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俺とみんなと温泉

では、どうぞ。


食堂を出て数分。

青いのれんと赤いのれんの掲げられた二つの部屋の前に到着した。


「ここが温泉よ。

わたくしたちはこっちの赤い方。ルフトたちはそっちの青い方に入って。書いてあるからわかると思うけど、男湯と女湯で分かれてるから」


「なんだァ、混浴はねぇのか」


「あってたまるか、そんなもの」


「…そうなんですか」


食堂を出てすぐに合流したみんなと二つの部屋の間に立ち、軽く別れの挨拶を済ませる。

相変わらず家訓を守りたそうなセラだが、流石に知らない男がいるところにまで無理矢理ついて来ようとはしなかった。


「私たちの方が長湯だろうから、先に出たら部屋に戻ってるといい」


「わかった」


フタに返事を返してのれんをくぐった。









視界を白いモヤが覆っている。

石畳製の床の上を水滴を鳴らしながら進む。

空間を染める温かなそれは、湯船に浸かる前の身体を程良く癒していく。


「あんまり人がいないな」


「まぁ、微妙な時間だからな。貸切みたいなもんだ」


慣れ始めた視界に映るのは二、三人の利用客。と言っても、彼らは友人同士なのか、そろそろ全員が上がりそうな雰囲気だ。

このまま他に人が来なければコドウの言うように貸切になるだろう。


「ま、その方がいいな。気が楽だ」


「違いねェ」


すっかり友人のそれになったコドウと洗い場へ向かう。


「しかし、お前本当に凄い体してるな」


「よせよ。ルフトだって凄いじゃねぇか。

特に、傷がよ」


「ん?あぁ、カッコイイだろ」


「バーカ」


木製の小さな椅子に座って適当なことを話しながら手早く身体や頭を洗っていく。

笑いながら流したせいで時々口の中に水が入りそうになったりしたが、特に問題なく全身を綺麗にすることができた。

…これだけ隙だらけでも何もしてこないってことは、やっぱり敵じゃないんだろうな。


「……悪かった」


「あん?なんだってー」


「いや、早く入ろうぜって」


聞こえてないならそれでいい。ケジメとして謝れれば、それで。

…今から、コドウを疑うことはやめよう。事ここに至っても不安が拭えてはいないが、それも小さなものだ。

コイツといる楽しさに比べれば、些事でしかない。


「お、そうだな。待たせて悪かった」


「ははっ、気にすんな」


すっかり人気のなくなった、貸切状態の温泉。

コドウと二人で、いくつかある湯船のうちの一つに向かう。








ーーーー ーーーー ーーーー ーーー


「はぁぁぁぁ…。これが、本当の温泉なんですねぇぇ……」


足の指が入った瞬間から、こうなることはわかった気がしてた。

程よい温度。全身を柔らかく包み込むお湯。

勧められるまま浸かった湯船は全身から余計な力を溶かし出していって、すっかり緊張感の抜けた声が溢れ出てしまう。

最初は前が見辛くて危ないと思ってた湯気さえ気持ちいい。


「そうだろう、そうだろう。

別に、浸かる順番があるわけじゃないけど、『どこから』と聞かれれば、ここ以外に無い」


同じ湯船に浸かるのはツキミさん。

…両肩にある大きな傷跡が、以前カキフミさんの言ってた怪我、ですね。


「…あまり、じろじろ見ないでほしい。そんなに自信はないから…」


「えっ?あ、そ、そんなことないですよ!肌は綺麗ですし、形も整ってて羨ましい、です…」


自分のと見比べて、ため息が出そうになる。

確かに大きさなら私の方が上だと思うけど、ツキミさんほどのハリの良さがないから、なんとなくだらしないもの。


「セラさんの言う通りなんですよね〜。ねぇさんって、ちっちゃいくせに形がしっかりしてるから、ついつい揉みたくなっちゃう!」


「こ、こら!やめてくれユキ!」


湯船に飛び込むようにして入ってきたユキミさんは、そのままツキミさんに背後から抱きついて両手で胸を触り始めた。


「やーだ!

だって最近、全然一緒にお風呂はいらなくて触らなかったんだもん。我慢してたんだから、ちょっとくらいいーでしょ!」


「い、いいわけないだ…あ、ちょっ!んっっ!」


「うふふ、ねぇさんってここ弱いもんね。

ほらほら〜どう?どう?」


「ばっ、ホントに、やめろ…やめて…」


湯気に当てられてた時以上に顔を紅く染めるツキミさんと、小悪魔っぽく口元を歪めるユキミさん。

このままだと、イケナイ事が起きるのは分かるのに、二人の雰囲気が妙で、止めに入れない。

ど、どうしよう。

そう思ってた時。


「ば、バカ!こ、ここここは他の人たちだって使うんだぞ!?変な声出したりするな!」


それまで身体を洗ってた小虎ちゃんが止めに来てくれた!


「…はぁーい。分かりました」


「う、うう…。ありがとう小虎」


胸元と下腹部を両手で隠すようにしているツキミさんから、唇を尖らせてユキミさんが離れていく。

今の時間帯はあんまり入ってこないみたいで他の人は少ないけど、それでも露天風呂の方にはまだ何人かいるみたいだった。

それをユキミさんが知ってるかはわからないけど離れていってくれた。

とりあえず、ツキミさんの貞操は守られた……のかな?


