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俺と師匠と約束と

いやぁ、長かった…

ここまで長かった…

何が長かった?

それは読んでからのお楽しみという事で!


では、お楽しみ下さい。

「起きましたか?ルフトさん」


「あぁ、うん。やっぱりベッドはいいな。すっかり疲れが取れたよ」


寝る前とは比べ物にならない程軽くなった身体を起こす。


気持ち悪いくらいに滑らかな動きだ。


「それで、王都の様子はどうだった?」


「みなさん、本当に明るく元気で気持ちのいい方ばかりでした…」


含みのある言い方のセラ。

どうやら嫌な予感は当たったらしい。


「でも?」


「異様なまでに活発でした。まるで、何かから目を背けるように」


セラは、悲しいような苦しいような表情でそう話す。


「何というか、えぇと…

調べてきた場所、所謂商店街のようなところではどの方も『女王様』とは言っても『王様』とは言わなかったのです。

誰一人として」


ーーー違和感の核心部と思われる出来事。


それを聞いた事で俺はあることに気が付いた。


「もしかして、王都についたばかりの時にラルの言っていた言葉が関係あるのか?」


「恐らくは…」


門をくぐってすぐに、大仰に語り始めたラルの言っていた言葉。

二度繰り返された『事実上一人』という単語。

これはセラの耳には入らなかった『王様』と関連していると見て間違いはないだろう。


「ルフトさんはどう思いますか?」


「どうって?」


「本当にお一人でこれだけの大きな都市を纏め上げ、更に貿易までこなせる…

そう思えますか?」


「無理、だろうな。けど、ラルのあの口ぶりからすると…」


「可能、となるんですよね…」


そう言って頭を悩ませ始めるセラ。

数分の沈黙の後、再び口を開いた。


「…明日、女王・ルフェン様に謁見してみませんか?」


《それが良いじゃろう》


「いやでも、会ってくれるか?一刻の女王が、何でもない冒険者に」


《馬鹿者。そのための翡翠じゃろうて》


「あ、確かにそうだな…って、何でセラが宝石のこと知ってるんだ?」


「へ?私は何も喋っていませんが…」


そこで気づく。

自分のポケットから声が出ていた事に。


《わしだ。ネフェンじゃ》


「「うえええ!?」」


急いでポケットを漁り、中から深緑の宝石ーーー翡翠を取り出した。


《気づくのが遅いぞ。何と不甲斐ない弟子であるか…。師は悲しいぞ》


今にも笑い出さんばかりの声が宝石を振動して伝わる。


「え、あ、なんで!?」


余りの超次元的現実に頭が全くついていかない。

それはセラも同じようで。


「ふぇ…へ…?」


理解不能な事実を考え続けた結果、ボシュンと音を立てて頭から煙を出して壊れた。…ように見えた。


《まぁそう気にするでない。端的に言えばこれもわしの術の賜物じゃて》


「ネフェンさんはそんなことまで出来るのですか!?」


突如として復活したセラの激流の如き勢いに若干たじろぐ雰囲気をみせるネフェン。


《そ、そうじゃ。

おぬしらがわしの家を立つ時、二人にだけ術をかけたのだ。『対象者が二人きりでルフェンの話をした時、わしとの遠隔会話を開始する』とな。これの効力は、発動から約23時間。明日の夕暮れ時まではつじゃろう》


