初パーティー初ダンジョン
初心者パーティー
アーチャー募集
特にクエスト無し
初ダンジョン攻略
ドロップアイテム公平分け
珍しくパーティーメンバー募集の掲示板に目を通していたアリス。
おあつらえ向きの募集が目に留まる。
特に実入りがあるわけではなさそうな募集だけれど
今まで経験したことがなかった、パーティーの加入と
ダンジョン攻略に興味が湧いた。
早速受付に行き依頼書を提出すると
「カイルさーん!応募がありましたよー!」
受付嬢が声をかけると、奥の待合ラウンドテーブルから
一人の青年が受付にやって来た。
アリスはバックパックから冒険者証を取り出す。
「お手数おかけします。どちらの方でしょうか?」
カイルと呼ばれた青年は受付嬢に問を投げる。
「こちらアリス・ウェイズさんアーチャーです。」
とアリスの方に手を向ける。
青年は驚きを隠せない。
それも当然身長は10cm以上低く、あどけない顔をしている少女。
「アリス・ウェイズ、アーチャーです。よろしくお願いします。」
そう言って冒険者カードを掲示し一礼すると
青年は安心したように笑顔を作り
「僕はカイル・ヴァン・ブラッドリー剣士だ。よろしくね。」
そういうと冒険証を見せてくれた。
「臨時パーティーなので僕がリーダーをさせてもらっている。
よろしくねアリスちゃん。」
片手を差し出すカイルに呼応するように握手を交わした。
「メンバーを紹介するね。奥のラウンドテーブルに来てもらえるかな?」
カイルは歩きアリスはその後ろをついていった。
テーブルで椅子に腰かけている二人に紹介をされる。
「こちらはアーチャーのアリス・ウェイズさん。」
アリスはぺこりと頭を下げる。
「こちらがシーフのルチオ・バロウズ
そしてこちらがヒーラーのミリア・シンクレア」
女性ヒーラーは立ち上がって握手で迎えてくれたが
ヨッという感じでシーフの男性はハンドサインで挨拶を済ます。
「さぁ皆初ダンジョンだったね。安全第一で行こう。」
三者三様、賛同すると冒険者ギルドを出て乗合馬車に乗った。
アリスは馬車に乗るのが初めてなので、おっかなびっくりで乗るが
他3人は乗り慣れているようで滞りなく目的地へ向かう。
「今日行くダンジョンはペンリスケイヴ森林系ダンジョンだ。
内部に広がる空洞にミニチュアのジャングルがあるようなダンジョンで
見通しもよく強いモンスターもいない。」
カイルが説明する。
「それは安心しますわ。初めてのダンジョンですもの。」
ミリアは胸の前で片手を握り締める。緊張が見て取れる。
「俺は社会見学?っつー感じかな。」
窓に片肘をつき足を組んだままルチオは言う。
視線は遠くを見ている。リラックスというよりは遠足気分に見える。
1時間でダンジョン前に到着し4人は馬車を降りた。
カイルは剣の柄に手を置き
「今一度言うけれど、安全第一。慎重に行こう。」
全員に呼びかける。
「はい。」アリスとミリアは頷きながら返事をするが
「ウッス」ルチオは挨拶の時と同じハンドサインを返した。
ペンリスケイヴ入り口は蔦で覆われており
通路も草が生えていて頭上の岩壁を除けばダンジョンらしくはない。
先頭はカイル。続いてルチオ、ミリア、アリスの順番で進んで行く。
何かの鳴き声、偶に聞こえる咆哮、虫の音
アリスは何時も森の中にいたため、なんとなく安心感を覚えていた。
前方から羽音が聞こえる。でもアリス以外はまだ気づいていないようだ。
一体ではない数匹いる。
「前方から羽音がします。皆さん注意してください。」
アリスが言うと皆キョトンとした後、構えを取る。
そして皆、気配に気づく。
カイルは両手剣を抜刀。ルチオは短剣を抜きミリアは集中
アリスは弓を引き絞る。
キリリリリリ……
「空気を切り裂き炎よ燃え広がれ!フレイムアロー!」
ドヒュッ!!放たれた炎の魔法を宿した矢が
