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俺と朝と唐突と

なんか、珍しくちゃんと投稿してる。


…今後もこうなるように努めます。


ではどうぞ。


「何故戻ってきたんだ?」


いくつものロウソクに照らされた空間。けれどその光に温かな生命は感じられず。岩石で作成された卓子を取り囲むは人ならざる者たち。けれどその身は真に異形であるわけでなく。ただその性質のみが人とはかけ離れていた。

ーーー故に魔者。

人と変わらぬ姿で人外の力を有する彼らのような生物を遥か昔に生きた者たちはそう呼んだ。


「見てたんならわかるだろ。あの通りだ」


どこかの洞窟に作られているのだろうか。卓子へと向かう半裸の男の足音は、軽くも不気味に響く。


「あーはいはい。要は気まぐれね。全くしょうのないバケモンだこと」


呆れているのか影に照らされた男は頬杖を突いてため息を吐く。まるでいつものことのようだと。

その男のもとへ半裸の男ーーーハヤトは足早に近寄り、胸ぐらを掴み上げる。


「いい加減その見透かした態度やめろ。殺したくなる」


「そりゃあ無理だ。実際見透かしてるしな。裏切者さん」


「てめッ!!」


一触即発。微風でさえ触れれば爆発するような緊張感の中、ハヤトが来た方向とは逆側から足早な音が近づいてくる。

そうして響く大声量は、反響の激しい洞窟の中とはいえとても尋常と言えるものではなかった。


「やめろっての!!!何回言えばわかんだバカタレが!!!」


「「おめーもな!!」」


「うるせー!!!」


室内が割れんばかりの大反響。ただの人間であれば、後から訪れた巨大な男の第一声で鼓膜が破れたことだろう。


「…もういい。けど、次はねぇからな亀野郎」


「何度目かの忠告ありがとう。痛み入るよ」


「だからやめろって!!」


「「おめーもな!!」」


「だぁー!もう喚くな!」


日の光の届かないどこかの洞窟。その中で響く、彼らの本当の強さはまだ誰も知らない。



ーーーー ---- ---- ーーーー ---


太陽は沈み、城下町に明かりが灯る時刻。それでもなお喧騒は止むことはなく、家の中にいるはずの俺たちの耳にまで届く。それは、あまりにも陰鬱とした沈黙がもたらしているのだろう。

言葉を発する人はいない。みんなサルナが手にした革袋を見つめているだけだ。


「…それでは私はルフェン女王様のもとに戻ります。

これ以上これを見せても得られるものはないでしょうから」


静かに。ただただ静かにそう言うと、サルナはこの家を後にする。

残されたのは、いつものみんなだけで。俺とセラを含めた全員が既に食事を済ませていて。

あとはもう、眠るしかなかった。

淡い希望は砕けた時、何物にも代えがたい苦痛になる。

それが今回の任務で得られた報酬。

あまりにも酷な現実だった。



ーーーー ---- ---- ---- ---


「只今戻りました。ルフェン女王様」


「ふむ。遅かった…いえ、遅かったですね。サルナさん」


喧騒はなく、僅かな雑音も響かない厳粛な空間。存在するのは近衛兵が一人サルナ・パワーとその主人ルフェン女王。

外に蔓延する夜の闇などまるで嘘のように煌びやかに格式高く広がる光の中で粛々と報告は始まる。


「お気遣い痛み入ります。しかし、ルフェン女王様。この場に見えるのは私たちだけですが決して油断なさらぬよう。

以前もお伝え致しました通り、ルフェン女王様の座を狙う不届きな輩は多くいます」


厳しくも主人愛に溢れた言葉にルフェン女王は頷いた。

瞬間、謁見の間の空気が張り詰める。今ここにあるのは和やかで親しみやすいルフェンでは無く、張り詰める死への恐怖と極度の緊張、呼吸すら許可がいるのではないかと錯覚するだけだ重圧。


「…私如きの意見を取り入れていただき有り難く存じます。

…こちらが、今回の休暇で得たものです」


「ラルの皮袋、か。ふふっ。見間違いであってほしいものだがな…。それはなかろう」


「お渡しに向かってもよろしいですか?」


「構わん。上がってくるといい」


言葉に頷き、歩き出すサルナ。二人の間にある階段を登り、手にしていたもう一人の近衛兵を手渡す。


「…間違いなくラルの物だ。あやつは、最後まで命を全うしたのだな」


「私もそう思います。

これが落ちていた場所。例の地の付近ですが、辺りには戦闘をした痕跡がありました。剣身の刺さったと思われる跡もありましたので、過程はわかりませんが[迅の剣]やそれに類するものを使ったのかと」


