カイバル峠を超えて、インドへ!
「それで、ゼウス、これからどうするつもりだ」
ペルシャの高原での生活はかなり心地よく、土地の人との友情も育んだ.
「ここで、永住・・・」というのはゼウスには魅力的な選択肢だったかもしれないのだが・・・
「そお、私はこれから東に向かう.
インドを見て、そこから、
世界の天井の高い山を脇に見て、
極東の大きな国に行こうと思う.
なんでも、そこは、巨大な泥の川が流れているらしい.川の向こうは対岸が見えないほど遠く離れているらしい.泥の川の流域は肥えた土地で、豊かに穀物の実る広大な土地は、エジプトやメソポタミアと同じ頃から、文明があるらしい.
なんとそこには、文字や、占いによる、神の声を聞くという技術もあるらしい.
そこからさらに東の海、オケアヌスの入り口の神々の住みたもう、国を訪ねてみたいと思っている.」
「へー、とんでもねえ計画だな.でもゼウス、お前なら、いけそうな気がする、いや、絶対にいける.そして無事で帰ってきて土産話をたんと聞かせてくれよ」
ゾロアスターは、父である族長と、その二の姫、つまり今後は火の神の巫女となる、定めの姉を伴い、馬に乗り、マシュハドの街まで見送りに来てくれた.
東に小さくなっていく、ゼウスを彼らはいつまでも見送った.
ゼウスと、二頭のラクダ、ラダーと、クダーは、やや進路を南東に、そして現在はアフガニスタンのヘラートの街を目指した.さらに南東のカンダハル、そこから北東に進路を変えてカブールから、カイバル峠を超えて、パキスタンのペシャワールに入る予定である.
古い時代からこれらの街をつなぐ道ができ、それは遠い将来は、アレキサンドロス大王の、インド遠征のルートになり、さらに「オアシスの道」として東西交易の需要な道となる.
地図を見ると、イランの南部から、パキスタンにかけては、平地が続いているから、なぜこのルートを昔の人たちは取らなかったのだろうか?
この地域は確かに低地だが、砂漠が続いている.川がない.このルートはラクダも通れない死のルートなのだそうな.
ホルムズ海峡から、海を通っては?それは当時はどうだったのだろうか?
沿岸には寄港する港がひとつもなく、海を通る経路は実際には当時はなかったという.しかも、船が流されるのは、風まかせ.西やら、南に流されてはどうしようもない.あえてその危険を冒す意味は薄い、という判断だとすると、彼らの取るべき道は内陸のルートしかあるまい.
とにかく、ゼウスと二頭のラクダは、アフガニスタンの山岳地帯を、頭の小さい乙の字が少し左下を向いたような、アヒルのような格好で蛇行してインドに通じる国境へと向かった.
山道、当時は、山賊の襲撃が、「普通」だったはずである.しかし、彼らは、全くそういった災難に遭うことはなかったらしい.




