The Mt.Everest Workshop on Spirits
ドクトルが別館の図書室で、何年か前の学会のプログラムを見ている.
第38回 The Mt.Fuji Workshop on CVD
脳外科とか脳卒中の専門家が集まる、脳血管障害に関する学会である.
毎回かなり狭いテーマで議論する.2019年の第38回は新横浜の駅の近くでおこなわれた.
テーマは、「頭蓋内動脈狭窄症の治療」だった.中大脳動脈の狭窄に対して、シロスタゾールを処方すると、狭窄が改善するとか、スタチンや、PCSK9阻害剤を使って、LDLをガッツリ下げると、脳の主幹動脈に対する治療として有効であるという話が多かったと思う.
「ほお、日本人はやっぱり富士山が好きだから、勉強会にMt.Fujiってつけるんだな、俺も、エベレストの上で、インドの神様と、いろいろ勉強したもんだ・・」
ルシフェルが遠い目をした.
ルシフェル=ゼウスがまだ若い頃、彼はインドを旅している時、土地の神様である、シヴァと、立ち合いをした.今でいうところの格闘技の試合のようなものである.武器を使わなければ、何を使っても良かった.突風や竜巻もOK,雨をふらして、水浸しにしてもOK,念力で、投げ飛ばしても良いという、ゆるいルールだった.
当時まだ自由に使えない、雷を使って、シヴァのことをゼウスは打ちまかしたのだが、破壊と再生、インド舞踊の神であると同時に、ヨガの神である、シヴァは、雷が落ちて、痺れて痛いのが、えらく気に入ってしまった.
「僕が格闘技の立ち合いで負けたのは、初めてだよ、こんな強烈で、素晴らしい痛みを起こせる、ゼウスくん、かっこいい、この技を教えて・・・」
それで、ゼウスとシヴァは大の仲良しということになり、誘われるままに、ヒマラヤ山中で、一緒にこもっていろいろ修行をしましょう、そしてお互いの奥義を学びましょうという、不思議な物語展開となってしまった、ということは前回にお話した通りである.
「晩秋のヒマラヤ、標高は、8000m前後なんだろうな・・・」
ある情報による、ヒマラヤ、8000m・11月末の気象状況の目安である.
気温
平均: −30℃〜 −40℃
寒波・夜間: −45℃前後
日中で風が弱い時: −25℃くらいまで上がることもある
ジェット気流がかかると体感はさらに低く、
体感 −60℃相当になることも普通.
風速
11月はジェット気流が強まり始める時期で、
平均風速: 20〜40 m/s
強い日: 50〜70 m/s
ジェット直撃: 80 m/s級(登攀不能レベル)
30 m/s → 立てない
50 m/s → テント破壊レベル
70 m/s → 完全な嵐
おそらく人間には生存不可能な、環境なのだろうが、残念ながら、ゼウスも、シヴァも不死身である.ゼウスは日常的にアンブロシアを飲んでいたし、インドの神々も、乳海攪拌の後、ヴィシュヌの策略で不正にえた、アムリタを内服した後なので、不老不死の体、永遠の命を得ている.
「うーー、寒い、というか、痛い・・・こんな苦しみだったら、死んだ方がマシだ、って思うんだろうね・・」ゼウスがいう
地獄の苦しみは、死が前提でない、苦痛が永遠に続くことが苦しみの本質なのだろうなのだろう.そして、ゼウスは死なない.
「まあ、文句言うなって、ここまで寒くて、痛いぐらいだと、むしろ、心地いいじゃないか・・・」とヨガの達人である、シヴァは、過酷な環境を楽しんでいる感じだった.
(どうせ、死にはしない、苦痛はむしろ、楽しんだ方が得じゃないと言うのがヨガの思想の本質なのかもしれない・・・)と嬉しそうな、シヴァを見て思った若き日のゼウスであった.
修行は厳しい.
昼間は、
山の中腹あたり、4000mくらいから、一気に8000mまで駆け上がる、ダッシュを、一日数本.
