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準備と安息

アリスは翌日、普段着で書店へ赴いた。

カランコロン。ドアベルが鳴る。

「いらっしゃい。」

老眼鏡をかけた、おじいさんがカウンターで本をめくっている。

アリスはウロウロと店内を周る。

見知らぬ文字の本、読めない本だらけだ。

何を読んでいいのかすらわからない。

アリスはウロウロと店内を周り続ける。

その様子を察した店主のおじいさんが栞を挟み本を閉じる。

曲がった腰でえっちらおっちらアリスの元へと来た。

老眼鏡を指でクイと下げ

「何かお探しかな?おじょうちゃん。」

声は、しわがれているが頭はしっかりしていそうだ。

「その…モンスターの生態がわかる本を探しているのですけど。」

アリスが言うと、おじいさんはフムといった感じで返す。

「お嬢ちゃんは冒険者さんかな?」

バックパックから冒険者証を取り出し、おじいさんに見せる。

「なんと!おじょうちゃん、その歳でヴァルキリーじゃったのかい?!」

文字通り腰を抜かしそうになるが、おじいさんは腰に手を当てて

バランスをとり、続けた。

「予算はどのくらいかの?」

アリスは答える

「金貨20枚程度までです。」

おじいさんはファッファッファと笑い

「そんな高価な本はうちにはありはしないよ。」

そういうとヨロヨロと奥へと歩いて行った。

「冒険者向けの少し高いマジックブックじゃよ。気に入るかのう。」

そういうとカウンターに厚めの本を置いた。

中に目を通すとモンスター生息地と姿、弱点が分かり易く描かれている。

昨日依頼を受けた影歩きの黒豹シャドウウォークパンサーが載っている。

おじいさんが言う

「特定のモンスターの情報が欲しいと考えてみておくれ。」

おじいさんのいう通りにアリスがしてみると。

本が淡く光り、目の前に黒豹シャドウウォークパンサー

立体的にホログラムの様に映し出され

習性や弱点なども文字が浮かび上がる。

「わぁ…。」

「フフ…そうじゃろうて。」

おじいさんは満足そうに髭を撫でながら微笑みながら続けた。

「右上に×印があるじゃろ。そこに視線を移してみなされ。」

アリスが視線を移すとホログラムを含む情報は全て一瞬にして消えた。

「すごい…。」

「フフ…そうじゃろうてそうじゃろうて!」

おじいさんは満足そうに髭を撫でながら微笑みながら続けた。

「この本は仕入れで金がかかっておって金貨2枚じゃ。

あと半径10m以内に本がないと効果は出ないが

逆にその中にいれば仲間も恩恵を受ける事が出来るのじゃ。」

「そう……ですか。」

仲間の話題が出た時アリスは視線を落とした。

「うむ?気に入らなかったかのう?」

おじいさんはアリスの顔色を見て首を傾げた。

「いえ。とても気に入りました。」

そういうとアリスは金貨を4枚カウンターに置いた。

「おじょうちゃん。この本は金貨2枚じゃよ。」

「いえ私にとっては思った以上の収穫でしたので気持ちを乗せた金額です。」

「いやしかし……おじょうちゃんからこんなに……」

言いかけたおじいさんに

アリスは冒険者証を再掲示する。

「私はヴァルキリーですよ。お金は唸るほどあります。

本の仕入れの足しにしてください。」

断る理由をアリスは潰そうと考えた。

「ううむ……ゴホン……それじゃあ有難く。」

申し訳なさそうな顔をして、おじいさんはアリスを見る。

「この本のお陰で私の生存率はかなり高くなるでしょう。

そんな顔をしないでください。おじいさんは私の未来の恩人です。」

「そ…そうかの?ならば、有難くいただくとしますかの。」

そういうとお爺さんは笑顔になった。

「また来ておくれ。」

「はい。またいつか。」

一礼をしそういうと外へ出た。

後ろではカランカランというドアベルの音が鳴っていた。

本を取り出しマジックストレージに格納する。

性能をグラスウルフで試した後、視線で×を追い閉じる。

『よし、マジックストレージ内でも機能するね。』

確認した後街中を歩く。

可愛い動物絵柄のティーポットとお揃いのカップを購入した。

そしてハーブ星屑の静寂スターダストサイレンスの茶葉も購入した

この茶葉は非常に高価な薬草の副産物で、細かく砕かれた青い茶葉。

安らぎを齎す香りと全身に静寂が染み渡るような感覚になる。

以前街中の少し高級な食堂の締めに出されたお気に入りの紅茶だ。

宿屋に戻ると白湯を食堂でもらって

部屋で星屑の静寂を淹れる。部屋に漂う安らぐ香りがアリスを優しく包む。

暫く待ってカップに注ぐ。テーブルに置き椅子に腰を下ろし

少し冷めるのを待つ。

立ち上る湯気の向こうに見える窓の外、空と山の境をじっと見つめた。

いい塩梅になった紅茶を口に含む。

目を閉じると、静寂が全身に行き渡り

深い深い海に沈んで行く感覚に身を委ねた。

気が付くと窓にはオレンジ色の光が差し込み夕方を告げていた。

『有意義な1日だった』

そう感じたアリスは久しぶりに優しい顔をしていた。

誰もいない部屋の中。誰に見られるわけでもなく独り心を洗ったのだった。

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