「そうか、て事はつまり」


《そこには流石に気がついたかどれ、言ってみろ》


「え、え、何がなんですか?」


慌てふためくセラを他所に、俺は語気を強めた。


「ねぇさんの介入があれば女王に会える!」


《おねぇさまだと何度言えばわかるのじゃか!》


「どういう事なのか説明してくださーい!」


喜ぶ俺、怒るネフェン、叫ぶセラ。

この混沌とした夜をどう乗り切るかが、明日の一大事を前に与えられた試練だった。









「ふぁ…」


「どうしたんだよセラ、珍しく欠伸あくびなんかして」


「いえ…。

ルフトさんと朝まで一緒にいただけですので….ふぁ…大丈夫です」


「はぁ!?」


「お、おいセラ!誤解を招く言い方するな!」


「おい、どういう事だルフト…!」


「まて!早まるな小虎!」


混沌とした昨晩をどうにか乗り切り、空が赤らみ出した頃にセラはそのまま俺の部屋で寝てしまった。

間違いなく面倒になると思った俺は、他のみんなに気づかれないよう静かにセラの部屋に彼女を運んだのだが…


「ほぅ?私の時といい、ルフト君は随分と大胆なのだな。

いいだろう、その腐った性根を叩き直してやる。今夜は私の部屋に来るといい」


「だから、違うって!」


パキパキと拳を鳴らすフタ。

彼女から発せられる殺気は尋常ではない。


「まーよくわかんないでっすけど、要するに二人はカップルって感じでっすかー?」


「だーかーら!そういういかがわしいのじゃ!…って、なんだ?その、かっぷるってのは」


「知らないんでっすか〜?『カップル』というのはでっすね、要約するに恋人って事でっすよー」


「へぇ…そうなのか…って!だからそういうのじゃないから!!」


などと言い合いを続けながら歩く事十数分。


「はぇ〜おっきいなぁ…」


小虎に習い、空を見上げる俺たち。


「これが宮殿か…」


この王都を囲う白亜の壁。それと同等かそれ以上の高さを誇るネルフェンの王宮か。


「やっぱり、近くで見るのと遠くで見るのとだと全然違いまっすねぇ…」


「全くだ。あの頂上から見渡す景色はさぞ良いものだろうな」


「おっとみなさん、それ以上の賛美はお控え下さいませ。他の来訪者の御迷惑に当たりますからね」


どこからともなく現れてきたのは、限りなく白に近い青…青白磁色の鎧に身を包んだラルだった。


「それとフタさん。

滅多なことを言うものではありませんよ?」


「滅多な?」


「はい。知らなかったが故、此度は不問としますが…

貴女が先程仰られた場所には、あなた方に褒美を授けてくださるお方がおわすのです。

フタさんのあの言い方ですと、『王都を乗っ取るつもりでいる』と解釈されても文句は言えませんからね?」


優しい口調で、しかし腰に携えた剣はいつでも引き抜けるように手を当てている。


「うっ…す、すまない。今後は気をつける」


「そうして下さい」


フタの言葉を聞いたラルは静かに剣の柄から手を離すと、昨日のように笑顔を作って話を始める。


「それでは皆さま、褒美の置かれている部屋まで行きましょうか」


「あ、なぁラル。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」


「なんでしょう?」


僅かにトゲのある返事。

まるで俺がこれから何を聞こうとしているのかを見透かされたような気分だ。


「もし、女王様に合わせ…謁見させて欲しいと言ったらどうなる?」


「これはまた…随分と大きく出ましたね」


ただの一言。

ただの一言だけで俺の身体は自由を失う。

もしも今、下手な動きをすればそれは死へと直結するだろう。

そう理解するには十分な殺意を向けられている。


「…そうですね、何か手土産の1つでもあればどちらの面目も保てるのですが…」


「それなら!これで、どうだ…?」


すかさずポケットから翡翠を取り出してラルに見せる。


「随分と綺麗な石ですね…なんと言う名ですか?」


「ひ、翡翠」


「翡翠…良い響きです。

幸いにもルフェン女王様はこのように綺麗な石…宝石と言うらしいのですが、それらを集めるのが唯一の楽しみだと仰っていました。

ですので、これならば拝謁する事も可能かもしれませんよ」


ラルの微笑みと共に体の硬直が解ける。

どうやら許されたらしい。


「それでは少々お待ちを」


そう言って足早に去った。


「…おい、ルフト」


「な、な、な」


「何をしてるんでっすかー!!!」


予期していたと現実。

ぶっちゃけた話、ルフェン女王に会うつもりだとはこの三人には言っていなかった。

と言うか、言う暇がなかったのだが…


「バカじゃないのか君は!?

さっきの私に向けられた殺気を見た上でよくあんな無謀が出来るな!?」


「ダジャレか?結構面白いぞ」


「ぶっ殺す!」


「ちょ、ラフくん!フタを煽るのはやめてくだっさい!

怒りすぎて臨戦態勢に入っちゃったじゃないでっすか!」


今にも暴れだしそうなフタを羽交い締めで止めるナリ。


「はて、臨戦態勢とは?


「フタは怒りすぎたり、仲間が物凄く傷つけられたりすると乱暴な言葉遣いの狂戦士になるんでっすよ!」


「あぁ!だからあの時は今じゃ考えられないようなことを言ってたのか!ようやく合点がいった」


「納得してる場合でっすか!?」


「ナリ!諦めに入ったルフトには何を言ってもダメだ、殴るしかない!

早くフタをあいつにぶつけてやれ!」


などと意味不明な言葉を羅列する小虎。

ちなみに小虎は俺に頭を抑えられ、両腕をぐるぐると回している。


「くっ!わかりましっした…!

行け、フタ!ルフ君を叩きのめすんでっす!」


「ウガーー!」


「ちょ、ま、まて!」


ナリが羽交い締めを解いた途端に飛び上がり、俺に襲いかかろうとするフタ。


「う、うわーーー!…なんてな!」


俺の顔にフタの拳がぶつかる瞬間。

すかさず身体を捻り、直撃を避ける。

完璧な回避行為だ。

ったのだが…


「なんだよ…結構当たるじゃねぇか…」


避け切ったはずの拳を喰らった俺は、口の中を軽く切っていた。


「だが、これで終わりだッ!」


振り向くフタの視線に俺の目線をぶつける。


「ぐっ!…うふ…」


唸るような低い声を上げたと思えば、次の瞬間、悦びとも取れる声を上げて倒れるフタ。


「そ、そんな…自分が倒れるか相手が倒れるまで戦い続けるはずの…フタの狂戦士モードが…」


「もぉどとはなんですか?」


「ようは変身でっす」


「なるほど〜」


「ってそんな事よりも、どうしてフタは止まったんでっすか?」


「ん?ああ、それはだな」


理由を説明しようとした時、カチャカチャと金属同士の擦れる音が耳を刺した。


「…何をしているんです、あなた方は…。せっかく、女王様の謁見が許されたと言うのに」


そう言いながら、どこか悦びに浸っているような表情のフタを背負うラル。


「本当に許可が降りたんですか!?」


「そうですね。

なので早い所、女王の間へと向かいましょう。翡翠を渡してからの女王様の様子がおかしいのです。

さぁ、気が変わってしまわれる前に」


言い終わるや否や、素早い足取りで歩き出すラル。

歩く、というよりも走っている姿に近い。


「お、追いかけるでっす!」


ナリの言葉を合図に、俺たちも走りだした。








To be next story.

そう、答えは!

『女王様との謁見』です!

やっとここまで漕ぎ着けましたよ!

さて、という事で次回は女王様とルフト達とのお話となります!


それでは次の更新でお会いしましょう!

さようなら。

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