山頂に上がる途中の少し広いところで、立ち合い稽古
山頂に上がってから、腹筋と、腕立て伏せ、スクワット等をそれぞれ、1000回ずつ
・・・・
ちなみに、標高4000mから8000mの酸素濃度は、これもある資料から引用すると、
標高 気圧(海面=100%)使える酸素量の目安 体の感覚
海面 100% 100% 普通
4000m約60% 約60% 息が上がる・順応必要
5000m約54% 約50%台 高山病ゾーン
6000m約47% 約45% 運動かなり困難
7000m約41% 約40% 歩行だけでも辛い
8000m約36% 約35% デスゾーン
と言うことらしい.もちろん人間には運動するどころではないだろう.
酸素の濃度は、どこまで、登っても21%で変わりがないが、
気圧が下がるから、肺胞内とか、末梢血液中の酸素分圧が下がることが問題ということなのだろう.ヘモグロビンの酸素解離曲線が、だいぶ変なことにはなりそうである.
日中のトレーニングの合間に昼ごはん、これは、アンブロシア、とかアムリタで済ますことが多い.
食後と夜間は、フリートークとか、ディスカッションの時間である.
シヴァはインドの神々の話.
インドの神々、古くから、アシュラとディアウスの争いが絶え間なく、
ブラフマーと、ヴィシュヌ、とシヴァが、三神一体という最高神の格式であること、
ブラフマーはご覧の通り、変わり者で何言ってるかわからないから信仰する人が減っていること、でも天地創造の真理を語らせたらあの人の右に出るものはいないこと・・
ヴィシュヌは、10個の変身形態があり、それぞれが、神話の中で大活躍であること、のちの仏教の開祖も、ヴィシュヌが変身した姿であるということ
シヴァの家庭のこと、奥さんのパールヴァティがいい子だけどもおっちょこちょいで、子供は全部可愛い、って抱きしめたら、皆の体が引っ付いて、一つになったこと、見張りをしてた、子供、のガネーシャ、うっかり俺が頭切っちゃった、子供に象の頭をつけたら、大聖歓喜天という、偉い神様になったことなど.
一方、ゼウスは、クレタ島の自然、母親のペットのライオンに噛みつかれて、咄嗟に出たのが最初の雷であること、地中海から、レバノン、イスラエルの旅のこと、ソロモンの指輪のこと、ミカエルが嫌なやつだったこと、地元の神様は悪魔ということになっているが、ベルゼブルとか、アシュタルテ、ベリアル、モーロックとか、結構いい人たちで友達になったこと、ペルシャの砂漠から噴き出す神の火を雨雲起こして消したら、神の使いのゾロアスターにえらい叱られたことなど.そしてペルシャから、アフガニスタン経由で、カイバル峠を超えて、インドに来たこと・・・旅のことが中心だった.残念ながら、ゼウスは父祖の地であるギリシャの本土にはまだ足を踏み入れたことがない、それは、あったことのない、親父にまだ追われているから・・・
そして、不思議だったのは、イスラエルの神々は、精霊の力を使って、天使の姿に変わることができること、
「シヴァはあんなことできる?私は、ベルゼブルたちの力を借りて、変身したのだけど・・・」
「うん・・・それは俺らインドの神々も苦手なことかもしれないな・・・どうしても苦痛があれば、うちに、力を宿すことができる、みたいな考えになってしまうからかもな・・・」
「なんか、外から、力を借りて、集めて、ということが、我々ギリシャの神々も、インドも神々も苦手なのでしょうかね・・・・」
「そうだな、すると、座禅するのは、天の霊、地の霊、水の霊の声を聞いて、その力を借りることを学ばないとダメ、ってことになるのだろうか・・・・」
「あ、そういうこと、なんか、ソロモンの王様も言ってた気がする・・・」
・・・・・・・・・・・・
こうして、ゼウスと、シヴァのヒマラヤ山中の修行は一冬続いた.
春の初め頃、山を降りた、彼らは、
言葉には表せない、逞しさを備えていた.
そして、その表情は清々しかった.




