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俺とみんなと別れ

どうぞ。


コドウとキョウが部屋を出てから程なくして俺たちは床に就いた。

彼らがいなくなってからの会話は少なく、小虎でさえただ静かに就寝の準備を整えていた。

布団の中で考えるのは、何故コドウは俺たちと行動を共にしたのかという事と、何故キョウをここに連れてきたのかという事。


前者は、偶然を装って俺たちに近づき情報を得るためとみて間違いないだろう。

空腹で倒れていたのは何かしらの不安が重なってなのか、それともあえてやったのか。これはそれほど重要な事じゃないだろう。諜報活動をする手段としていくつかある候補の中から選んだ一つでしか無いはずだ。


後者は、悔しい事に何も理由が思いつかない。

俺たちの事はハヤトから聞いたから狙いをつけたのは想像出来る。そうでもなければ、何故この数多い人間の中で俺たちを選んだのかが理解できないからだ。

リアンを倒した際にいた人間の中から無作為で選んだとしても、行動があまりにも早すぎるからその線はないだろう。

仮にコドウが宿ここで荒事を起こそうとした場合、四対一では勝ち目がないから仲間を増やしたにしても、彼らにしてみれば唐突に現れたツキミとユキミのことがある。仲間に連絡するために一度俺たちの前から姿を消した時、キョウを先に帰らせる選択肢だってあった。

いかに自分が強いと自負していても、七対ニでは苦戦を強いられると予想くらいできる。

それでも二人で現れた理由。そこに何の意味があるんだろうか。

仮にコドウたちが本気で俺たちに[共存させるために仲間になってくれ]、と説得だけをしにきたとしてだ。

あのキョウという半人半魔は口が上手かった。あの人物がその気になって話したのなら、俺たちは見事に丸め込まれていた可能性は充分にある。

…それなら一応のつじつまは合うが、コドウは本当の本気で人と魔物・魔者たちの共存を望んでいるのか?

俺やツキミが言ったように、道のりは果てしなく遠く長い。そんな事を本当に考えているのなら、狂人的だと謗られてもおかしくはない。

……だがあの目。怒りを内包しながらも、強く硬い意志を宿したあの目は、狂人のそれと言われても納得ができる。

ならアイツは…?


「(いいや、今日はもうやめよう。結論は遅かれ早かれいずれ出る)」


あてのない核心に、けれど、俺は自信を持って言い切ることが出来た。

辺りから聞こえるのは、小さな寝息。

明日にはこの宿を恐らく立つだろう。

コドウとの一件があった以上、どれだけルフェン女王達に勧められても留まる気にはならない。むしろ、今回の事は報告した方がいいだろう。

キョウがそうかは怪しいが、少なくともコドウに俺たちと一戦を交えるつもりはなかったように思える。

なら、どこから伝えるべきか。…いや、記入すべきか。

後に待つ報告書の作成に向けて内容を練り上げていると、いつの間にか眠ってしまっていた。




ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー



陽はすっかり昇り、中天を示す頃。

俺たちは刃ノ町に足を踏み入れていた。

道中、話し合ったのはコドウ達について。

結論から言って、今はまだ危惧する段階ではないだろう、となった。

昨晩も考えた通り、コドウの行動には不思議な点が多過ぎる。

敵対する立場であるにも関わらず接近してきた事。接近したにも関わらず何もしてこなかった事。

例の、共存したい、という夢見物語を語った事。

そう言った現状を、ツキミやユキミの意見も仰ぎつつ話した結果、少なくとも今は襲ってくる気は無いだろう、と判断した。

[今後、気にかけるべきだが積極的に関わりを持つ必要はない]

それが満場一致で出た答えだ。


「さて、間も無く新しき長の住む屋敷に着くわけだけど、そのまま真っ直ぐ帰るか?」


活気の戻りつつある町中を抜け、この国に訪れた当初と同じ場所…カキフミの元屋敷が見える。

先頭の、ユキミを背負う俺の隣を歩いていたツキミが立ち止まり、俺たちに問う。


「私としては新しい長のヤヒロにあってもらったり、各町を案内したりしたいのだが」


「…いや、今回はやめておくよ。

いずれまたこっちにくることがあるだろうし、その時にでもゆっくり紹介してくれ」


そう答えると、俺の後ろを歩いていたセラが頷く。


「そうですね。

ヨウさんのお陰で報告の早急性は無くなりましたが、それでもやはり、私たちからお伝えしなければならないこともありますから」


「そうか。…確かにそうだな。

いや、引き止めるようなことを言って悪かった…

どうした、ユキ?」


はにかんで答えたツキミの頬を突くユキミ。

その顔は少しだけいやらしい笑顔だ。


「もー、寂しいなら寂しいって言えばいいのに。素直じゃないんだから、ねぇさんは」


「ば、バカ言うな!寂しくなんてあるか!」


……見ていてこっちが恥ずかしくなるくらい、露骨に取り乱すツキミ。

ここまでされるとつい、滞在していたい気持ちが出てきてしまうが、そういうわけにもいかない。


「安心してくださいツキミ様。なにも、今生の別れになるわけではありません。折を見て、必ずまた伺いますから」


「でっすね!