「そうか。

であれば、我々も気を引き締めねばならぬな。対峙したであろう斥候兵でさえラルと同等以上の力を持つ敵。

…私が出る必要さえあるやもしれんな」


「そうならぬよう尽力するのが私の役目です。どうかご安心を」


「当然だ。

サルナの口癖ですもんね。『王がいるからくにがあるんじゃない。民がいるから王があるんだ』」


途端に霧散する恐怖と緊張。

最早心配無用と言わんばかりに以前通りの威厳と圧力を自在に操れるようになったルフェンは、友人に向けるような邪気のない微笑みでサルナを捉えた。


「ちょ、ルフェンさん!さっき言ったこと覚えてます!?」


「大丈夫。謁見の間に通じる扉にはしっかり見張りはいますし、ここを監視・盗聴、その他諸々の工作を阻害する手立てもきちんと立てていますから」


「だとしても、お戯れが過ぎます」


「だって、お好きでしょう?こういうイタズラっぽいのは」


優しく微笑みサルナを見つめるルフェン。

亡骸の見つからないラルのためを思ってか、それとも、悲しげに声を沈ませるサルナのためなのか。その二人がかつてから愛していた行いを模倣する。


「…勿体ない、お言葉です…」


「友達を失ったんです。我慢する必要はないですよ」


サルナの頭に両手を回し、胸元まで温かに抱き寄せるルフェン。

その胸の中、サルナは何を思い涙を流すのだろう。

寂しくも暖かい光が照らす中。他者に決して見せることのなかった一人の少女の寂しげな鎮魂歌が悲しく沁みていった。



ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー



翌朝。久しぶりに横になったベッドはとても快適なものだった。

身体のどこにも異常は起きず、寝覚めの悪さは皆無。

あるのは、ラルを失ったという喪失感のみ。

言ってしまえば別段深い関係ではなかった。様々な偶然が重なり同じ時間を共にしたのがたまたま多かっただけで彼とは友人ですらなかった。

それでも。

それでもやはり、ラルを失ったということは俺の中で大きく爪痕を残しているようで。

爽やかな朝の香りは、とても吸いたくは無かった。


「…そうだ、小虎」


サルナたちと旅立つ前にした会話のことを思い出す。

ハヤトとの戦闘があったりで忘れていたが、本来なら昨日の夜、真っ先に言葉を交わさなければならなかった相手だ。


「なにやってんだ俺は」


掛け布団を引っぺがして急いで部屋を出る。廊下に出て階段を下り、この家の中心部に当たる茶の間を通り過ぎて奥にある小虎の部屋に通じる扉の前に立つ。


「…どんな話すればいいんだ?」


ノックをする瞬間、そんな言葉が口を吐いた。

結局のところ俺は小虎が望むものを何一つ手に入れることができなかった。ラルを生きて連れてくることはもちろん、生きているかもしれない、という確信がない情報すらだ。

そんな役立たずの俺が、一体アイツにどんな言葉をかけてやれるんだ?


「…誰かいんのか?」


それでも、代償はついてくる。

人一人の希望を背負った罪は重いのだと。


「あ、ああ。俺だ。入ってもいいか?」


いいや。何を話すべきかを決めるのは俺じゃない。

小虎が聞いてきたことにこたえるのが俺なんだ。


「いいぞ。まぁ、ちょっと散らかってるけどな」


返ってきた返事は何の変哲もない普通の声。

取っ手に手をかけ、扉を開く。

その中にいたのは、見たこともない服装をした小虎と、おかしな部屋模様だった。











「それじゃあ占うぞ」


「お、おう」


部屋に通されてから数分。いわゆる占いの館と化していた小虎の部屋。室内には日の光が届かぬよう窓に黒くて厚手の布をかぶせ、明かりは薄暗く灯されている。

座らされたのは部屋の中心あたりに配置された、薄桃色の布がかぶらされた二人用の小さな机と、その上に置かれたこれ見よがしなガラスの球体。

対面するのは、占い師然とした格好の小虎。丁寧なことに口元を覆う透けるほど薄い布までしている。


「あの、これはどういうことなんでしょ。小虎さん??」


頭の整理が追い付かない俺をよそに、ぶつぶつとなにか呪文を唱えながらガラス玉に両手をかざす。

すると、目を疑うことにガラス玉の中に映像が浮かび上がってきた。屈折のせいか中心から外れるほど歪んでいくが、逆に中心にいくほど明確で細部までしっかりと確認することができる。


「…ん?これ俺か?でも、こんなことした覚えないんだけど…」


映し出されたのは城下町…?を誰かと歩く俺の姿。場所はこの家からそれほど遠くない食事処・ヴィルヘルム。

記憶が正しければ、面白い名前のところだから行きたいと思ったことがあるだけで実際に行ったことはないはずだ。


「…ふう。ま、二度目にしたら上出来か」


小虎が言葉を発するや否や途端に映像が掻き消え、元の透明なガラス球に戻ってしまった。


「な、なにしたんだ?」


「何って、術だよ。お前らだってするだろ?応用くらい」


「応用…?」


「そ。オレは今まであんまり真面目に考えたことなかったけど、やろうと思えば割と簡単なんだな」


ガラス球を手に取り、指先で器用に回転させる小虎。

応用って…まるっきりやってることが違うと思うんだけど…。


「さては信じてないな?

