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Re;Birth  作者: 波多見錘
良心の拒絶

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side02 水も滴るいい男

 彼を拘束し、僕は技を決めようとした。

 しかし、その瞬間に僕の耳をつんざくような強烈な音が鳴り響き始めた。


 「ぐっ……!?」


 あまりの不快感に、不覚にも僕は銃を取り落とし、照準を外してしまった。

 カタンと銃が落ちた音によってどうにか正気を取り戻す。


 だが、一度拘束が外れてしまっては、相手もすぐに逃げてしまう。しかも、彼は僕の動きを止める手段を手にした。非常に厄介なことに。


 「姑息だね」

 「なんとでも言えばいい。僕はもう知ってるんだ。なにをしても、最後に立っていればいいんだって」

 「そんな男を花音が認めるとでも?」

 「関係ないさ。僕は彼女の理想の男なんだから!」


 そういう下世話な話は真面目に言われるほど、狂気に見えるのは僕だけだろうか?

 おそらく、彼は過去になにかあったのだろう。しかし、それを理由にして力に手を伸ばしていいはずがない。


 僕は魔なんだ。

 どんなに悪人でも、その人を助けてほしいと願う人がいることを―――人間は必ずしも罰《処刑》を受けることが正解だということではないといことを。


 だから、殺さずにいきたい。


 僕にとってそれは非常に難しいことでもある。

 なんせ、僕も彼と同じで殺す以外の目的で戦ったことはなかったからね。


 今替えの姿は見えない。不快な音を発している。

 音さえ潰せば彼を見つけられる。


 だが、それは難しいだろうね。


 本当にこれが音なら鼓膜を潰したところで何らの意味は持たない。

 音は骨の振動によって伝わる。極論を言えば、鼓膜がなくても、他の耳に関する器官が生きているのなら音は僕の脳に届く。対策のしようがないってところだ。


 もはや銃で応戦するのは不可能だ。僕の集中力が持たない。


 あまりやりたくない力の使い方だが―――やむを得ない。


 僕はそう考えながら地面に手を添える。そして、そのまま僕の頭の中のイメージを体現させた。


 「うおっ……!?なんだ……?」

 「はぁ……この場に花音がいなくてよかった。彼女を巻き込むなんて、あってはならないからね」


 驚異的に地面が波打ち始め、近くの塀などが崩れ始める。

 地震など比にならないほどの大きな揺れが彼を襲う。だが、僕の狙いは揺れによって足を止めることだけじゃない。


 揺れによって地下にある水道管が破裂し、水しぶきが吹き上がる。

 断水……?そんなものは知ったことじゃない。


 足を取られ集中力が切れたであろう彼から音が聞こえなくなっていた。


 そこでもう一度銃を取り直し、周囲を警戒する。

 すると、水しぶきが一部発生していないところがあるのに気付いた。


 まあ、あそこに彼がいるのだろう。


 照準をそこに合わせて引き金を引く。

 別のほうに目が向いていた彼に銃弾を当てる程度など容易なことだ。


 「ぐあっ……!?ど、どうして―――ごほっ!げほっげほっ!」

 「なんだい?君は僕に負ける姿でも思い描いたのかい?」

 「うる、っさい!ぐふっ……」


 辛そうだ―――まだ力を扱いきれていないのか?

 そういえば、彼が咳をした時に花音の洗脳は解けた。先ほども銃が効かない自分でも思い描けばよかったのに、そうしなかった。その次の瞬間には、彼はせき込んでいた。


 力を扱いきれていない。

 そうではない。


 答えはもっと単純だったんだ。


 彼は力に適合していない。

 正確には、リアクトとしての親和性がかなり低い。かろうじて、変身できるレベルには到達したが―――というだけなのだろう。


 「それ以上はやめたまえ」

 「黙れ!僕は、理想の僕に―――みんなが愛してくれる。そんな僕に―――」

 「それが君の願いか。だが、その程度の願いなら君自身の力で叶えるべきだ。そんな力に頼るものじゃないよ」

 「だけど―――もう僕にはこれに頼るしか……!」


 なるほど、彼としてはすがるしかない一手だったってことか。

 だが、方法を間違えているとしか言えないな。


 僕としても頭に血は上りはしたが、彼はまだ断罪されるほどの被害を生み出したわけではない。


 「君はまだ引き返せる。まあ、花音を誑かしたことについては一発殴らせてもらうけどね」

 「―――っ、それって……」

 「『狼と涙』の主人公の友人の言葉だ。喧嘩した友人というのは、最後は殴り合ってわかりあうもの、だろう?僕も水に流そう。そして、君が変わること―――僕も手伝おう。もっとも、僕の言葉が参考になるかは知らないけど」

 「いいのか?僕は紀里谷さんを―――」


 正直、まだ許しがたい。

 そこに嘘をつくのは無理だ。だけど、前に進むこと―――それを否定してはならない。


 ああ、そうだ。


 「とりあえず、変身を解除してくれ。のちにスマホを破壊する」

 「え……!?」

 「その中にある超能力アプリというものがあるだろう?それを完全排除する。なに、問題ない。新しいスマホの代金は僕が工面しよう」

 「えっと、その、ありが、とう……?」

 「まずはその喋り方からなんとかしようか。少し、というかかなり話してるとイライラするからね」

 「うっ、零蘭君って言葉きついよね」

 「生まれつきさ」


 そうして、僕たちは戦闘をせずに事を終わらせた。

 ちなみに、抉れた地面や破裂した水道管はすでに直しておいた。所詮僕の思い通りに動くものだ。創造の範疇でのことだからね。


 さて、どう花音に説明すればいいのか。


 まあ、彼女には色々と負担をかけることになるかもしれないが、そこは僕がサポートすればいいだけのことか。


 「あ、これ、僕のスマホ―――」

 「ありがとう。こうやって素直にデバイスを渡してくれたリアクトは初めてだよ。本当に助かる」

 「そうなの……?」

 「まあ、麻薬と同じようなものだ。使えば使うだけ、レベルが上がれば上がるだけ、高い中毒性を誇るようになる。その分に力にも飲まれて自分を失うことになる」

 「そんなやばいやつだったの?」

 「そうだよ。だから僕は手放すように言ったんだ」

 「ほ、本当に、ありがとう……?」

 「本当に心から感謝したまえ。僕は命恩人だよ」


 色々あるが、力を使ってでも子供を助けようとする根の優しい人間なのだろう。

 彼女が欲しいという願望なのか、花音に固執していたのか、そこまで詳しくわかることはないものの、彼を悪人と決めるのは多少早計なのだろう。


 だが、殺さずに事を済ませられた。こうやって言葉を聞いてくれる存在もいる。

 それがわかったことはいい収穫だった。


 だが、それだけで終わるのなら、僕たちの道筋はいばらなんてない舗装された道になっていただろう。

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