表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

転職

暫くグラスウルフ討伐に精を出したアリス

ある日、冒険者ギルドのドアを開け依頼掲示板に目を通そうとした時

受付嬢ミモザが話しかけてきた。

「アリスちゃん。ちょっと来てもらってもいいかしら?」

アリスはミモザのいるカウンターに向き直り

「はい……?」

返事をしつつ近寄る。

ミモザは年の頃18歳おっとりした性格の癒し系女性だ。

依頼カウンターで他の冒険者が多少並んでいても

空いている受付嬢がいなければ

ミモザの列にアリスは並ぶ程度には好意を持っていた。

「アリスちゃん。昨日の討伐で冒険者経験値が溜まって

アーチャーに転職できるようになっているけれどどうする?」

職業は枝分かれの様になっており

武器や名声の経験値が上がる事により

上位の職に就けるようになっている。

バッジに記憶されている討伐時の武器によって

武器経験値が蓄積され転職が可能となる。

転職による上乗せ能力は特になく

オナー(名誉)としてギルド証に記載される。

それは信頼の証でありパーティー募集時等に

自称ではなく実績を示すものとして機能していた。

「お願いします。」

特に断る理由もないのでアリスは承諾し

ギルド証を手渡した。

ミモザはにっこりしながら

「10分程度時間がかかるので後で取りに来てね。」

そう言うと直ぐに変更の作業に入った。

アリスは依頼掲示板の前に行き依頼に目を通す。

生きる為に安定が必要だったアリスは安定こそが全てだった。

でも財に余裕が出来てからは少しずつ気持ちが変化していった。

本人も自覚していないのだが好奇心に引っ張られるよう

何か新鮮な事を求めるようになっていた。


ホワイトディアの角

6本セットで金貨1枚

調剤士 リスティア


アリスはピンを外し依頼書を手に取る。

ミモザの方に視線をやるとまだ作業中のようだ。

手持ち無沙汰のアリスは周囲を見回す。

何時も依頼書と受付だけの生活だったので

ギルド内を観察するのは初めてだった。

正義感の強そうな騎士、なんとなく悪意を感じる魔導士

拝金主義の盗賊。

『人それぞれだ。』ぼーっと、そう考えているうちに

「アリスちゃーん!手続き完了しましたよー。」

ミモザさんの声で我に返りギルド証を受け取る。

さっきまでノービスと書かれていたところがアーチャーになっている。

再びギルド証と依頼書をミモザに渡し

「これをお願いします」とアリスは言った。

「はい分かりました。頑張ってねー。」

ミモザからギルド証とバッジを受け取る。

今回のバッジにはホワイトディアの角@6と表示されている。

同じような角で違う物だったら依頼達成できない仕組みなのだ。

アリスは冒険者ギルドの外へ出る。

冒険者ギルドは高台の開けた場所にあり

目に入ってくるのは遠く広がる空に

ふわふわの真っ白な雲が、たなびいている。

日差しも心地よい。

街道を歩いて行く、行商人、通行人、配下を従えた貴族や冒険者

ベルフィールドは交易都市で色々な人が行き交う為

色々な人達とすれ違う。少し離れた森へ到着し森へ分け入る。

ここはホワイトディアの生息地だ。

成体の雄が目的だ。左右に立派な角が2本生えている。

子供と雌は狙わない。目的外だからだ。

「よし!」

アリスはそう言うと様々な息遣い匂い等の生体反応をキャッチする。

今回は目視で獲物の確認をしなくてはいけないので

音を立てないよう風上から草をかき分けて木の間を行く。

獲物を目視できる位置まで来た。

しかしその個体はブラウンディアであったため

再び別の生体反応へ風上から向かう。

『いた!』

色素の抜け落ちた真っ白のアルビノを思わせる個体は角まで真っ白だ。

子供、雄雌のつがいのようだ。


キリリ……


アリスは弓を引き絞る

「空気を切り裂きいかづちを叩き込め…ライトニングアロー…。」

詠唱を終えると引き絞った弓に矢が番われる。


ヒュンッ!!

ドスッ!!

「キュゥッ!!」

太ももに命中したいかづちの矢は両の足をピンと硬直させ

雄のホワイトディアはその場で倒れた。

雄の叫びを聞いた雌と子供は脱兎のごとく走り去った。

先日購入した鋭利マジックのかかったダマスカスナイフを

バックパックから取り出し近づく。

倒れ痙攣している雄の横にしゃがみ角の付け根にナイフを入れる。

主にカルシウムで構成された角は

本来ならノコギリ状の刃物で時間をかけて切断するものだが

スッと熟成した豆腐に刃が通るが如く、2本とも

あっという間に切り落とした。

バックパックからマジックストレージを取り出し

角を入れるとスッと小さくなり重量も比例し収まった。

そしてアリスは詠唱を始める。

「父なる神よ、哀れなるこの者の痛みを取り去りたまえ!ヒール!」

掲げた手には緑色の柔らかな光が湛えられている。

その手でそっと矢傷の跡に触れると傷口が消えた。

更に手を添えたまま詠唱をする

「父なる神よ、哀れなるこの者の穢れを払いたまえ!

プリフィケーション!」

雄の硬直が解かれビクンとした後にバッと跳ね起き

雌と子供が逃げて行った方に駆け出していった。

「ゴメンネ」両手を合わせ

そうアリスは呟くと申し訳なさそうに肩をすぼめた

バッジの表示は角@4後2匹だ。

似たような感じでアリスは角を集め森を後にして町へと戻る。

冒険者ギルドで角と金貨を交換しバッジを返却して帰途に就く。

夕暮れの街はグラデーションに彩られている。

『明日は何しよ♪』

そして緑の息吹亭で夜食をとり部屋で体を休めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