side01 盤
ミサイルが突然俺の手元で炸裂した。
突然の出来事に反応が遅れてしまい、対処することができなかった。
攻撃を受け、少し冷静になった今なら、あれの対処法は3つほど思い浮かんだ。だが、同じような技を仕掛けてくるタイプとは思えない。それがなかなか難しいところだ。
リアクトは二体いる。もう一体はどこだ……?
「よそ見してる場合かよ!」
俺が周囲を見渡しながら警戒をしていたら、ミサイルリアクトが飛びついてきた。
先ほどのミサイルのように俊敏な動きをしない以上、俺の反応速度で十分間に合う。視線を少し外し、背後にミサイルがないことも確認している。
もっとも、荻原が俺から離れてしまっているので、どこでどう爆撃してくるのかはわかったもんじゃない。
相手が飛び込んできたところに、俺はまっすぐ拳を叩き込む。確実に顔面を捉えている。
なんせ、相手は飛び上がり、着地まで態勢の入れ替えができないはずだからだ。
しかし、現実はそううまくいかなかった。
確実にとらえたと思っていたはずの拳が、空を切ったのだ。
「―――消えたっ!?」
「どこ、見てんだよ!」
そんな声が聞こえた瞬間、俺の背中に衝撃が走る。しかも、熱い。
ミサイルを撃ち込まれた。
「かはっ!?」
俺が急いで後方に振り返ると、奴をかなり離れた位置に発見する。
いつの間にあんな位置まで―――
いや、それが二体目のリアクトの能力か。
「あらあら、学生さんの力もずいぶんと弱いわねえ」
「言ってやるなって。俺たちは二人そろって無敵なんだからよお」
「そうねえ、あんなガキ一人に相手にだってならないわあ!」
あざ笑うような言い方だ。
誰に、誰にものを―――
いや冷静になれ。確かに奴らが有利な状況だ。さすがの俺もこの状態はまずい。ここまで戦闘慣れしている人間たちも珍しいからな。
焦るな―――奴らの不和を探すんだ。
二体目の能力の名はまだわからないが、おそらく勝機はそこにある。
そう考えた俺は装甲を剥がして、二本目の剣を作る。
一本目は少し離れたところに刺さっている。
まあ、飛びつけばすぐに回収できる。
相手を算段は考え切れていないが、窮地を脱するにはあの剣が必要。
多少無理やりにでもやるしかないので、俺はすぐに地面を駆けだした。だが、名称不明のリアクトのほうが動くのが早かった。
「あなた、あいつ無駄なのに抵抗しようとしていますよ」
そう言うと、彼女(推定)が能力の行使をしてくる。
突然俺の足元に光が出現し、目を潰さんとするほどの勢いで発光した。だが、なにも起きなかった。
おそらく何らかの方法で俺に剣を取らせまいとしたのだろうが、あいにく俺自体に干渉するやり方の能力は通用しない。
「残念だったな」
「嘘……!なんで、移動してないの!」
「いいだろ、なぜだかわからないが、奴には能力が通じない。だが、いつも通りやれば倒せるだろ!」
「あなた、私、このような相手だと加減できるかわかりませんよ」
「別にいいだろ。我が家に侵入しようとした。私たち家族のための空間に立ちいろうなど、死んでも有り余るほどの重罪だ」
「それもそうですね」
少々不穏な言葉が聞こえたが、とにかく無力化することが優先なんだ。
さっさと決める。荻原にもいろいろ聞きたいことはあるからな。
「死ねえ!」
熊のような立ち姿をしているミサイルリアクトが雄たけびとともにミサイルを射出した。
それに対応して、俺も生成したばかりの二本目の剣を投げ込む。
回転しながら飛んでいったそれは空中を縦横無尽に駆け回り、ミサアイルを次々と破壊していく。
「あの人だけを見ていてもだめですよ!」
「今俺が警戒しているのはお前だ。Board」
「―――っ!?どうして私の力を……まあいいわ。わかったところで対応するのは無理なんだから!」
そう言うと、彼女の周囲の地面が発光し、いたるところからミサイルが出現した。
俺の予想は当たった。
ボードリアクト―――奴の能力は指定した空間と空間を入れ替える能力。
ゆえに、先ほどの俺の手元でミサイルを炸裂させた。先ほどもその力を使い、俺を剣のもとまで届かせないようにしたのだろう。
何らかの転移系の能力だとは思ったが、確信めいたものは簡単に見つかっていた。
先ほどの地面が光ること。転移条件はそれだけ。だが、光の量を調整できるようだが。
それは知らなかったな。
やはり年季か―――厄介だな。
「能力がわかったところで、縦横無尽に発生するミサイルからは逃げられないのよ!」
「だからなんだ。そうやって前ばっか見てるから、お前は俺の攻撃に気づかない」
「なに言って―――っ!?」
俺の言葉に誘導されて彼女は後ろを向いた。
その瞬間には、彼女の目の前に俺が先ほど投げた剣が肉薄していた。
それを避けるすべなどなく相手は肩口を抉られる。
投じられた剣はボードリアクトの後ろから攻撃した。つまり、前には俺がいる。
武器は俺のもとへと帰ってきた。
俺は走り出し、飛んできた剣に向けて己の剣を振り抜く。
柄のほうを前に出し、柄と柄で衝突させた。
その瞬間、二本の剣は接続し、長い一本の棒になる。
先端は剣のまま持ち手の部分が長くなり、大幅なリーチを獲得した。
変形した時点で前に駆け出し、ボードリアクトに向けて刃を突き出す。
だが、そこにミサイルリアクトが割り込んできて俺の攻撃を受け止めてしまった。
「大丈夫か……?」
「あなた―――っ、やっぱり家族はいいものですね」
「ああ、お前みたいに一人で戦ってるやつにはわからないだろうなあ―――お互いに助け合い、愛し合い、互いの力で蘇る。そんな美しい家族の姿の邪魔をするな」
「俺にはそんなにきれいな物には見えないな。ただ欲望にまみれたクズだ。あいつと何も変わらん」
「あいつ……?誰だか知らないが、俺たちを馬鹿にするなよ」
「前にも言った気がするが―――馬鹿にしてるんじゃない。力に手を延ばしたお前たちを見下してんだよ」
そう言うと、俺はミサイルリアクトを蹴って後方にとんだ。
着地したのに、すぐさま武器を持ち直して投げの態勢に入った。
当たるかどうかは賭けだな。まあ、奴らの反応速度を超えればいいだけのこと。
かすりさえすれば隙は生まれるはずだから!
「どおおらああああ!」
力いっぱいに武器を握り、思い切り投げつけた。
投擲されたそれは、まっすぐ進みながら奴らの間合いにまで接近した。
だが、そこでボードリアクトが能力を発動させて転移を試みた。
俺の目論見は見事に成功し、転移直前にミサイルリアクトの背部をかすめた。
爆発が起こり、瞬間的に視界が奪われる。
見えなくなるのは問題ない。すぐに奴らを見つければいいだけのことだ。
「グアアアアアア!」
攻撃の手前、咆哮が聞こえる。
ああ、見つけた。




