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俺とみんなと休息

お久しぶりです。

どぞ。


コドウ達との戦闘が終わって、それなりの時間が経った。

時計がないから正確な時間は分からないが、空が茜色に染まっているし、夕方なのは間違いないだろう。


「…夕飯にでも、するか?」


それまで誰一人として口を開かなかった沈黙を破ったのは小虎だ。


「じ、時間も頃合いだしさ」


言いどもりながら提案するが周りからの反応は薄い。

それぞれ、武器の手入れや、汚れたり壊れたりした防具の取り替えなどを行なっているからだ。

……いや、それは多分、正しい判断じゃない。

少なくとも俺は、とっくに終わった武器の手入れを今も繰り返しているのだから。

血肉を拭い、研ぎ終わった太刀。輝きは普段通りに戻り、僅かな血の跡も残ってない。

にも関わらず、未だに手入れするふりをしているのは、手を…身体のどこかを動かしてないと不安だからだ。

そして、それは他のみんなも同じなのだろう。

セラは普段することの無いクナイの切れ味を目を凝らして確認していて、フタは鎖鎌の携え方を念入りを超え執念深く行い、ナリはずっと短刀を振るって感触を確かめてる。

決して楽しくは無いこの状況。小虎が息苦しさに耐えられなくなるのも無理はない。


「…そうだな。食事でもするか」


「だ、だよな!!」


陰鬱としたこの空気を俺自身よく思っているわけもなく、小虎にのっかる形で状況を脱っそうとした。


「……そうですね。少し、お腹が空きました」


セラの返答を皮切りに他の二人も頷き、一度落ち着ける場所へと移動することにした。










赤く染められた岩石地帯から暫し歩き、ちらほらと雑草の見える荒野に到着する。

辺りは非常に見渡しやすく、急襲や奇襲などは容易に行えない場所だ。

……当然、スレイスや俺のように姿を消せる能力や幻覚を見せる能力などの前には無力だが。


「ルフくん、こっちには設置できまっしたよー」


「私もだ」


「こちらも問題ありませーん」


「りょうかーい。俺のとこも今終わったから、ご飯にしよー」


「「「「はーい」」」」


購入した例の道具さえあればその辺も抜かりなく対処出来る。

……跨がれたり、潜られたり、設置した場所が分かってたりしたらやっぱり意味はないけど、まぁとりあえずは大丈夫だろう。


「ちょうど良かった。ついさっき準備が終わったとこだ」


四方へ別れ警報装置を設置し終えた俺たちは、中心地点にいて食事の用意をしていた小虎のもとへと集まる。

獄魔都市攻略一日目なだけありまぁまぁ豪華だが、家でしている普段の食事に比べれば流石に寂しさを覚える。


「一応、均等に分けてあるから文句は言うんじゃないぞ?」


「とかなんとか言って、実は小虎ちゃんが文句言うんじゃないでっすか〜?」


「言うか!」


「ほら、二人とも。家の中じゃないんですから、暴れるとご飯に砂がかかっちゃいますよ」


セラの注意で少しむすっとする小虎と、ニシシと笑うナリ。

何時間か前には飽きるほど見たそんな光景も、今では何故か懐かしく感じられる。


「さ。戴くとしようか。

……実は、空腹で倒れそうなんだ」


「さんせーい!僕もお腹ペッコペコでっす!」


二人に頷き、俺たちは手を合わせた。









頬に風が当たる。

団欒とした食事の後、みんなで話したことは一つ。いつ攻めに行くか、だった。

結論だけを言うなら、休憩した後だ。

俺もフタもナリも負った傷は浅く無い。このまま突っ込めば勝てるものも勝てなくなってしまう。

勿論、こっちが休憩すれば向こうも休めてしまうから諸刃ではあるが、だとしても、身体を癒す事が先決だと満場一致だった。

突入は早朝。

今は月が真上付近にあるから、まだまだ先だ。……いや、もう真上まで来た、と言った方が正しいかもしれない。

少なくとも、半日程度で癒される傷では無いのだから。


