巨人遺跡(キュクロープルイン)
4人で乗合馬車へ乗る。馬車はガタゴト揺れる。
アルスターはアリスに聞いた。
「アリスさんはポジションの希望はある?」
アリスは少し考えた後口を開く。
「前衛での前衛補助が良いと思います。」
そしてアルスター
「わかった。それじゃあ先頭が僕で
それに続いてアリスさんとジャック
しんがりはエレノアにお願いしようかな?」
エレノアは柔和な表情で言う。
「承知しました。」
ジャックはハンドサインでOKを出す。
馬車に揺られて2時間ほど
巨人遺跡に到着した。
遺跡までは徒歩10分ほど。
到着するとアルスターは言う。
「皆、ここから先は遺跡だ。準備は良いか?」
各々戦闘の準備を整える。
アリスはマジックストレージからダマスカスナイフを取り出した。
「皆僕についてきてね。」
アルスターの言葉に隊列を取る。
アリスは不思議に思った。ただの原っぱのように見える。
地下遺跡は様々な形態があるが、ここ巨人遺跡は
自然災害によって地中に埋もれ
長年にわたって落ち葉や枯れ草が積もり腐葉土となっていた。
奥に行くと茂みの中に隠れた大き目な洞窟のような岩の裂け目があった。
「さぁここからだ。皆気を付けて行こう。」
アルスターが先に入り皆続いて行く。
「主の慈光よ、此処に。昏き(くらき)世界に福音を!
聖なる光!」
エレノアが唱えると周囲20m程だろうか?照明の様に光が照らす。
横の壁までは光が行き届き完全に見えている。
通路の奥は途中から薄暗くなり暗闇で見えない。
遺跡を支える柱はドーリア式。簡素だが重厚感あふれ
エンタシス様式の為、下部に比して上部が細くなっている。
ドズン!ドズン!
周囲の地面からは割れて細かく砕けた微小な粒が少し跳ね上がる。
振動により天井からパラパラと砕けた石灰が落ちてくる。
「お出ましだな。」
アルスターは音のする方へ足をすすめる。
ホーリーライトの範囲内に捕らえた。
サイクロプスだ。
微かに青みのかかったダークグレーの肌に超筋肉質で全長4mはあろうか。
年季の入ったような皮の肩パッドを付け
腰には皮なのか木片なのか分からないミノ
頭部には血管が浮き出て赤く生々しく縁どられた大きな眼球が一つ。
両手に握られるのは重々しく並の人間ならば簡単に叩き潰されてしまいそうな
長く鈍重なメイス。というよりはこん棒と言った方がいいだろう武器。
光に反応し、こちらを見て大きな口で雄たけびを上げる。
「ヴォオオオオオオオ!!」
「此処より先は、聖域なり。理に背く力の排除、静謐
なる障壁の前に沈黙するがいい。聖別されし境界よ、今こそ顕現せしめよ!
物理盾!」
エレノアは物理盾を詠唱した。
詠唱に合わせアルスターが走り抜刀すると
こん棒が唸りをあげて振り下ろされる。
ブオン!!ドズッ!!床が砕けるがアルスターはそこにはいない。
サイクロプスの懐に入ったアルスターは体当たりを試みる。
が、微動だにしない。
「まぁそうだろうね。」
そういうと後方に飛び退く。
「ジャック!!」
言われる前にジャックは駆け出していた。
サイクロプスの膝上を足掛かりに
タンッ!と跳び
サグッ!!と目玉に短剣を突き刺し頭部を蹴りつけ離脱。
「ヴァァァァ!!」
ドズン!!とこん棒を落とし
サイクロプスは両手で顔を押さえ咆哮する。
「よし。」
アルスターは刹那集中する。
「白き一閃!……」
大きく剣を溜め
「ロイヤルディヴィジョン!!」
ザグゥゥッ!!
叫ぶと共に剣は大きくサイクロプスの鋼のような肉体を
斜めに両断する。
ドズゥゥン!
