二十四話 夕焼けラムネ
夕暮れ壊れかけた公園。
古いブランコ。
蝉の鳴き声。
ルーチェはまた公園のブランコに座っていた。
膝を抱えながら。
お兄ちゃんが帰ってこなくなって。
もう数日。
でも。
待ってしまう。
この公園へ来れば。
また突然。
「ルーチェ」って呼びながら現れる気がした。
風が吹く。
錆びたブランコが揺れる。
ルーチェは目を閉じた。
すると。
また昔の夏が蘇る。
まだ子供だった頃。
グロウ『早くしろー!』
ルーチェ『待ってよぉ!』
夕焼けの公園を走る。
お兄ちゃんの後ろ姿。
汗だくのシャツ。
無邪気な笑い声。
あの頃。
世界はまだ少しだけ優しかった。
二人には秘密基地があった。
公園の裏山。
壊れた給水塔の中。
誰も来ない場所。
グロウ『ここなら秘密守れそうじゃね?』
ルーチェ『秘密って?』
意味なんてなかった。
でも。
その場所は二人だけの世界だった。
ルーチェは思い出す。
あの日の夕暮れ。
二人でラムネを飲んでいた。
ぬるくて。
炭酸も抜けてて。
全然美味しくなかった。
それなのに。
すごく楽しかった。
グロウ『見ろ』
ルーチェ『?』
グロウは空き瓶を夕日にかざす。
青い光。
キラキラ揺れる。
ルーチェ『……綺麗』
グロウ『だろ』
お兄ちゃんは得意そうに笑う。
その顔を見た瞬間。
胸が苦しくなった。
“お兄ちゃんが好き”
家族としてじゃない違う意味で。
でも。
言えるわけなかった
ただ胸の奥には。
小さな喜びもあった。
“好きになってもいいんだ”
ルーチェはブランコを見つめる。
静かに揺れる鎖。
グロウはいない。
でも。
またすぐに帰ってくる気がした。
ルーチェ「……お兄ちゃん」
小さく呟く。
その時。
遠くで雷が鳴った。
空が黒く染まっていく。
まるで。
何か悪いことが始まるみたいに。
つづく