仕組みは…よく分かんないけど、多分アレだ。見る場所を頭の中から透明な物の中に変えただけで原理的?には変わんないんだろ」


ガラス球を回転させたまま悩ましげな顔をして説明されても、やってる本人がよく分かってないのなら見てる側がわかるはずもない。

小虎のこういう天才肌なところというか、強運を持っているところというか、ちょっと羨ましいと思ってしまう。


「そんなもんなのか。よくわからないけど、納得した」


「おう。

でだ、問題は今占ったことなんだけどさ」


どこか言い辛そうに口を開く小虎。

俺がヴィルヘルム周辺に出掛けているだけの映像だったけど、何か問題があるのだろうか。


「その…誰かと今日出かける予定組んでたのか?」


やはり言い辛そうに言葉を繋ぎ、占いの真偽を問われる。確かに、あの辺に出かける予定が既にあればまず間違いなくこの占いは的中したことになるのだし、気になるのは当然か。

けど。


「いや、出かける予定はないかな。だからもし今日この占い的なことが起きるとしたら、誰かに誘われないとあり得ないと思う」


三泊四日という旅にしては短い日数ではあるものの、そこそこの戦闘をしてきた後だからか身体の疲労は未だ抜け切ってるとは言えず今日一日はゆっくりしていたいというのが本音だ。

例えルフェン女王から何か任務が来たとしても、『私とデートしてほしい』や『この人物を落とせ』などといったトンチンカンなものが来るとは到底思えない。

つまり、今ここで小虎に誘われたりだとか。フタやナリ、セラ…可能性があるとすればサルナ、辺りに誘われない限り出かける事はないだろう。


「ま、まぁそうだよな。昨日帰ってきて今日お出かけなんてのは割と大変だし」


なんと言うか、煮え切らない感情のまま笑う小虎の表情に思わず首を傾げた時だ。


〈そんなことはなかろうて〉


扉を叩く音もせず蝶番の擦れる音が俺たちに届く。

驚いてそっちを見てみれば、翡翠を手にした強面の男が一人立っていて。


「なんで俺が届けに来なきゃなんねぇんだか」


苛立ちを隠すつもりもなく。その男、近衛兵が一人・リグは謁見の間で見た時同様、ほぼ半裸の状態で全身の筋肉を見せびらかしながらも、右腕のみを長袖の袖部分だけで覆う格好をしている。

普通の人がすれば面白すぎる姿だが、この男がこの格好をすると妙に似合うから不思議だ。


〈そう言うな筋肉オバケ。たったこれだけの仕事で休暇が一日増えるのだ、安いものだろう〉


「休みが増えたところでやることなんざ変わらねぇんですよ、こっちは」


〈ははっ、それもそうだな。寝ても覚めても鍛錬するだけだとラグから聞いておるよ〉


「ならなんでわざわざ言ったんすかね」


心底呆れ果てた顔をして額に手を当てるリグ。その姿が見えているはずもないのに、翡翠の声の主・ネフェンは家に響き渡るような大声で高らかに笑う。


「からかうのが趣味じゃからな」


そう言ってまた笑い出し…た?

妙な違和感が頭に張り付く。


「今、扉の裏から聞こえなかったか?」


どうやら同じ疑問を持ったようで小虎もそんな言葉を投げる。

とは言え、流石にそれはないだろう。世捨て人に近い生活を好んでしているネフェンのことだ。きっと翡翠の通信技術?が上がったとかでその試しに俺たちをからかいに来た、とかそんな事情だろう。


「愚鈍が。あれ以上翡翠の能力が上がるわけなかろう」


「痛ッ!

なにも蹴るこたないでしょ!」


入り口で立ったままだったリグが突如後ろに反りながら部屋へと入ってくる。

その後を奪うようにして入り口に仁王立ちするのは…


「いつまでも突っ立っておるな。馬鹿者が」


「ネフェン!?」


師匠こと我が愛しの悪魔・ネフェンだった。







To be next story.


私のお気に入りネフェンの再登場!

次回、一体どんなハプニングが起きるのか、乞うご期待。

(ハードルを上げていくスタイル)


それではまた次回。

さよーならー

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