修練と出会い
それは一カ月かかった。
アリスは身的強化を
実用的にするために宿に、こもり短剣の扱いを磨いた。
何故短剣かというと、弓では運用が難しかったからだ。
弓を引き絞るという動作の性質上
どうしても身体に負荷がかかるのだ。
短剣ならば脱力していても振るう事が出来る。
角材で試してみたが、超感覚により
まるでハムをスライスするが如く簡単に
薄切りする事が出来た。
初めのうちは苦戦したものの
一週間で身的強化を克服
効果後も何事もなかったかのような状態へ
身的限界化に至っても
三週間程度で全力疾走後の疲労程度まで抑える事が出来た。
三段階目の身的過負荷に関しては
やはり難しかった。いくらやっても幾ら工夫しても
魔力を断った瞬間、昏睡してしまった。
三段階目はアリスには修練を積んでも、まだ早かった。
そして実践の朝が来る。
モーニングルーティーンを終えて
心機一転、身軽さを重要視しウエストポーチに
マジックストレージを入れ冒険者ギルドへと向かう。
ドアを開けると珍しくミモザがアリスに手を振り手招きした。
カウンターへ行くとミモザが聞いた
「アリスさん一か月ほど見かけませんでしたけど具合でも悪かったのですか?」
アリスは答える
「いえ、実は新しい魔法の修練をしていました。」
「あら、そうだったのね心配してたのよ?」
顔を覗き込むミモザに
「心配おかけしました。」
アリスは頭を下げる。
「いえいえ、元気なら良いのよ。噂を聞いてアリスさんに
パーティー加入の、お誘いが来ているの。
今日も待っているはずよ。どうしようかしら?」
アリスは頭の中で数か月前の初心者パーティーの事が頭をよぎる
「……。」
俯いてしまう。
「そうよね、突然のお話ですもんね。お断り…」
被せ気味にアリスが言う。
「会ってみます!」
アリスは募集者がミモザを頼って紹介を願い出たという事は
断ればミモザの信頼を落とす行為に他ならないと考えた。
「乗り気じゃなかったらいいのよ?」
「大丈夫です。合わせて下さい。」
ミモザの為でもあったが、みっちり仕上げたとはいえ
新魔法で、しくじったなら一人の時だと危険かもしれない
という気持ちもあった。
ミモザはカウンターから出てアリスを誘導して奥に行く
冒険者の待合場には幾つかのパーティーがいて
その中の一つのテーブルに向かった。
「アルスターさん長らくお待たせしました。
本日お見えになりましたので、ご紹介しますね。
こちらヴァルキリーのアリス・ウェイズさんです。」
男性一人以外は立ち上がる。
アリスはウエストポーチから冒険者証を取り出し
テーブルを囲んでいる3人に見えるように、かざした。
「初めまして、アリスさん。僕は白騎士アルスター・ヴァルハルト。
パーティー、白金剣のリーダーです。」
丁寧な、お辞儀をしてアリスに冒険者証を見せる。
「私はビショップのエレノア・ホワイトグロウ
白金剣の何でも屋さんかな?」
そう言うと優しく微笑みながら冒険者証を掲示した。
「おい!ジャック!立って挨拶をするんだ。」
アルスターに促され、よっこらせとばかりにめんどくさそうに立ち上がり
「あー……俺はローグのジャック・シルバータングだ。」
そう言うと冒険者証の掲示もなく、めんどくさそうに再び座った。
「アリスさん、すまない、こいつ悪い奴じゃないんだけど
めんどくさい性格でね。悪く思わないでほしい。」
アルスターはフォローするが
ジャックは横を向き舌打ちをする。
「どう?アリスさんやっていけそうかしら?」
ミモザが言う。
「はい。」
不安はあったが、断るという選択肢はアリスの選択肢になかった。
「それでは後は、よろしくお願いしますね。」
ミモザはアルスターに言うと
「任せてください。」
とアルスターは胸を張った。
4人はテーブルにつき、椅子に腰かけた。
「アリスさんの噂は聞いてるよ。急に頭角を現した綺羅星ってね。」
アルスターが言うとアリスは戸惑いながら言った。
「そんな事……。」
「いや。実際僕はミモザさんに頼んで君を待っていたからね。
競争率、高かったんだよ?
でもミモザさんが僕のPTなら安心だって予約させてもらったんだ。」
そう言うと片目を閉じる。
「そ…そうですか…。」
少し照れくさい。
「君の得物は何だい?」
アリスは聞き返す
「得物?」
「あっ、すまない武器の事ね。」
あーという顔をしてアリスは言う。
「メインは短剣ですが弓もいけます。」
「なるほど、スイッチできるんだねカッコいいね!」
アルスターは含みなく褒めるのでアリスは照れた。
「さて、今日は連携を確かめる感じで緩めの依頼を受けよう。」
アルスターが言うと
「そうね。」とエレノアは頷き
ジャックはハンドサインでOKを出す。
「それじゃみんな待っててね、見てくるよ。」
アルスターは一人で依頼書の方へ歩いて行った。
待っている間エレノアがアリスに色々と
PTの情報を伝えた。
すると暫くしてアルスターが戻ってきた。
討伐対象サイクロプス10体報酬は金貨20枚だ。
アリスはいつもの癖で、サイクロプスの情報を念じた。
すると皆にもサイクロプスの情報がホログラフで出現する。
「うおっ!なにこれすごいね!」
二人は驚いている。ジャックは少しだけ表情が動いただけだ。
「えっとですね、これは……」
マジックブックの説明をアリスはした。
「すごい便利だね!」
「右の方のバツ印を視線で追うと消えます。」
アリスは説明した。
「うおっ!消えた!すごいね!」
アルスターのリアクションがとても良い。
「さぁそれじゃみんな出発だ。乗合馬車へ行くよ。」
そう言うとジャックはヨッと立ち上がり
三人で後をついて行く。
アリスの心には期待と不安が入り混じっていた。




