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俺とサルナと細やかな帰還と

お久しぶりです。

GWはどうお過ごしでしたか?え、そもそもない?

…あなた方には心から感謝を。

振り返え休日のある方はその日に目一杯休んでくれよな〜頼むよ〜。


ではでは、ほんへ、どうぞ。


報せは翌日の昼に届けられた。

最短じゃない。昨日部隊として加えられたばかりの俺たちの事はまだ場内に知れ渡っている訳がなく、本来なら早朝早くに知るはずだった情報を、昼食の最中に受け取った。

食事中に聞くにはあまりに不適切な内容は、小虎を始めとする全員が、口にしようとしていた料理を受け皿に戻してしまった。


[腐敗の停止した右腕]


手紙とともに届けられた包みの中に入っていたものだったらしい。

伝えに来た人物はサルナ。

目元が薄っすらと赤く擦れていた彼女は、ラルの訃報と共に願いを告げる。


『ラルの死を事実かどうか共に確かめて欲しいのです』


強制力のない私的な依頼に、けれど俺たちは二つ返事で答えた。



ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー


「すみません。手伝っていただいて」


裏道から城下町を出て約一時間半。気不味い沈黙を保ったまま息一つ乱さずただひたすらに先頭を歩いていたサルナがようやく口を開いた。

後方に続くのは俺とセラの二人だけ。

他の三人…いや、四人は支給された家と、城に残している。

理由は簡単。大勢で動けば敵に気取られるから、だそうだ。


「いえ、そんな事ないです。私達も信じられないですから」


「…そうですか。同じ気持ちの方がいてくれてとても嬉しい。

あぁそれと、敬語は使わなくて結構ですよ。役職は違えど持っている権利は同じなのですから」


そう話す彼女はとてもさっきまでの張り詰めていた人物と同じとは思えない程に柔らかな雰囲気を放っている。


「だったら、サルナも俺たちに敬語を使わなくていいんじゃないか?」


「私のは…その、性分ですから気にしないでいいですよ。目上だろうと目下だろうと関係ありませんから。

その点、ラルはケジメをつけるためにルフェン女王様以外は呼び捨てだったんですけどね。

けれど、それが私の良いところだと」


微笑んで答えるサルナに俺とセラは顔を見合わせて、やはり同じように笑った。


「そうなんですね。

でしたら、私のことも心配なさらないでください。クセですから」


「そう。

確かにラルの話じゃ、ルフェン女王様の術を受けた時も殆ど丁寧な言葉だったらしいものね」


楽しそうに話すサルナに対してセラは顔を赤くする。


「あ、あれは、その…うぅ…今思い出しても恥ずかしいです…あんなに取り乱すなんて…」


「そんなことないですよ。

…えぇまぁ、その場に私が居合わせていればきっと戦闘になったでしょうけど…それでもやっぱり、友人のために怒れるのは素晴らしいことです。

…と、どうやら一つ目の印のところに着いたみたいです。

少しお待ちを」


気付けば、舗装された道から砂利道に変わっている。

立ち止まり、サルナの視線の先にあるのは斜線の刻まれた枯れ木。それに近付いて報告の通りの木なのかを確認しに向かっていった。


「…相変わらずだこと」


斜線を指先でなぞり、何か呟くと踵を返して「先へ進みましょう」と告げられる。


「一つ目の印はアレで間違いありませんでした。

さて、次の印まで後六時間ほど歩きますが、お二人は大丈夫ですか?」


空を見上げながらの提案。俺とセラは誘われるように空を見上げた。


「…まだ大丈夫だろ。もう二時間もしたら、野宿出来そうな場所を探せば夜には間に合うはず」


「ですね。もう少し進みましょう」


「確かに。どうやら提案する機会を間違えたみたいです。

では、行きましょうか」


顎に手を当てて首を傾げたサルナは再び歩き始めた。











「あ、あの…サルナさん?もうそろそろ野宿出来る場所を探した方が良いと思うのですが…」


沈黙は控えめな表現で破られる。

一つめの目印を見つけてからおよそ三時間半。空にはもう太陽は無く、彼方には月が頭を見せている。


「む。もうそんな時間でしたか。では、あそこに見える大きい岩の陰で休みましょうか」


立ち止まり、こともなげに岩を指差して再び歩き出すサルナ。

…何か変だ。


「(…なんだかおかしくありませんか?)」


隣を歩くセラも同じことを考えていたらしい。


「(あぁ。そんなに長く一緒にいたわけじゃないけど、多分、らしくない)」


「(私もそう思います)」


とは言ったものの、それを確かめる方法は無い。

しっかりしているように見えて実は抜けているとか、案外テキトーな人だとか、過ごした時間が少なすぎて判断するのは難しい。


「(…って、セラ?

