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目覚め

カサッ……

自然の音ではない音にアリスは目を覚ます。

ガバッと起き上がり警戒するが気配がまだ遠い。

弱くなっている火に新たな薪をくべつつ

火を眺める。

『息遣いが6つ』アリスは確信した。

根拠はない、だけれど彼女の状況証拠が

それを確定した。

30分もすると、グラスウルフ6匹に囲まれていた。

何故動かなかったのか?アリスは知っていた。

何度も野営をした事があるが火の近くにいるのが一番安全だからだ。

下手に逃げては暗闇の中、不利になるのは分かっていたからだ。

グラスウルフは単体単独行動が基本なのだが

運の悪い事に群れるグラスウルフに遭遇してしまったのだ。

3体2方向、2体3方向と隊列を変えつつ

じりじりとアリスを追い詰めるように近づきながら迫ってくる。

本来単体のグラスウルフは火を恐れ近寄る事はない

しかし群れを成しているグラスウルフは習性が変わり

火を恐れない。

その時アリスは異変を察知する。

グラスウルフの動きがスローモーションのように見えるからだ。

2匹がアリスに飛び掛かってきた。

しかしその動きは物理法則を無視するかのように

ゆっくりと宙を進んでくる。

アリスはまるで時が止まったかのような中で

造作もなく2匹の攻撃を避けた。

自分に何が起こっているのかよくわからないアリスは

少し混乱した。

そこへ続けざまに、他の2体が飛び掛かるも

先ほどの様にまるで時が止まっているかのように

ゆっくり見える。

アリスは何故か燃え盛る薪を一つ手に取り

2匹に火をつける。

残り2匹はその様子を眺めていた。

火をつけられたグラスウルフ2匹は着地と共に身を草に擦り付け

のたうつように火を消していた。

その一連の動作は僅か数秒だったが

アリスの体感では数10分に及んだ。

「アオォーーーーーーン!!」

1匹が遠吠えをすると全てのグラスウルフが

その場から逃げ出していった。

アリスは薪を戻すと気配が消えた後も遠くへと走り去る

グラスウルフの音を耳にしていた。

獣たちの草ずれの足音が聞こえなくなると

アリスは腰を下ろし手に持っていた燃える薪を

焚火に再びくべた。

周囲は暗闇が支配しているが空の端は微かに明るみを帯び

朝の気配が近寄っていた。


バサッバサッ。

アリスは焚火跡に土をかけて踏み固めた。

そうしていつものように薬草を集めに行く。

『おなかすいたな……』

そう思うと何故か足が森の奥へと進んだ。

足を止めると果実をつけた木々が群生している。

「アプロの実!」アリスは思わず口にした。

町の市で売られているフルーツ、アプロの実の原生林だった。

木をゆすると幾つかアプロの実が地面に落ちた。

アプロの実はジューシーで水分の補給にもなるし

果肉もたっぷりで栄養豊富だ。

3つ食べるとお腹も膨れた。残り3つはバックパックに入れた。

何時もの道でもないのに迷わず薬草の群生地についたアリスは

しゃがみ込み、いつも通り摘み取る。

お昼にはバックパックのアプロの実を食べ

薬草採りを再開した。

一時間もしないうちに異変に気付く。

まだお昼を取って少ししか経ってないのに

バックパックが薬草で満タンになっていたのだ。

「どういうこと?」アリスは首をかしげながらも

町への帰途についた。

そしてヨハンに薬草を買い取ってもらいに行く。

「今日は3倍もあるよ?!どうしたの?!」

薬草を渡すとヨハンは驚いて言った。

「いくらあってもいいからね!今日は3倍で銅貨30枚で買い取るよ。」

そういうと忙しそうに中へと入っていった。

『昨日酷い目に合ったから今日は運がいいのかも?』

そんな風に思いつつ、アリスは宿屋へと向かった。

緑の息吹亭それが贔屓の宿屋だった。

安いし悪くはないけど、そこそこの宿屋だ。

1泊2食付きで銅貨10枚。リーズナブルだ。

夜食をとり部屋に行くとランプに火を灯す。

そうして改めてバックパックの中を覗くと銅貨20枚が入っていた。

その日暮らしだったアリスにとって初めて貯金が出来た。

『今日は幸運な日だったなぁ。』

心で呟いて、シャワーを浴び寝床へと入った。


翌朝朝食をとり、再び薬草を採りに森へ分け入る。

「えっ?!」

アリスは思わず声が出た。まだ昼時にもならないのに

バックパックが薬草でいっぱいになっていた。

『うそでしょ……』

当然嬉しい誤算なのだけれどもアリスはやはり混乱した。

昼下がり街に戻りポーション屋へ行くとヨハンさんは驚いた。

「どうしたのアリスちゃん?!薬草採り貯めしていたの?!」

突然の効率にヨハンは驚いた。

「よくわからないのですけれど、一杯採れるようになったのです。

買い取りは難しいですか?」

申し訳なさそうにアリスが言うと

「とんでもない!薬草なんていくらあっても困らないからね!」

店の中へ戻り奥から戻ってくると

「はい。じゃあ銅貨30枚ね!ありがとねアリスちゃん!」

そういい再び店内へ戻っていった。

緑の息吹亭で銅貨10枚払って部屋に行く。

まだランタンに火を灯さなくてもよい時間だ。

バックパックを覗き込む。銅貨が40枚。

人は余裕が出ると周囲を気にする時間が出来る。

ふと本棚に目をやると、”魔法のいろは”という本があった。

アリスは日々生きて行くのが精いっぱいで

何かを学ぶという考え自体がなかった。

何となく目を通すと、その本は面白かった。

毎日毎日、その日々は続いた。

バックパックの中身が銀貨10数枚になる頃

アリスは決心を固めた。

ヨハンにはもう薬草を届けられ無くなる事を告げると

残念そうにしていた。何年もお手伝いをしてくれたという事で

お礼に銀貨1枚を貰った銀貨は銅貨100枚で1銀貨なので

お別れの餞別としては破格だった。

アリスはお世話になったことに感謝を告げ

その足で向かったのは冒険者ギルドだった。

動機は単純なものだった。なんか最近運がいい。

ヨハンさんのお抱え薬草採取人になったのも

元はといえば冒険者ギルドの最低ランクのクエストだった為

専属になってくれたらうれしいという事でやっていたのだ。

割のいいクエストが沢山ある事は知っていた。

魔法も多少は覚えた。今ならできるかもしれない。

そんな子供の考える甘い考えではあったが

それはアリスにとって良い選択となったと知るのは後の事である。

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