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刃心ノ国の激戦


では、どーぞー。


草原を雄叫びが満たしてから二時間が経った。

緑萌ゆる鮮やかな草原は瞬く間に赤く染まり、雄叫びは怒号と悲鳴、剣戟や術を行使する声が響く空間となる。

中でも、一際異彩を放つ戦場があった。


「闇夜照らすは怪奇の球ーー

浮かび上がる死の面相ーー!!」


精心を高め術の威力を引き上げる詠唱を唱えるのはナリ。

十数人の敵に囲まれる中、いくつもの青白い火球が浮かび上がる。大小様々なそれらはおどろおどろしく漂い、構えている魔者や魔物の目線の高さまで流れ着く。


叢原火そうげんびッ!」


ナリの言葉で火球の形は大きく変容した。

それまで、球体の頂点に炎が揺らめいでいたような形をしていた火球は瞬時に体積を増す。

ともすれば、大火球となったそれらは一息に魔者や魔物を飲み干せる大きさになる。


「焼き喰らえ!でっす!!」


大きく跳躍しながら唱えた最後の節。ナリが敵の包囲の中から脱出した瞬間、そこは炎の原と化す。

全ての戦場の中で最も悲鳴が渡るここは、しかし、刹那に終わりを迎える。


「ナリ!!

アレほど私から離れないでくれと言ったじゃないか!!」


どこからともなく現れ大挙する水にその炎は悲鳴ごと鎮火された。


「あ、フタ!どこ行ってたんでっすか!心配したんでっすよ!」


足元まで僅かに至った水の側で責め立てん勢いでナリが抗議するが、フタも負けてはない。


「こっちのセリフだ!!お前の術は強力すぎるから私がいない時は使ってはいけないとあれほど言ったじゃないか!」


ナリのもとへ敵の頭を足場に現れたフタはそのままナリの背に自身の背を重ね合わせて立つ。

その二人を、仲間の仇だ、と言わんばかりの鬼気迫る表情で取り囲む敵たち。


「全く…。

まぁいいさ、私が来たからにはさっきのように加減などしなくていいぞ」


「ホントでっすか!?じゃあ、目一杯行きまっすよ!!」


「ああ!」


その一人一人の殺意を全身に受けながらも、フタとナリは楽しげに微笑んだ。








彼方で起きた巨大な炎により起きた熱風。

熱風が冷風と変わる中、たなびく髪を抑え、手にした長杖の先端を魔者達に向けるのはセラだ。


「我、雷神の力を得ようとする者ーー」


一節を唱えると、シュトン、と向けられていた敵陣の中心地に一本のクナイが突き刺さる。


「蒼天は暗き雲に覆われ、大地は神の威光を恐れるーー」


杖先の空間がわずかに歪む。

静電気のような微かな電流は、セラの詠唱によって徐々に電圧を増していく。


「地をくす雷!!」


唱えられる最後の一節。

それは、杖先に帯電した電流を呼び笛に天から稲妻の柱を落とす言葉。

敵に向けられていた杖先を天に掲げると、詠唱によって呼び出されていた分厚い雨雲より出ずる黄金色の閃光。


「…ふぅ、久し振りに使いましたけど、ちゃんと出来てよかった…」


安堵の息をつくセラの眼前に広がるのは超高電圧と超高電流により悲鳴さえあげることの出来ない複数人の魔者・魔物達。


「さて、ルフトさんは…」


焦げた肉のこびりついたような黒々とした大地に背を向け、自分の後方で戦っているはずの男へと向き直る。

その先にいるのは…


「無理だ無理無理!!助けてくれ!!!」


太刀を背負ったまま、十数人に追いかけ回されているルフトだった。


「え…えぇ…?」


「あ、セラ!!そっち終わった!?じゃあこっちも頼む!頼む!頼みます!お願い!!」


セラの思考を混乱が覆っている事も御構い無しに切実に助けを求めるルフト。その間も、ただただひたすらに大勢の敵から円を描くように逃げ回っていた。


「わ、分かりました!

えぇっと…」


セラが長杖をルフトの少し裏、追いかけてくる敵との間に出来た空間に目掛けて二本のクナイを射出する。

それまで目前の標的のみを追いかけていたところに飛び込んできた鋭利な物に、魔者たちは即座にその場で停止する。

その瞬間を見逃さず、セラは敵の最後尾の裏に向け一つ、自身の正面の地面に向け一つのクナイをそれぞれ射出した。


電撃ウコン領域バサラ!!!」


掛け声と同時に空から降り落ちる一筋の雷。それは、計四本のクナイに向かって分裂した。

太い一本の雷から、細い四本の電流に分かたれたそれらはそれぞれのクナイを一つの点として着地し、瞬間に四つの面が生成される。それを確認したセラは即座に五つ目のクナイを、太い雷から四つに分けられている分岐点に向け射出した。


「…ふぅ。

ルフトさん!もう大丈夫ですよ!!」


そうして出来上がったのは黄金色に輝く三角形の檻。

閉じ込められた魔者・魔物たちは、雷の檻から出ようと面を叩くが、高電圧を保つそれらに触れた途端、黒焦げになっている。


「あ、ありがとう…セラ…。そろそろ、肺も限界だったんだ…」


それまで駆けていた余力でセラの側まで寄り、絶え絶えな息を整えつつお礼を口にしたルフトは、膝に手を当てたままありに閉じ込められ文字通り身動き取れずにいる敵たちを見つめると。


「よってたかって俺をいじめるからそうなるんだ!反省しろ!」


盛大な負け犬の遠吠えを口にした。

隣に立つセラは、長杖を胸に抱えながら苦笑いをこぼすが、すぐに先ほど抱いた疑問を思い出した。


「でも、どうして追いかけられてたんですか?ルフトさんなら、あのくらいの敵なら問題なく倒せそうですけど…」


尋ねると、ようやく元の呼吸に戻ったルフトは普段通りに立つとうなじに手を当てる。


「いやほら、最初に会った時にも言ったけど、俺の術はあんまり戦闘に向いてなくてさ…

スライスや老ドラゴンの時みたいに一対一ならまだどうなでもなるんだけど、複数人相手にする時って術を使用しても意味がないんだ。

全員に矛盾なく幻を見せるなんて、ほとんど不可能だから…」


「なるほど、そういう理由だったのですか」


ふむふむ、と二度三度頷いて長杖の先端を檻へと向けたセラは、「雷弾タスラム」と口にしてクナイを射出する。

静電気よりも少し強い電力を帯びたそれは狙い違わず檻を構成する面の一つに突き刺さり、対面へと突き進む。

刹那、檻の中に剣身のような雷が複数生成される。

それは実際の剣と同様の鋭利さを持つのか、僅かでも触れれば出血は免れず、感電を拒む術はない。

クナイが貫通してからの時と比例して無作為に増えていく雷の剣身は、それまで必死に避けていた敵を残らず切り裂き、焼き殺した。


「…えげつない技だな」


「…うう、ちょっと気にしてるのに…」


小さく肩を落としたセラ。しかし、深呼吸を一つしてすぐに気を戻すと、別の場所から上がる仲間の悲鳴の方へと向き直る。


「ルフトさん、行きましょう!!」


「わかった!」


頷きあった二人は、互いに周囲に気を配りながら全速力で向かっていった。










To be next story.



それではまた次回。さよーならー

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