まさか、あーんなに怖かったツキミ様とユキミ様がこんなに楽しい方々だったなんて思いもしませんでっした!

…落ち着いたら、亡くなってしまったお二人の御墓参りにも伺いますから、その時にでもまたお話ししましょう」


フタとナリはツキミとユキミに握手を求める。

その手を固く結び和やかに笑いあっていると、ひょこりと小虎が現れる。


「なぁ、まだ屋敷まではそこそこ距離あるのに、ここでお別れの挨拶していいのか?」


小虎の一言に一瞬固まる四人。

確かに、ここから屋敷までは十分前後はかかる。あまりここでしっかりした別れを済ませると、以降が少しだけ気まずくなるだろう。


「そ、そうだな。小虎の言う通りだ」


「ほんっと、空気読めないでっすよね。小虎ちゃんは」


「はぁ?なんだよそれー」


「ほら、やめて下さい二人とも!今日くらい、喧嘩はやめましょう!」


王都へ向かう中で何度も見た四人のやりとりに懐かしさを覚える。

思えば、こっちにきてからと言うもの、切迫した日が多くて今みたいなやりとりをする余裕がなかった。

温泉宿に泊まった時でさえ、落ち着けたのは温泉に浸かった時だけだ。


「…良い仲間を持ったんだな、フタとナリは」


「そうね、ねぇさん。

本当に、子供の時とは比べ物にならないくらい楽しそう」


止めに入ったはずのセラも巻き込んで言い合いというか、じゃれ合いを始めるナリと小虎。

そんな四人を見つめながら、ツキミとユキミは小さく会話を交わした。


「そんなに羨ましいなら、俺たちと一緒に来るか?

戦力としてじゃなくて、小虎みたいに、ただの仲間として」


思わず口をついた想いを聞いた二人は少し考えると、お互いに顔を合わせてから首を横に振る。


「…いいや、やめておくよ。

町に被害は無かったが、失ったものは大きい。今ここで私たちが離れれば、この国は大変なことになるかもしれない」


「それに、ヤヒロ様の引き継ぎも完璧じゃないわ。カキフミ様と最も近かったのは、私たち四英傑と一部の人間だけ。…ヨウとかがそうね。

ただでさえ人的被害が大きかったのに、これ以上人手が減ったら終わることも終わらないわ。

ま、一日も休みをもらってた私たちが言うことじゃないかもしれないけど」


ふふ、と小さく微笑んだユキミにつられ破顔するツキミ。

彼女たちの言う通り、この国には指揮を執れる人材が必要だろう。


「わかった。

それなら、諸々が終わって手が空いたらいつでも王都に来てくれ。みんなで歓迎するよ」


「ありがとう。その時は甘えさせてもらうよ」


「それまでにおんぶをもう少し上手になっててね?まだ乗り心地に改善の余地があるから」


ユキミの言葉にツキミが笑う中、どうやら四人の方のじゃれ合いも終わったらしく、再び屋敷に向けて歩き始める。

すれ違うのは、頬や腕に絆創膏や包帯を使用した幾人かの人間

中には骨折し、松葉杖等をつく人物もいた。

そんな人々を見て思い出すのはコドウの言葉だ。

[共存する世界]

今のこの国の状況を知ったら、彼はなんて言うんだろうか。

…いや、益体のない妄想はやめよう。気休めでしかない。

今考えるべきなのは、どう報告書をまとめるか、だ。


「…ツキミって、書類書くの得意?」


「急にどうした。

…まぁ、得意かどうかで聞かれたら、不得意だけど…」


「えっ!?凄い得意そうなのに意外でっす!」


「ふふふ、こう見えてねぇさんは、案外ポンコツなんですよ?」


ツキミの意外な一面を話題に、屋敷へと向かう。

着くまでの間、ユキミに散々弄られ倒されたツキミは、グッタリとしていた。

話題のお陰なのか、みんなの足取りも軽く、予定していたよりも早く屋敷に着く。

階段を上り、入り口にある門の前に立つのは、以前見た時と同様に忍び装束に身を包んだヨウ。

彼女は、俺たちの無事の帰りを喜んだあと、驚きの一言を発する。

それは、なによりもツキミとユキミに衝撃を与えた。

フタとナリに手渡される巨大な荷物袋。

見た感じ伝わってくるのは、硬いものではなく布製の何かが大量に入っているということ。



数分後、未だ混乱の只中にあるツキミとユキミを含む俺たちは、刃ノ国に訪れた時と同様、幾何学模様の円陣の中で手を握り円を作ってあの感覚を味わった。


瞬きほど間の後、眼前に広がるのは穢れなき白璧。

大門の前に立つのは見慣れない服を着たサルナ。

間違いなく、王都に帰ってきたんだな。俺たちは。

サルナのもとへと歩き出そうとすると、不意に顔を覆いたくなるような強風が吹く。

ざわざわと草木を鳴らすその風は、何かを俺に語りかけているようだった。











To be next story.


それではまた次回。

さよーならー

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