ars longa, vita brevis
ヒポクラテスは、「医聖」と言われる.
古代ギリシャの人で、なんと、ソクラテスとほぼ同じ時代を生きた人らしい.
ヒポクラテス
生誕紀元前460年頃、コス島〜死没、紀元前370年頃.テッサリア地方 ラリサ
一方、
ソクラテスは、
生誕紀元前470年アテネ〜死没紀元前399年(71歳)アテネ
ヤスパースの言うところの「枢軸時代」に生まれた、人間精神の結晶がここにもいた.
ドクトルが、医学部に入って、教養部の2年目に、ラテン語の授業を、顕微鏡解剖担当の教授に教わった.パラニューロンという概念を世界に先駆けて提唱された、大先生である.
筋肉、動脈、静脈、神経、皆、ラテン語表記である.
大胸筋:musculus pectoralis major
小胸筋:musculus pectoralis minor
顔面神経:nervus facialis
橈骨動脈:arteria radialis
側頭骨:os temporale
・・・・・・・・・
と言う感じだった.
人生は短く、医術は長い "ὁ βίος βραχύς, ἡ δὲ τέχνη μακρή." と言う有名な言葉、「ars longa, vita brevis アルスロンガ、ウィータブレウィス」というラテン語訳で現代でも広く知られている.
「へえ、これ、ヒポクラテスの言葉だったんだ・・・」40年近くたってドクトルは、ヒポクラテスのこと勉強して、初めて知った感じだ.
ラテン語の授業、その解剖の大教授は、何度も、「アルスロンガ・ビタブレビス・・・」と呟かれていたような記憶がある.
医者になって何十年、医学の進歩は止まらない、自分の知性には限りがある.
学問の進歩に追いつくのに、ヒーヒーいっていた.
最近では、少々諦めの境地、であろうか.
「しかし学問を続ける姿勢だけは持ち続けたいものだとは思う」とドクトルがいうと、
「それは大事なことだと思う.」とギリシャ出身のゼウス・ルシフェルも同意してくれた.
「あ、そうそう、日本の諺、というか格言というかでこうも言います」日本の老医師が言うと、
「ほお、なんていうんだい?」ギリシャの神が尋ねる.
「日くれて、道通し・・・・」
彼の心情をこれほど的確に表す言葉は、他に見当たらない.
ふと、ドクトルが、近くにある鏡を見ると、彼の頭には白髪が何本か混じっていた.