前3人をすり抜け、先頭の得物の胸部に当たる。
矢じりに秘められた炎の魔法が燃え盛り胸部延長線上の羽根を焼く。
ドサッ!地面に落ちた獲物をカイルがブンと両手剣を振るい
真っ二つにしながら言う
「こいつはランタンビーだ!弱毒性。気を付けろ!」
ルチオが右端のランタンビーの羽根の付け根にナイフを突き刺し
羽根をもぎ取り地面に落とす。その際片腕に毒針を受け舌打ちをする。
「チッ……」
その後ミリアの近くへ後退した。
ミリアは即座にルチオの患部に手を当て詠唱をする。
「父なる神よ、哀れなるこの者の穢れを払いたまえ!プリフィケーション!」
「サンクス。」ルチオは解毒に感謝をした。
この一連の間に残り11匹全てにアリスは矢を射ち込んでいた。
地面で蠢くだけの羽根を焼かれたランタンビー達。
カイルが次々と真っ二つにしてゆく。ランタンビーのランタンを回収した。
計13個。
一息つくとカイルが口を開く。
「アリスちゃん…ちょっと…いや大分凄いね…。」
言葉は賞賛だったが、引いているのが見て取れる。
「すごいですわ!」
ミリアは素直に賞賛している。
「ワオ!アリス!マジかっこ良!」
ルチオは本当に驚きを隠さず賞賛した。
アリスは純粋に役に立とうとして全力を出したが
結果カイルの引いている態度に気が行く。
『やり過ぎちゃったのかな……。』
照れ笑いをしながらも、方針を変えなくてはと心に思った。
そしてパーティーは再び探索をする。
前方の岩から生体反応がある。
アリスはカイルの引いた顔が頭をよぎるが
安全第一の言葉を思い出し口にした。
「前方のあの大きめの岩、生体反応があります。」
皆に緊張が走る。カイルが言った
「フェイクストーンクラブかもしれない
つまり岩に擬態した蟹だ。」
カイルが慎重に近づくと岩の割れ目から泡が噴出している。
「やはりそうだ。皆迂回しよ…」
カイルが言いかけた時、急に横から岩を纏った蟹が体当たりをした。
カラン…
「ぐっ…。」両手剣を落とし腕をだらんとさせている。
フェイクストーンクラブは2体いたのだ。
ミリアはカイルに駆け寄り手を添える
「父なる神よ、哀れなるこの者の痛みを取り去りたまえ!ヒール!」
カイルの腕の傷を癒すが2体の蟹が二人に向かって突進している。
スローモーションの時の中でアリスは考える。
何とかできる。でも何とかしてまたあの顔をされたら……。
一瞬躊躇を生むが安全第一だ。真剣なカイルの顔に手は動いていた。
キリリリリ……
「空気を切り裂き爆散しろ!エクスプロージョンアロー!」
ドヒュヒュ!!!
2連射された矢は各々の蟹の岩の装甲に当たると爆発して砕け散る。
最早2体はただの大型の蟹だ。
ルチオは右の蟹の甲羅の隙間に短剣を差し込み内部を切る。
10回ほど繰り返したところで、蟹は動かなくなった。
一方負傷の癒えたカイルは両手剣を握り左の蟹の甲羅の隙間を突き
そして斬った2回ほどで蟹は動かなくなった。
「ハァ……ハァ……」カイルはへたり込む。
「フゥー。」ルチオは座り額の汗を拭う。
場は暗黙の休憩となった。
アリスはカイルの顔を見るのが怖かった。
立ち尽くす安堵のミリアと緊張のアリス。
そんな中、皆息が整った所でルチオ
「ッパ、アリスちゃんスゲーわ。このパーティー打撃系の敵が来たら
アウトだなって思ってたけど、マジ助かった感謝感謝w」
一瞬場の緊張が和らぐ。ミリアも笑っていた。
カイルは立ち上がりアリスの近くへと来ると頭を下げた。
「ありがとうアリスちゃん。君がいなかったら危なかった。
そして、何というか…さっきはごめんね…。」
気まずそうに頭を掻きながら言う姿にアリスは安堵した。
「安全第一ですからね♪」そう返すと
「そうだったね。僕が忘れていたよハハッ。」
パーティーは和やかなムードに包まれた。
そんな中入り口から、ある一行がペンリスケイヴに入場していた。




