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俺とみんなと遭遇

どぞ。


「まず、僕とフタで確認したことを教えまっす」


それぞれが自分の楽な態勢をとり、ナリの言葉に耳を傾ける。


「みんなも気がついたと思いまっすが、この廊下は前に進もうと後ろに進もうと結局同じところ……この傷が付いた壁に行き着きまっす。

これはつまり、閉じ込められていることと変わらないでっす」


「考え方としては円形に繋がっている廊下だな。

で、この廊下だが、一周するのにおよそ十二分かかる。私もナリも入ってすぐに違和感を感じたわけではないから、恐らくは三周か四周ほどしているだろう」


「大体四十〜五十分無駄にしたのか」


「そうなりますね。

体感ですともっと短い気がしますけど…」


「こればかりは私達のことを信じてもらうしかないな」


「念のため僕も数えてまっしたけど、やっぱりそのくらいの時間でっした」


「い、いえ。疑ってるわけではありません!

その、緊張とかのせいで時間の感覚がおかしいんだと思います…」


「謝る必要はないでっすよ。それが普通でっすから」


「それで、一周辺りの距離に関してだが……こちらはよく分からなかった。

私は毎分百十メートル程の速さで歩いていて、皆に合わせ今回は毎分約百メートルで歩いていたのだが、誤差を多く見積もったとしても時間と距離の計算が合わないのだ。

数値で言うのなら、千百〜千二百メートルの差異があるだろう」


「僕も測りまっしたが、結論はフタと同じでっすね。

恐らく、この空間自体が伸縮か何かを繰り返しているんでっす」


「い、生きてるのか……!?」


「いや、それは違うだろうな。多分、術者自身がしっかり制御できてないんだ。

俺が経験あるから分かるんだが、偽物を維持するのは中々辛い。特に、大きいものや数の多いものを偽ろうとする時ほど矛盾が生まれやすいんだ」


「僕も同感でっす。

制御が出来てるかどうかは分かりませんが、もしもここが生き物的な存在だったとしたら、消化液などによって服や皮膚に異変が起きていないと変化でっすから」


壁をコツコツと叩いて反応がないことを確認するナリ。

術云々を差し引いても、反響音が生物的でない事や、今の衝撃や傷をつけた時の痛みで何も無いのだから生きている可能性はやはりない。

……そういった魔物がいる場合はどうしようもないが。


「そ、それで、どうすんだ?オレたち、閉じ込められたままになっちゃうのか?」


小虎が微かに混乱の色を見せる。

昨日の今日でこれなんだから慌てるのも無理ない。

しかし、これが術によるものであれ、遥か昔に失われたまじないじみた何かであれ、入ることが出来たのだ。


「いや、大丈夫だ。多分…というか、間違いなく出れる」


入り口しかない部屋なんて存在するはずがない。


「だな。

ただ、問題はどうやってその出口を見つけるのか、だ。恐らくは視覚的に隠された入り口さえ発見出来ればどうにでもなるのだが…」


辺りを見渡し、分かりきった情報を再度確認したフタは溜息をこぼす。


「もう一周するってのはどうだ?みんなで注意して探せばもしかしたら……」


「それは、どうでっすかね…」


提案する小虎に、ナリが小さく首を横に振る。


「もう一度十二分かけて一周する事自体は良いんでっすが、もしここを誰かが監視していた場合敵が向かってきているかも知れません。最悪、鉢合わせになってしまいまっす。

それに、さっきまでよりマシとは言え、心的疲労が大きすぎまっす。親玉と戦う前に気疲れして倒れでもしたら大変でっすから」


「…じゃあ、どうするんだ?」


小虎が再び焦りを見せる。

俺自身、誰かに見張られている、という発想には至っていなかった。

敵が来るかもしれない……。

そう考えると、迂闊に移動せず、ここで待ち伏せをした方が対応のしようがある。ナリの意見は最もだろう。

と、なるとだ。


「壊すしかない…ですかね?」


苦い顔をして残された方法を口にするセラ。

それにみんなで頷いた。


「私としてはあまり本意ではないが、この場合仕方あるまい」


「破壊音で敵に見つかる事を警戒するより、ここから出る事を優先した方が良いでっすからね」


壁を突きつつ答えたナリは、腰に携えていた短刀を握る。


「どうしまっす?僕が一人でやって、他のみんなが周りを見張りまっすか?」


「いや、見張りは一人にしよう。出来るだけ大勢で掘った方が良い。時間も体力も確保しておきたい」


「同感だ。皆で一気に開けよう。

見張りはルフトに頼みたいのだが、問題ないか?」


「ああ。

俺の術程見張りに適任なのも無いからな。精々、隠し通してみせるよ」


「分かりました。

でしたら小虎ちゃんにはこれを」


セラが太杖から取り出したのは浅黒く輝く刃物。


「クナイ……?」


「はい。確か、小槌を持ってましたよね?それを釘に見立てて掘ってくださって構いません」


「わかった」


そうして話が進み、それぞれが配置についた。


「いいでっすか?」


俺の背後にいるナリの掛け声で、みんなは、思い思いに手にした武器へ術の力を込める。

ナリは熱を込め、紅蓮に火照る短刀を。

フタはクナイの刃元に薄く水を貼り、高圧の水流を。

セラは同様にクナイの刃元に電流を走らせ切れ味を増し。

小虎はクナイを逆手に握って小槌で突く。


「いきまっす!」


その開始の合図が出た瞬間、今まで俺たちの声しかしなかったはずの閉鎖空間に、音が反響した。


《待て、やめろ。それはいけない》


それは、落ち着いたと言うよりかは感情のない、女性じみた声だった。













To be next story.



それではまた次回。

さよーならー

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