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俺とみんなと始まり

どぞ。

修行が終わった三日後。

小虎以外の俺たちはサルナに呼ばれ、城にある会議室に集まっていた。それぞれソファに腰掛け、中央に立つサルナに注目している。

それまでの平穏な日々のせいか、室内に走る緊張感に少しだけ戸惑ってしまう。


「さて、皆さんにら戦争…第二次人魔大戦のことについてこれから説明したいと思います」


女王の間から移動した獄魔都市・ゴルデアルの地図を細長い棒の先端で差すサルナ。

姿は、以前と同じ制服を着ている。違うのは、髪をナリと同様に後頭部の少し上で結んでいる事くらいだ。


「以前にお伝えした通り、あなた方にはこの城に単独で攻め入ってもらいます。

突入までは最大限の支援をしますが、あくまでも隠密行動なため、そのつもりで。

また、突入経路ですが…」


そう言って棒の先端を城の中心から上に移動させ、突出した岩が多くある岩石地帯を示す。


「こちらの地域の入り口付近に、ツギハさんとヨウさんによる術を用いて経路を作ります。皆さんはすでに体験したことのある瞬間移動です。

入り口付近なのは、あまり近づくと敵軍に気付かれるためですね。そこからは岩の陰を行くなり、真っ直ぐ進むなりして城に攻めて下さい。

我々の最終目標はゴルデアルに座する魔王を倒し、戦争に勝つことなので余程のこと以外は些事です。必ず勝利して下さい」


サルナは淡々と説明を続ける。

…要するに彼女は、基本的に[どんな手を使ってもいい]と言っているんだな。

覚悟はしていたが、実際に言われると少しだけ辛いものがある。


「なお、城への突入口はその岩石地帯と獄魔都市の境目を繋ぐ洞穴のみです。

斥候兵の報告では、厳重に扉を封じているのみで見張りの敵兵の姿すらなかった、と受けています。

油断は禁物ですが、向こうは我々が攻めに来るとは思っていないでしょうし、恐らく戦闘にはならないと思われます。万が一、くらいの気持ちでいいでしょう。

突入前に気を張りすぎて精心を磨耗しては勝てるものも勝てなくなってしまいますから」


細長い棒の先端を掌に当てて押し込んで小さくすると、サルナは、ふぅ、と息を漏らすと、近くにあった一人掛け用のソファに腰を下ろした。


「以上が大まかな説明になります。

詳細をまとめた書類をあなた達が城から出るときに渡すので、援助できる範囲や毒物使用等々の質問はそちらで把握して下さい。それでもわからないことがあればその時質問してください。

では、他に何か分からないことがあればお教えします。挙手して下さい」


「で、でしたら私から…」


説明を終えたサルナにおずおずと手を挙げたのはセラだ。


「なんでしょうか」


「その、突入後に連絡手段があるのでしょうか?もしなければ、なにか期限の様なものがあったりしますか?[突入してから何日間後に帰って来なければ死亡と判断する]と言ったような事です」


セラの質問に心臓が跳ね上がる。

た、確かに、連絡手段がないのであればそういった期限を設けるのは当然だが、いざ口に出されると心臓に悪いなんてものじゃない。


「連絡手段はありませんので、一週間の期限を設けます。

少々長い気もしますが、それだけあなた達に期待しているという事です」


「それを過ぎた場合は…どうなるんですか?」


「失敗したと判断し、別の部隊に突入させますね。

後は私たちが勝つか負けるまで同じことを繰り返すだけです。ただ、回数を重ねるごとに成功率は下がるでしょうから、初発のあなた達に一番期待していることはかわりません」


「…わかりました。ありがとうございます」


「他には?」


「じゃあ、次は僕が。

仮に失敗したとして、逃げ帰ることは許されまっすか?」


「失敗そのものが許されない状況でその質問が出るのはどうかと思いますが…

そうですね、場合によります。

帰還地点は突入時と同じツギハさんとヨウさんの術法陣じゅっぽうじんですが、瞬間で敵地に赴けるというのは、瞬間で敵を自分たちの元へ招いてしまうことを意味します。

術法陣の場所がバレないようにしっかり後続を絶っているのなら帰ってきても問題ないでしょう」


「そう、でっすか。

了解でっす」


「私からも良いだろうか」


「どうぞ」


「敵地の…獄魔都市・ゴルデアルに陣取る魔王以外の戦力はわかるのか?また、魔王の容姿について知っていることがあれば教えて欲しい」


「……敵軍の総戦力は、私たちも把握しきれていません。

ただ、世界各地に攻めている現状から考えるに、ゴルデアル内に在中する敵はそれほど多くないかと思われます。勿論、一部隊が担って良い数ではありませんが、それでも少ないはずです。