………久しぶりに見たなぁ)」


どうするべきかを相談しようとした相手は既に声が届かない。

初めて会った時のように、考え事に没頭していた。


「(しょうがない)」


兎にも角にもそこ止まるわけにはいかないので、とりあえずセラを背負ってサルナの後を追った。










「…こうして焚き火を囲むのは久しぶりです」


「昔はよく旅…と言うか、遠征…?してたのか」


三人を照らすのは音を散らしながら赤く燃える炎。

寒くも無く暑くも無い気温の時の焚き火ほど心の休むものは無く、同時に、余計な感傷に耽ってしまうもの。


「いえ、旅も遠征も数える程しかしたことは無いです。しかもほとんどがルフェン女王様と一緒でしたので、野宿と言うにはあまりに贅沢な設備でした。

しかし、それでも少しだけ経験はあります」


「…ラルと?」


「…よく分かりましたね。

そう、ラルと。あの人とは二度焚き火を囲んだことがあります。

一度目は彼の部隊が人手不足だったために私が共に偵察に行き。二度目は…忘れました」


「仲、よかったんだな」


「えぇ、多分」


…会話はそれっきり無かった。

聞こえるのは薪の中の水分が破裂する音と、時折悩ましげに唸るセラの声。

幸いにも平らな岩に、背中を預けてサルナは眠り、見張り番として陽が昇る頃まで俺は起きていて、一度目の焚き火が消え掛ける頃にはセラも考え疲れて眠っていた。



ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー


「これが、二つ目」


草原に佇む一本の巨大な木。そこに刻まれる家の屋根のような痕。

朝早くに岩陰から出発した俺たちは昨日予定していた時間よりも早く二つ目の目印のところに着いていた。

しかし。


「…変ですね」


ぼそりと呟くサルナ。


「変、とは?」


聞き返すと、遮る物のない草原をザッと見回してから口を開いた。


「…あまりに順調に進んでしまっているので少しだけ不安なんです。

お二人はどう思いますか?」


その質問に一瞬戸惑う。


「…言われれば気になる、でも、案外こんなものなのかなと思ってみたりしてる…かな」


そう答えると、サルナはセラの方に向き直り。


「いつまで考えてるんですか!?」


突然大声を出してセラの両肩を掴み前後に激しく揺さぶった。

…は?


「ちょ、ちょっと!何やってんだよサルナ!!」


「っは!ご、ごめんなさい。つ、つい」


すぐに羽交い締めにしてサルナを拘束し、セラから数歩遠ざかる。


「その…役職柄と言いますか、あんまりにも考えがまとまらない人を見るとイライラしてしまって…」


ニ、三度呼吸を大きくすると、「もう大丈夫です。離してください」と言われ、恐る恐る羽交い締めを解いた。


「昨晩くらいからずっとあの調子ですけど、大丈夫なんですか?セラさん」


そんな最もな疑問でようやく思い出した。


「そういえば言ってなかったっけか。

セラは基本的にはおとなしくて優しいんだけど、一度気になったことがあると納得いくまで考え込んじゃう時と、怒らせた時だけは別人になるんだ」


「…なるほど。

と言うことは、今の今までずっと考え事を?」


「まぁ、そうなるな」


「ちょっと普通じゃないですけど…分かりました。セラさんの意見はまた今度に伺いましょう」


悩ましげな顔で深く息を吐くと、サルナは三つ目の目印があるところに向けて歩き出した。

その後を、セラを背負った俺が付いていくのだが…

いい加減おんぶだって疲れるんだぞ、と愚痴を吐きそうになった。











「….ここから先は、慎重にいきましょう」


僅かに白む息を吐き、左腕で後続にいる俺たちの動きを制するサルナ。

空には既に無数の光が散りばめられている。

周りには朽ちた木や枯れた草が寂しげに佇む。

その中でも一際大きく、人一人分くらいなら隠れられそうな枯れ木に三人で身を寄せている。


「(ここより先には遮蔽物になりそうなものは一切無くなります。なので、ここで交代しながら見張りを立てて朝になるのを待ちましょう)」


緊張感の含まれた言葉に俺たちは喉を鳴らす。


「(分かりました。では、最初の見張りは私がやりますので、お二人は眠って下さい)」


そうして最初に見張りを買って出たのはセラだった。


「(…そうですね。頼みました)」


そう言ってすぐに眠りについたサルナ。

出来ることなら俺もそれに倣いたかったが、そういうわけには行かず。


「(ようやく納得いったんだな)」


「(はい。ご迷惑をおかけしました…)」


「(全くだよ。それで、どうしてだと思ったんだ?)」


半日以上おぶることになった少女に、その成果を聞かずにはいられなかった。


「(…それは、ですね)」


枯れ木の陰から見張る目を怠らずに口を開くセラ。

雰囲気も相まって、またも喉を鳴らしてしまう。


「(…多分、サルナさんはラルさんのことが好きだったんです)」


「(…マジでか)」


爆弾発言の結果、俺は眠気を吹き飛ばされた。















「(…なるほど。あの過剰なまでの暴力にはそんな意味が…)」


月が空の真ん中に位置した頃、セラの考えを全て聞き終えた俺は、唖然としていた。


「(推測ですから断言は出来ませんけど、でも、多分そうです。

以前お母さんから聞いたことが本当なら、ですけど)」


「(好きな子には思わず乱暴をしてしまう、ねぇ…

まぁ、何と無くはわかるけどさ)」


セラの母曰く。

『嬉しさと恥ずかしさで混乱して咄嗟に手が出てしまうことが良くある』また『気を引きたくて乱暴をしてしまう』

らしいのだ。

その行為は特に男の子が多く、スカートの裾をめくってパンツを見たりする行動なども当てはまるらしい。


「(他にも考えられることもいくつかありましたが、その中でも特に可能性が高かったので、恐らくは)」


「(そうか。わかった)」


頷き、周囲を一瞥する。

比較的暗闇に慣れた目で見えるのは、やはり草らしき影と木。

殺風景に過ぎる景色でも今は心強い。

今はただ、無事に朝を迎えることのみが重要だ。


「(それじゃあ引き続き見張り頼む。

眠くなったら俺と交代しよう)」


「(分かりました。おやすみなさい)」


「(あぁ、おやすみ)」


明かりのない暗闇の中。

いつもなら交代時間の目安にするたき火を焚くことは無い。

ここはラルが消息を絶った場所から程近い場所。

だからこそ、目印になりやすい火をおこすことはできなかった。

…隣ではサルナが険しい表情で小さな寝息を立てている。

嫌な夢を見ているのか、それとも明日起きる事態を心に据えているからなのか。

無事に朝を迎えられたら聞くことにしよう。








To be next story.


後書きには特に書くことない…

次回をお楽しみに!

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