「……ルフくん、そろそろ交代でっす」


もぞもぞと動く寝袋。中から現れるのは非常に目つきの悪くなったナリだ。


「おはよう。よく眠れたか?」


「バッチリでっす」


答えのわかりきった質問に、予想通りの返答をされる。


「こんな固いところじゃ寝れないのもわかるけど、少しでも休まなきゃダメだぞ」


「……分かってまっす。でも、眠れないものは眠れないでっす」


寝袋を脱ぎながらそう言い放ったナリは、俺の隣へと座る。


「案外、焚火がなくても明るいでっすね」


「だな。星が綺麗だ」


真っ暗な地上とは乖離して見える瞬く空。

野生動物の心配をしなくてすむこの辺りなら、目印になってしまう焚火を焚く旨味がないと判断した。

結果として見張りの人間は睡魔との相当な戦いを強いられるが、傍に眠る仲間たちを想いながら空を見上げれば自然と目が冴えていった。


「そう言えば、あの日のお礼をまだちゃんと言ってなかったでっすね」


ボソリと、どこか緊張気味にこぼす。

思い当たる節が無く首を傾げてると、チラチラと恥ずかしげな視線を向けながら口を開いた。


「あの時は、僕の代わりにフタに伝えてきてくれてありがとうございました」


頭を下げて、そうお礼を口にされる。


「……ああ、刃ノ国のやつか。

そんな気にすんな。大した事じゃない…ってことはないだろうけど、お姫様の涙を拭くのは王子様だって相場が決まってるだろ?だから良いんだよ」


自分でも驚いてしまう歯の浮くような台詞に次第に顔が熱くなってくる。

しかし、言った手前もう後には引けない。こうなれば、俺は王子様なんだぞ、と押し切ってしまおう。


「あっはは!ルフくんでもそんなキザなこと言えるんでっすね!

わっかりました。王子様かどうかはともかくとして、でっすけど!」


「失礼な。俺のどの辺が王子的じゃ無いと?」


「そういうところ、でっすかね」


宵闇に響くナリの楽しげな笑い声。

他の三人が起きないかと心配になるが、どうやらそんな様子は無さそうだ。


「さってと。そろそろホントに交代しましょう。間も無く明け方でっすし、ルフくんの休む時間がなくなってしまいまっす」


ひとしきり笑い終えると、少し真面目な顔をして告げられる。


「…だな。悪いけど、頼む」


「まっかせてくだっさい!」


安心したからか、今こうしてる間にも重くなり続ける瞼を擦り、ナリに仕事を託した。


「じゃ、おやすみなさいでっす」


「ん、おやすみ」


短く挨拶を済ませ、瞳を閉じる。

明日。いや、次に起きた時、恐らくは休みなく戦うことになるだろう。そうなった場合に足手まといにならないよう、今のうちに可能な限り休息をとらなければいけない。

………なんて考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。












翌朝、俺が目覚めた時には既にみんなは用意を済ませていた。


「わ、悪い!すぐ準備を……!」


「いや、別に急がなくていいぞ」


「ああ。予定より早く起きてしまったのはこちらだからな。余裕はまだある」


「辺りもまだ薄暗いでっすしね」


「えぇ。ですので、軽くでしたら朝食も採れますよ」


「そ、そうか…わかった」


穏やかな言葉に強張っていた筋肉が解れていくのがわかる。

よかった。やっぱり昨日は休んで正解だった。戦闘後の、あの張り詰めた空気はもうない。

……ああ。これなら、敵に遅れをとることも無いだろう。


「…よし。皆さん、ご飯の用意ができましたよ」


セラの言葉に思い思いの声を上げる。

そうして定位置となった岩、或いは地面に腰を落ち着け、手を合わせた。

これが、最後の晩餐にならないことを祈って。











To be next story.




それではまた次回。

さよーならー

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