ゆずるか、ゆずらないか、「この国・・・」
ゼウスと、草花の精霊たちと、その兄貴分の精霊のような、スクナヒコがワイワイガヤガヤと何やら話をしている.
国の行く末のことのような真面目な議論もあれば
ゼウスの旅のことが話題になることもある
スクナヒコや、精霊たちが語る、この国、あしはらのなかつくにの自然、風俗、習慣、木のみ、果物、魚、獣の肉、そしてこの頃は、農耕という、食糧調達の、方法が始まりつつあること、そして何をどう料理して食べているか、など
さらに大きな話として、これまで、スクナヒコと大国主が行ってきた国作りの事業のこと
具体的には、
国土の整備として、
農地の開墾、田んぼの整備、用水路の整備
農業.新たな作物の研究、稲作の導入について
住宅整備
玉の加工、土器や、青銅製品の開発製造といった最新テクノロジー
温泉事業 別府から、道後に温泉を引くなど.
医療・介護の問題、薬草研究
酒造り、酢、その他の発酵製品の開発製造
東国、高天原、朝鮮半島との外交問題.
戦争になりそうな時のための抑止力としての軍隊、弓矢、剣や矛といった兵器の開発
当然、子供の教育にも力を入れていたと思われる
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スクナヒコに、大陸の神様のことを聞かれた、ゼウスは、旅で通った、各地の神々の話を面白おかしく、話して聞かせた.
クレタから、西風に吹かれて、レバノンに流れ着いたこと
ベイルートで、アンブロシアの叩き売りをしたこと、
杉の林、砂漠、魚の住めない死の湖
ソロモン王の指輪と王の孤独
ミカエルの陰謀と、神々の弾圧
ペルシャの燃える高原、神の炎を代々守り続ける、ゾロアスターの一族のこと
アフガニスタンの旅、そしてカイバル高原を超えて、インダス川の上流へ
そこで出会った個性的な神様たち
すなわち、ヴィシュヌ、ブラフマー、シヴァたちとの交流について
シヴァと行った、ヒマラヤ山中の修行で、辛かったこと
さらにそこから、カラコルム山脈とパミール高原の谷間を通って、タクラマカン砂漠を経て、中国は周の街を見てきたこと・・・・
この島に渡る時、黒く、荒れた、向こう岸も見えない、日本海にたじろいだこと
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草花たちも、スクナヒコもうっとりしながら、ゼウスの話を聞いている.
「私たちには、想像もできない、世界が、ゼウスの思い出の中にはある・・・」
「見たこともない世界・・・」
「ゼウス、今度私たちもその見知らぬ世界に連れてって・・・」
ゼウスの話が一区切りついたところで草花の精霊たちが一斉に、ゼウスに、話しかける.
黙って聞いていた、スクナヒコも自分のことを話し始めた.
「私の生まれは、常世の国という.この葦原中国、からは、さあ、どれくらい離れているのだろう、異世界にあるとも言われる、理想の世界だ・・・」
故郷を語る、スクナヒコの目は郷愁の光が輝いている.遠いまなざし・・・
常世の国とは、古代日本で信仰された、海の彼方にあるとされる異世界である.
一種の理想郷として観想され、永久不変や不老不死、若返りなどと結び付けられた、日本神話の他界観をあらわす代表的な概念で、古事記、日本書紀、万葉集、風土記などの記述にその顕れがある.
西方浄土とは、つまり西の方角、お釈迦様が生まれたあたりにある、理想郷、つまり常世の国ということなのか?
しかし、仏教思想の西方極楽浄土の概念そのものは、古代の思想の中にはなかったものと思われる.
浦島太郎の竜宮城も一種の常世の国なのだろうか?
「私の故郷の、ヘラスの国にも、異世界があるのですが、それは、タルタロスと呼ばれる、地下深い、牢獄があります.常世の国も、地下深い、暗い世界なのですか?」
「いやいや、ゼウス、そんなところではない、常世の国とは、私が生まれ育った、理想郷だ・・・」
「変わらぬこと、人が、老いを知らない世界、あわよくば、若いときの輝きを取り戻し、そして、死んでもまた同じ生を生きることができる世界、それが常世の国・・・」とはスクナヒコの解説であるのだが.ゼウスにはなんのことやらよくわからない.
「スクナヒコは、一度も私たちを連れて行ってくれない・・・」
「どこにあるか、教えてくれない・・・」
「ほんとに、そんなところが、あるの?本当は、常世の国なんて、ないのでは・・・」
草花の精霊たちは一斉に批判的なことを言い始める.
そこに、高天原との交渉を終えた、大国主命が戻ってきた.
大国主表情には、若干疲れが感じられるか?
高天原との交渉といえば、後から考えれば、「国譲り」に関すること、かもしれない.
皆が楽しそうに話しているのをみて、彼の表情は少し明るさを取り戻したのだろうか?
「おやおや、スクナヒコ、今日は随分と賑やかだな・・・
おや、そちらの方は?見たところ、異国の方とお見受けしたが・・・
さては、スクナヒコ、常世の国から、友達を連れてきたか・・」
ゼウスは、立ち上がって、ひざまづいて、挨拶をした.中国で教わった、礼儀に則った行為である.
「私は、ヘラスの国から参りました、ゼウスというものです.西の果て、地中海に浮かぶ、クレタという島からこの国まで、旅をしてまいりました・・・・」
「ほお、それはそれは遠いところを・・・・」
これが、永遠の友である、ゼウスと大国主命の出会であった.




