一角スイフトの角 前編
アリスは宿を出て冒険者ギルドへ向かう。
中へ入ると、すぐさま依頼掲示板へと向かう。
『今日は何にしようかな?』
収集と討伐の依頼書を見て回った。
『この前の事もあるし、あまり魔力消耗しないのを選ばないと。』
依頼 一角スイフトの角
報酬 1個 金貨5枚
依頼主 調剤士 エンリル
目を閉じ集中する。一角スイフトの情報が浮き上がる。
基本的に無害ではあるものの
身に危険が及べば襲ってくる。
角のついている鳥だ。体躯は1m弱。
トゥマクの木に巣を作っている。
『これにしよ。』
ミモザの列に並ぶ。
前の人が手続きを終えアリスの番になる。
「あらアリスさん。昨日いただいたスターダストサイレンス
とてもいい香りでしたわ。ありがとうございます♪」
「いえ、喜んでもらえたみたいで、嬉しいです。」
お互い笑顔で顔を見合わせると
依頼書と冒険者証を提出する。
「角はバッジの検知で確認しますので、こちらを持って行ってくださいね。」
ミモザはそう言うとバッジを渡す。
「行ってきます。」
アリスは受け取りミモザは手を振って送り出す。
「お気をつけてー。」
アリスは、その足で乗合馬車場へと向かう。
トゥマクの木は針葉樹であり北部に生息する常緑樹。
約1日かけて北へ向かいナザンフォークの町へと着く。
馬車を降りると、体がブルッと震えた。
それもそのはず。アリスは物心ついてから
ベルフィールド以外の町へ行ったことはなかった。
そもそもが、こんなに北へ離れた土地に来た事はないのだ。
吐く息が白い。ベルフィールドでも寒い時期はあるが
この時期に、こんなに寒い事はないので
防寒着を持ってきていなかった。
アリスが先ず向かったのは衣装屋
外はウール地、中は小動物のファーで埋めた
サーコートを購入することにした。
身にまとい外へ出ても寒さを感じない。
町の周辺にはトゥマクの木が、まばらに生えていた。
30m近くのトゥマクの木が群生している地点まで移動した。
半日かけて木々を見上げて一角スイフトを探すが
他の鳥は見つかるものの、なかなか見つからない。
そうこうしているうちに日が暮れ始めた。
特に森の中では日が暮れるのが早い。
乾燥や根の損傷により幹自体が枯れてしまっている
トゥマクの木の枝などを探し集めた。
木を組み魔法で火を起こす。
日も暮れ頭上には星々が煌めいている。
周囲にはパチパチと焚火が、はぜる音が響く。
炎のオレンジ色が、アリスや周囲の木々をゆらゆらと照らす。
町へ戻る手もあったのだが
戻れば成果を出すのが遠のくと考えたので野営を選んだ。
掌を焚火にかざし暖を取る。
懐に入れていた革袋を取り出し水分を補給し
ナザンフォークで購入していた非常食を食べる。
周囲に気配はない。木をくべながら火を大きくして行く。
眠気が来る頃、アリスは体をくの字にして
焚火に、お腹側を向け寝転ぶ。
そうして夜は更けていった。