「……続きは、夜…」


「ひいっ!?」


ニヤリ、と振り向き様に口元を歪めたユキミさんは、フタちゃんのいるお湯へと向かっていった。


「くぅ、毎度の事ながら慣れないもの慣れないよ….」


「えっ、あれ毎度の事なのか?」


湯船に入ってきた小虎ちゃんが尋ねると、ツキミさんは困った顔をして頷く。


「初めはくすぐってくるだけだったんだけど、いつからか急にあのように揉むとも弄るとも言えない手つきになってきて…

いや、この話はやめよう。頭が痛くなってきた」


そう言って湯船に鼻頭まで浸かる。

…苦労、してるんですね…。


「あれ、そう言えばナリがいないけど、どうしたんだ?」


お湯に入りながら辺りを見渡す小虎ちゃん。

確かに、お風呂の入り口までは一緒だったのに今はどこにも見当たらない。

フタちゃんの方へ行ったのかな?


「ナリ…なら、こことは別の浴室にいる、ぞ…」


露天風呂へと繋がってる扉付近のお湯からやって来たのは、顔を真っ赤にしてついさっきのツキミさんのような格好をしたフタちゃんだ。


「…ユキ!!」


室内に響き渡る怒りの声。

多分間違いなく、ユキミさんがフタちゃんにも抱きついたんだ…。


「は、はは。ルフトの時に比べればこのくらい…」


「だいぶ辛そうだけどな」


「くっ…

嫁に行けるだろうか…」


「よし、ユキの元には私が行こう」


湯面が激しく波打つ勢いで立ち上がったツキミさんはそのままフタちゃんが浸かってたお湯の方へ向かっていった。


「…ナリは昔はここの常連でな。その時から性別をよく間違えられていたから、どっちに入っても微妙な顔をされたんだ。見かねた店主が『他の人のためにも』と言って作ってくれた[ナリの湯]があるんだ。

…まぁ、冒険者として旅に出るまでは私もその湯に入っていたんだかな」


浴槽のヘリに腰掛けて足だけを浸からせるフタちゃんは、少し照れるような顔で話した。


「…そういえばナリって男だっけ…。忘れてた」


「ははっ。私もよく忘れるよ。意図的なのかなんなのか、私より余程女らしい」


「そうでしょうか?フタちゃんも充分女性的だと思いますけど…」


「そうですよ。フタも充分女の子の身体たでしたよ?ねぇさんよりよっぽど。うふふ」


「だってさ。ユキミが言うなら、ツキミよりはそうなんだ…

!?!?」


「ゆ、ユキミさん!?」


「はーい」


突然、小虎ちゃんの背後に現れたユキミさん。あまりにも自然に会話に混ざっていたから、一瞬気がつかなかった」


「な、何故ユキミ様が…!

ツキミ様にお叱りを受けているのでは!?」


よほど凄いめに合ったのか、フタちゃんはユキミさんに気が付いた途端、私の背中に隠れた。


「何年わたくしがねぇさんの妹やってると思うんですか?逃げ方くらい、心得てます」


「ん?どうしたんだー?」


ニコニコと柔らかい微笑みを浮かべて小虎ちゃんの両肩に手をのせるユキミさん。

状況が飲み込めてない小虎ちゃんは振り向きながら首を傾げてる。


「……すごいですね、貴女。おっきい…」


「は?…ちょ!おま、なにやっ…!!」


「ふむふむ、ハリも柔らかさも段違いです…。普段サラシを巻いているからでしょうか?」


「や、やめ、やめろ!?人の胸を品評するな!!」


音が聞こえそうなくらい豪快にユキミさんは揉み始める。小虎ちゃんはそれを顔を真っ赤にしながら必死に辞めさせようとするけど、力が入らないのか、振り払うことが出来てない。

止めなきゃいけないーーそれは分かってても…


「あっ、ちょっ…やめろぉ…。オレでもそんなとこ触ったことないのに…」


「ふ、ふふ。うふふ。貴女、こんなに純情だったんですね。てっきりルフトに…。ふ、ふふ」


「な、んでオレがあんなのに…あっ!ちょ、そこは!」


目の前で広がる秘密の花園のような光景。

これを止めに入れば多分、次は私の番になる。


「せ、セラ!見てないで助けてくれ!」


…ごめん、小虎ちゃん。私はまだ触られたくない…!


「フタでも良いから!」


「ダメですよー。もっと感触をわたくしに堪能させ…あいた!?」



きっとフタちゃんも同じ気持ちなんだろう。私とほぼ同じ瞬間に顔をそらした。その時、急にユキミさんの痛がる声が聞こえる。

もしかして小虎ちゃんが怒ったのかな…

恐る恐る見ると、そこにいるのは頭頂部を抑えるユキミさんと、小虎ちゃんを守るように抱きしめて手刀を下ろしたツキミさんだった。


「おいたが過ぎるぞ。私はともかく、他の人にはやるなとあれほど言っただろ!」


「…はぁーい」


渋々頷いたユキミさんはそのまま頭までお湯の中へ入っていった。

これで、とりあえずの危機は去った…のかな?


「…セラぁ。フタぁ…!」


「あっ!ご、ごめんなさい小虎さん…!」


「わ、悪かった。だが、二度もあの感覚を覚えるのだけは…!」


「…いいよ。二人ともルフトに言ってやるんだから」


涙目で私たちを睨む小虎ちゃんは恨み言のように呟く。

ルフトさんにどうやって説明するんだろう…。

そう思っていると、ざぶん、と飛沫を立ててお湯が膨れ上がる。


「そうですよ!みんなで覗きましょう!男湯を!!」


その正体は、ついさっき潜水したユキミさんで、その口からは………え?


「「「「えええ!?!?」」」」











To be n story.


それではまた次回。

さよーならー

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