の堕天使のナンバーワンのルシフェルとは、いつもご飯を一緒に食べて、一緒に勉強したり、時には旅行に行ったりする仲だった・・・
「昆虫が空を飛べる理由、結論から言うと・・・・・」
先生は、甲虫類と、ハエの仲間を分けて教えてくれた.
かいつまんでいうと、
カブトムシ=原始的(直接筋)
ハエ=超進化型(間接筋+共振)
ということらしい.
先生は、順番に、対比しながら教えてくれた.
まず共通の基本構造
どちらも翅は「胸(中胸)」についている.
「うんうん・・・・」子供たちはかぶりつきである.
ドクトルと静香もノートをとりながら、一言一句聞き逃すものかと、先生の話を聞く.
「翅そのものには筋肉はない・・・」
カブトムシが飛んでいるのを一度、健ちゃんは見た事がある・・・
薄いペラペラで鳥の羽とは全然違った・・・・・
「 胸の筋肉で“胸郭を変形させて”翅を動かす.ここが人間とか、鳥の腕とか胸との大きな違いと言っていいだろう・・・・」
カブトムシ(甲虫)の飛び方
甲虫の「堅実な飛行」.つまり、甲虫たちは、前羽が硬い殻(鞘羽)になっている.飛ぶときはこれを大きく広げ、中にある薄い後羽をバイブレーターのように動かす.
その仕組はこうである. 筋肉が羽の根元を直接引っ張る「直接筋」という仕組みを主に使う.
特徴: 1秒間に羽ばたく回数は数十回程度。重い体を持ち上げるために必死に羽を動かす、いわば「重戦車」のような飛び方だ.
ハエ・蚊(双翅目)の「超高速・超絶技巧」
「私の眷属であるハエたちは、甲虫とは次元が違う.君たちは、ハエを手で捕まえようとして逃げられたことがあるだろう? あの反応速度を支えているのが、この仕組みだ.」
つまりこういうことらしい.
羽の数は「2枚」. 本来、昆虫の羽は4枚だが、ハエ目は後ろの2枚を**「平均棍」**という小さな重り状の器官に進化させた.これがジャイロスコープ(姿勢制御装置)の役割を果たし、空中での急旋回を可能にしている.
エンジンは「間接筋」で、ハエは羽を直接筋肉で引っ張らない.胸の筋肉を「縦」と「横」に交互に縮めることで、胸の箱全体を歪ませ、その反動で羽をパタパタと弾き飛ばすように動かすのだ.これを「非同期筋」と呼ぶ.
神経からの信号1回に対して、羽が何度も勝手に往復運動をする.
その速さは1秒間に200回〜1,000回。もはや目には見えない.
昆虫が「王者」になれた理由
「いいかい、静香君、昆虫が空を飛んだのは、鳥よりも1億年以上も前のことだ.彼らが空を手に入れたことで、以下のことが可能になった.」
天敵からの逃走: 地上を這う敵から一瞬で逃げられる.
食料の確保: 遠くにある花や獲物を見つけ、移動できる.
分布の拡大: 海を越え、山を越え、地球の隅々まで「ニッチ」を見つけ出した.
(しかし残念ながら海の中で生活でききる昆虫はいない・・・)
「つまり、羽は単なる移動手段ではなく、『生存圏を爆発的に広げるための通行手形』のようなものだったのだよ.」
ベルゼブル先生は、満足げにドクトルの方を向き、ニヤリと笑いました.
「どうかな、ドクトル.私の講義は、君の『丸投げ』に応えるものになっていたかな?」
「あ、ありがとうございます.皆はわかったかな、私は正直、あまりに脊椎動物の骨格と、筋肉を介した、運動と違うので戸惑っているのですが・・・・」
ドクトルは正直に感想を述べた.
おそらく話の内容はかなりむづかしい話で、子供たちには理解しにくいのでは、と思われるのだが・・・・
ドクトルがふと子供たちの顔を見ると、皆、恍惚としたように、そして目を輝かせながら、ベルゼブルの話を聞いている.
新しい、面白い知識、彼らには、「おやつ」と同じ意味があるのかもしれない.
ベルゼブルという、ルシフェルの旧知の友達は、その後も、ちょくちょく別館に来て、色々と面白い話を聞かせてくれたのはいうまでもない.