魔王の容姿についてですが、正直なところ殆ど情報はありません。

容姿に始まり、名前、性別、種族、背丈、力量など何一つ我々は知りえません。

唯一、[魔王は常に玉座に腰掛けている]という情報だけです。これを頼りに探してもらう他ありません」


「そうか…。ありがとう」


俺以外の全員が質問を終えた。

厳しい現実から目を背けたくなる。だが、俺たちの活躍によってこの戦争の勝敗が決まるんだ。逃げるわけにはいかない。


「他にないなら、最後に俺から一つ。

成功したら、報酬はどんな感じなんだ?」


場違い、と言えば場違いなんだろう。

当然の欲求が、今この陰鬱とした中から出てくるとは誰も思ってなかったのかみんな驚いたような顔をしている。


「……ふふっ、そうですね。そうでした。

戦争に勝つ事ばかりを考えていたせいでそこを忘れていましたね。

成功したら…えぇ、あなた達はこの国…いえ、人間にとっての英雄に成るでしょう。

そして、次の王や側近として迎えられるかもしれません。

勿論、ルフェン女王の隣に、というわけではなく[次代の]ですが」


それまでずっと真剣な顔していたサルナが一転して柔らかな笑みに変わる。


「ふふ、それは楽しみですね。サルナ」


「ええ、本当に…って、ルフェン女王様!?」


ガチャリと、突然開いた扉から現れたルフェンに驚き、サルナはソファから立ち上がる。


「ど、どうしてこちらに!?ツキミさんとユキミさんの治療に専念していたのでは!?」


「「えっ!?」」


正面に座っているフタとナリが驚きの声を上げる。

王都での治療…漠然としか理解していなかったが、考えて見ればここで受けられる最先端と言えばほぼ間違いなくルフェンの蘇生の術だけだろう。


「もちろん、治療にひと段落ついたからですよ。

…けれど、お二人の完治はまだ先でしょうね」


「そ、それはどういうことでっすか!?」


「上手く、行かなかったんでしょうか!?」


焦る二人に首を横に振るルフェン。


「私が診る以上、失敗はありませんからその点は安心してください」


安堵のため息をつく二人をよそに「ただ」とルフェンは続ける。


「私が見るよりも早く応急手当てをした方がいらっしゃったようで、その方の腕前があまりに良すぎました。

完全な修復は不可能と判断したんでしょう。

傷口を[治す]ではなく[繋ぐ]ように治療したため、私の術は単なる[傷口の蘇生]から、[修復した傷口を一度切り離し、正しく再構築]しなければならなくなりました。

この再構築というのが厄介で、痛みを伴うだけでなく時間を費やさなければなりません」


「…つまり、どういうことでっす?」


「完全に治るが時間がかかる。ってことだ」


首を傾げるナリに、フタが答える。


「そういう事です。

動けるようになるのはおそらく一週間後。完治するのは長ければ一ヶ月ほどかかると思います」


「……増援は望めませんね」


落胆するサルナに、セラが首を横に振る。


「私達なら大丈夫です。

むしろ、御二方には私達がゴルデアルに乗り込んでいるとはお伝えしないでください。

治療の妨げになるといけませんから」


「だな。

怪我人が来ても足手まといになるだけだろうし」


「ちょっとルフトさん!そういう意味じゃないですよ!」


俺の発言をセラは汗を飛ばして否定する。

勿論、セラの言いたいことと違うのは分かってる。

だが、事実は事実だ。病み上がりに来られても困る。


「何にせよ、です。

あなた達には明日の夜、獄魔都市・ゴルデアルに攻めてもらいます。術法陣は以前と同じ場所に開かれているので、そこより飛んで下さい。

私からお伝え出来ることは以上です」


向き直り、俺たちに最後の説明を終えたサルナはルフェンに一礼し、言葉を仰いだ。


「…では、こちらで言わせてもらおうか。

ルフト隊に任務を告げる!

貴様達に課すはこの戦争の勝敗を左右する決めの一手だ!

任務名・魔王決殺!

心してかかれ!!!」


「「「「「はい!」」」」」


ルフェン女王より承る新しい任務。

それは、今まで受けてきたどの依頼・任務よりも重くのしかかるものだ。

だが、俺たちは必ずやり遂げてみせる。

絶対にだ。










To be next story.



それではまた次回。

さよーならー

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