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俺とみんなとお店 其の二

どぞー


意気揚々と腕を振って歩く小虎の後をついて行くこと十数分。

セラの案内してくれた場所とは一変して騒々しい音や、お洒落とは程遠い上半身裸の筋肉質な男共が闊歩する往来に出る。


「あ!お前はこの前の!

どうだったアレ?完成したか?」


すれ違う人々のうち何人かにそんな声かけをしては軽く会話をして先へ進む小虎。

こいつ、いつの間に王都にこんなに知り合い作ってたんだ。


「っへへ、驚いたか?

留守番してる間、城下町を探索してたからなー。結構いろんな奴と仲良くなったんだぞ」


「ああ。まさかお前にここまで人との交流が得意だったなんて思わなかったよ」


歩みを止めて腕を組む小虎にそう言うと、更に得意げに胸を張り、正面に立つ騒がしい音を響かせる建物に指を指した。


「で、ここがオレのお気に入りの場所だ。

見た目はただのでっかい家だけど、中に入ると凄いぞ!」


「それは楽しみでっすけど…なんだかここ、暑くないでっすか?」


ナリの言うように、この付近に来てから急に周囲の温度が上昇した気がする。

思わず手を当てた額には汗がにじみ出ている。


「そりゃあ熱いさ。だってここは…」


重そうな扉に手を掛け、小虎は押し開けた。

瞬間、全身を熱風が覆う。鼻腔を焼かんばかりの熱は瞬時に辺りの温度を倍上げし、身体中に汗が浮かぶ。

遅れてやってくるのは、眼を眩ませる程に光を放つ灼熱。…もとい、炎を蓄える炉と、鉄を鉄で打つ音。


「鍛治屋だからな!」


大音量の中でも良く通る声で、小虎は告げた。









「……中々、良い装備品が揃えてあるな」


鍛治屋の端の方に並べられた武器・防具を眺め言葉をこぼすフタ。

この鍛冶屋は生産と販売を別室で行なっているらしく、一般の人の出入りも多いため商品の陳列されている場所は入り口に比べて涼しい。また、鉄を打つ音もそれほど壁を一つ隔てているからか、それほど大きくは聞こえない。


「そうですね。アレもコレもと欲張りたくなってしまいます」


セラの言う通り、置かれている装備品はどれも一級品で、高価な物には特殊な性能まで付いている。

例えば、俺が今見ているこの剣は、剣身が水晶のように透き通っていて冷気を放っている。[斬りつけた相手の傷口を瞬時に凍らせて壊死させることが出来る]武器らしい。

また、その隣に置いてある鎧は[寒さに強く、軽度の熱なら無力化する]物で、単純な防御力こそ低いものの、場合によっては非常に有用な装備品だ。

その他にも、使用すると灼熱を帯びる短剣や、射ると一本が五本に別れて対象を襲う矢、展開すると全方位を守ってくれる盾、など、用途によって使い勝手の異なる装備品が置かれている。

どれもこれも一つの値段が目が飛び出るほどだが、ルフェンに言えばある程度融通の効く今の俺たちに手の出ない商品ではない。

とは言え…


「このクナイは先端に毒が付いているんですか。

あ、でも、一定以上の速さで切りつけると効果が下がるんですね…

うーん」


「ふむ、通常の分銅よりも小さいのか。それほど重くない代わりに、使いやすさと投げ当てた時の衝撃を一点に集中しやすくなった、と。

…だが、これでは相手の手首に巻きつけて動きを止めたりするのには少々不向きだな。軽すぎる」


「う〜ん。この網下着、強度が増した代わりに随分重くなってまっすねぇ…

これじゃあ鎖帷子くさりかたびらと合わせたらとんでもない重量になってしまいまっす…」


セラ、フタ、ナリの三人は示し合わせたかのようにして同時にため息をつく。

そう、ここにある装備品は非常に優秀なのだが、同時に欠点も持っているのだ。

特殊な能力や、特定の性能を付与・向上させた場合、必ずどこかに使い勝手の悪さが出てしまう。

それを補って余りあるのが特殊装備品なのだが、これも難しいことに、装備者の使用方法や術との相性が出てしまう。

俺の場合、装飾が細かすぎる物は術による偽視が上手くいかず、相手の目を欺き辛くなってしまう。出来ないことは無いが、かなり精心力と集中力を消耗するため長期戦には向かない。


「…惜しい気はしますが、これは諦めましょう…」


渋い顔をしたセラは手にしていたクナイを陳列台に戻し、他の所で道具を探している小虎の元へと向かっていった。


「そっちはどうだ、ルフト?何か良い物は見つかったか?」


同様に、見終えたフタとナリが俺の隣へやってくる。


「いや、どうも良いのが見つからない。

性能は申し分ないんだが、使った時のことを想定すると使い勝手が怪しい」


「ルフくんもでっすか。

今使ってる武器や防具より強いのは間違いないんでっすが、今出来ていることな出来なくなることを考えると踏ん切りがつかないんでっすよねー」


落ち込むような悲しむような顔をして肩を落とすナリ。

フタも同じ考えらしく、深く頷いている。


「やっぱ、普段から使ってる装備品が一番使いやすいってことなんだろうな」


いつの間にか側まで来ていた小虎は手にした小さな槌を弄びながらそんなことを言う。

隣に立つセラも同意見なのか、護身用にと忍ばせていた一本のクナイを眺めていた。


「じゃあ、ここでの買い物は小虎のそれだけでいいのか」


「もしあるならオレがまとめて買ってくるぞ」


小虎の言葉に首を横に振る三人。

勿論、俺も買うものはない。


「そっか。じゃ、買ってくるから少し待っててくれ」


そう言って会計する所まで向かう小虎。

程なくして帰ってきた彼女と共に鍛冶屋を出て、次に行く先へと、フタとナリが先頭を歩いて案内を始めた。



次回もお出かけ編です。

ではまた、さよーならー

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