上半身と下半身を斜めに切断されたサイクロプスは
「ヴァァ…」
と断末魔をあげ動かなくなった。
アルスターは言う。
「うん。一匹目。」
続けて言う。
「アリスさん、これが僕らの連携だよ。
適当に連携に混ざってね。」
そう言うと剣を一振り。サイクロプスの血を払い鞘に納める。
「分かりました。」
とアリスは言ったものの
『私がいなくても成立してるし……』
と思った。
暫くダンジョンを行くと。アリスの超感覚が敵を捕らえる。
「2匹います。」
「えっ?」
視界に頼っているアルスターは戸惑った。
しかし進んで行くと確かに2体揃って敵はいた。
「2匹同時はめんどくさいな、1匹剥がすか……。」
アルスターの方針にアリスが言う。
「1匹は私が無力化します。」
アルスターは一瞬考えた後。
「分かった任せるよ。」
「此処より先は、聖域なり。理に背く力の排除
静謐なる障壁の前に沈黙するがいい。
聖別されし境界よ、今こそ顕現せしめよ!
物理盾!」
エレノアが詠唱すると、アルスターが囮となり
ジャックがサイクロプスの目を潰す。
そして一刀両断。
時間は遡りアルスターが駆け出すと同時に
アリスは超感覚のスイッチを入れ唱える
「律するは我が肉体、整うは魔の脈流!
身的強化」
アルスターを、さっと抜き去り逆の方のサイクロプスの膝上を蹴り
目にダマスカスナイフを突き刺した後
腕に着地、素早く走り右手首の周囲にダマスカスナイフをぐるっと走らせると
手が切り離され下手に握っていたこん棒が手ごとずり落ちる。
アリスはそのまま腕から跳び空中で数回転した後エレノアの近くに着地した。
その時、一方のサイクロプスの目をジャックが潰す瞬間だった。
アルスターとジャックのサイクロプスを一刀両断にし返す刀で
「白き一閃!……」
大きく剣を溜め
「ロイヤルディヴィジョン!!」
ザグゥゥッ!!
片手を失い片手で目を押さえているサイクロプスも両断する。
「ふぅ。いけたね。」
アルスターは言い続けて
「アリスさん!何やったの!?すごいね?!」
純粋に驚いていた。
ジャックはヒューと口笛を吹いた。
誰の目にもとまらぬ速さの出来事だったので
3人とも理解が出来ないものの。
結果を称賛した。
アリスが役に立つことは分かってもらえただろう。
その後7匹を討伐して依頼の10匹をこなして地下遺跡の外へ出た。
皆、乗合馬車を待って乗り。
帰途はアリスへの質問攻めとなった。
どうやってサイクロプスを無力化したのか?
どうしてそんな事が出来るのか?
冒険者になったきっかけなど色々と聞かれた。
3人はアリスに感嘆した。
アリスは引かれてしまう心配をしていたが
この白金剣の面々は
受け入れてくれた上で感心までしてくれた。
以前のもやもやが晴れたのと同時にアリスは嬉しかった。
乗合馬車を降りてアリスと3人は向かい合う。
アルスターは改まって神妙な顔をして言う。
「改めまして白金剣へようこそ!アリスさん。」
アルスターは片手を差し出す。
「よろしくお願いします。」
アリスは手を握り、握手をした。
エレノアは笑顔でパチパチと小さく拍手し
ジャックは頭の後ろで手を組んで我関せずといった感じだったが
顔はまんざらでもない表情をしていた。
報酬を受け取った一行は4人で均等に分け
アリス加入祝いを兼ねて行きつけの酒場で歓迎会を開いてくれた。
宴も終わり、アルスターは
「僕の事はアルスとでも呼んでほしい。」
引き続きエレノアは言う
「私はエレンと呼んでくださいな。」
アリスは
「わかりました!」
と元気よく返事をして、それぞれの宿屋へと戻っていった。
アリスは帰り道
「白金剣か……」
満天の星の夜道で、そう呟くと
心がほっこりした。




