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アレスと白い杖

アレスが久しぶりに別館で夕ご飯を食べている.


彼が現代日本に来るとき・・・


世界のあちこちで、紛争が起き、それが現在進行形であるとき

と、

ヘスティアおばさんがオリンポスにいないとき、である.


今回の別館訪問の理由、両方である.


ドクトルが食堂で、海丸君と静香を相手にきょうのできごとを話しているようだ.愛ちゃんと健ちゃんも話を聞いている.


アレスが食堂にきて、食事ができるのを待っている.

キューピーとアフロディーテが、嬉しそうにやってくる.


ドクトルと話をしていた愛ちゃんと、健ちゃんも、アレスの近くにやってくる.

特に愛ちゃん.なんと彼女はアレスとも仲良しなのだ.


ドクトルが話していたのは・・・・


「いつものコンビニで買い物して出てきたところで、よくみる視覚障害の人、いつも白い杖で地面を叩きながら歩いて、なんか文句言ってるお爺さんなんですが、女子高生みたいなお嬢さんが、手を引いて一緒に歩道を歩いてあげてるんですね.そのおじいさん、いつもと違って穏やかないい顔してたなあ.」ドクトルの話は、ありふれた美談にも聞こえなくはないか?


「その女子高生のお姉さんみたいなこと、なかなかできないですよね.人に優しくするのってなんか勇気がいるって言うか・・・」海丸君もいつもそう思う.困っている人に手を差し伸べる、なんか照れくさいと言うか・・・善意の押し売りみたいな取られ方をすると面倒だとか、色々考えてしまうのだろう


「ふーん、あんたなら、絶対、そのおじいさんの手引いてあげるなんてことしないよね・・・・」アフロディーテが、アレスに聞いた.


「まあな、困ってる人とか、俺とは関係ねえからな・・・」


いつものツッパリだが、あいちゃんは、なぜかアレスの顔をニコニコしながら見ている.

ご飯の支度がひと段落した、ヘスティアおばさんも、愛ちゃんと一緒にアレスの顔をニコニコしながら、見ている.


「なんでえ、おめえら、俺を誰だと思ってんだ・・・」


「はいはい、戦争の神様、孤高の戦士、血に飢えた殺人鬼、みんなの嫌われ者の、アレス、でしょ、はいはいわかっていますよ・・」ヘスティアおばさんは、そう言うとまた厨房の方に戻っていった.


「ねえ、お父さん、しばらく別館泊まるんでしょ・・・」キューピーが嬉しそうに聞く.

「まあ、そうしようかな・・・」


その夜は、アレスと、キューピー、アフロディーテと、まだ赤ちゃんのアンテロスが川の字+1の格好で、一つの部屋で寝た、らしい.


翌日、アレスは朝早くから出かけていった.なんか世界の情勢で調べることがあるらしい.仕事が終わって夕方、別館に戻る時のことである.


夕方から雨が降っている.交差点に差し掛かると、道路の真ん中、横断歩道を外れたところで、白い杖をついて、傘を刺したお爺さんが、大きな声を出して、右往左往している.向こうからは車が来る.おじいさんが交差点にいるので、進めないようである.


「お願いします、お願いします」おじいさんは、大声で叫ぶ.


「ちぇ、しょうがないな、あれじゃ、皆、進めねえだろ!」とぶつくさと言いながら、白い杖のお爺さんに声をかけて、手を引いて、歩道の方に移動させた.


「ほら、爺さん、ちょっと脇によりな、車が来るからあぶねえよ」

と、爺さんの手を引っ張って安全なところに誘導した


「あ、私、神社の方に行きたいのですが、どっちですか、申し訳ありませんが、神社の方、しばらく行くと、ポストがあるんで、そこまで連れていってはもらえませんか?」


(うわ、この爺さん、昨日ドクトルが言ってた、女子高生のお姉さんに手引っ張っててもらった爺さんか・・・・)


「爺さん、車道にはみ出すとよくねえから、ほら歩道をちゃんと歩いて、そうそう・・・」


「私はどっちに向かっているのですか・・・」

「歩道を、神社の方に行ってるよ.ほら、あと10mでポストだ」

アレスはおじいさんの手を引っ張って、ポストのところまでおじいさんを連れていったところ

「少し先に小さい道が右に曲がるとあるのですが・・・・」


「お、あるな・・・」

「そこを右に曲がると私の行きたいところなんですが・・・」


「お、そうかい・・・」

アレスはおじいさんの手を引っ張って、右に曲がり、こっちがあんたのいう道みたいだ、まっすぐいきな」


「ご親切にありがとうございます.ところでご親切なあなた、血の匂いがします・・・そしてそれは血の涙の匂い・・・・もし、あなた、私も血の涙を流しすぎて、こんな視覚障害者になってしまいました、あんたも、あまり血の涙、流しすぎんようにな・・・」


別館に帰ってから、アレスは、皆には内緒で、何食わぬか顔で夕ご飯を食べていた.


その日の夕方の出来事については、本人も忘れていた.もちろん、皆には話さない.


 数日後の新聞の投書欄、

「白い杖の老人を親切に誘導している男性、感動しました・・・」車の運転手か、誰かにアレスは一部始終を見られたらしい.

背格好、服装、顔つきから、皆にバレてしまったらしい.まさか新聞に自分の善行が投書されているなどアレスは夢にも思わない.


アレスが、食事をしていると、またヘスティアのおばさんと、あいちゃんが、ニコニコしながら、アレスの顔をマジマジと見ていた.


キューピーとアフロディーテは何も言わないが、アレスの顔をニコニコと飽きもしないで眺め続けた.


後で、アレス、投書のことを聞いて「キー、ぎゃーやめてくれ、俺のイメージダウンだ!」と大騒ぎしたのだが、彼の大騒ぎについては皆が無視をした.







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