side01 進化
「始祖……なにをわけのわからないことを!」
「バカはバカのままだ。死ぬまでな
ここまでわかりやすく一言で言ってやったのにわからないのか?まさか始祖という言葉の意味すら分からないか。それとも、俺が言葉選びを間違えるようなお前以上の愚か者だと思うか?」
劣化コピーごときがオリジナルに勝てるわけがない。
それは当たり前の摂理。
「俺の知る力で、俺を殺せると思うなよ」
「っ……!」
俺の言葉に対して激昂するように奴が周囲を一気に爆発させる。
奴の能力はインパクト―――触れたものを衝撃を叩き込み、爆破させることが可能な能力。衝撃の発生の都合上、熱が発生し、本気で探知すれば爆発寸前に感知することは可能だ。
だが、先ほどの爆発―――俺を全方向からつぶそうとした瓦礫たちは、奴は触れていないはず。爆発物を校舎に何らかの方法で貼り付け、俺を誘導したうえで起爆したものだ。校舎に触れているのなら、建物そのものが吹っ飛んでいるだろうから、間違いないはずだ。
そして、この能力の発動条件には直接触れる以外にも、ある。
単純に自身が爆破させたものが触れたものにも能力の行使が可能になる。だから、倒壊した瓦礫も対象に、そしていくつかの爆発によって散乱した砂粒があらゆる場所に発動条件を満たしたのだろう。
つまり、行動をさせればさせるほど爆発物の予測がつきづらくなって、数も増える。
簡単に言うのなら、戦闘が長期化すればするほどこちらの対処が間に合わなくなる。
「お前は……」
「ん……?」
「お前はどうやって、さっきの爆発を防いだんだ!」
「―――空間を切り裂いた」
「は?」
「空間を切り裂き、俺だけの世界を作り出した。お前も、どんな物体も、そして爆発の衝撃すらも俺の世界には立ち入れない。一か八かの俺の能力の解釈―――言っただろう?お前じゃ俺には勝てないんだよ」
先ほどの緊急回避は、かなりの未知数となりうる賭けだった。
成功するかしないかには興味ない。できなければ終わるだけだ。だが、『断絶』―――先に発動したあの技が使えるのであれば、これからの戦いも派生が効くだろう。
「ごちゃごちゃごちゃ!さっさと死ねよ!」
「ふっ……ごちゃごちゃなんて言ってないな。ただお前が死ぬ。そうとしか言っていない。それを読み取れないお前が無能なだけじゃないのか?」
「ぶっ殺す!」
そう言って奴は俺に向かって砂を投げつける。
しかし、もうその技は俺には通じない。
先ほどの力を使って奴の放つ砂の周辺の空間を裂き、砂粒を俺たちのいる世界から独立させた。
それにより、隔絶された空間内で炸裂し、誰も傷つけないまま終わる。
これで奴の能力は封殺できた。
「さあ、どう動く?」
「この……!でたらめばっかり!」
さすがに打つ手がなくなった月野は俺に向かって走り出す。
そう、奴に使える手段は近接戦しかない。
少しずつ、確実のお前の手足をもいでやるよ。
終わらぬ果ての絶望とともに、ただひたすらに後悔して死ぬがいい。
突貫してくる奴に対して、思いっきりためてストレートを放つ。
放たれた拳は完璧に鼻っぱしらを捉えるが、俺のやることが一撃で済ませるつもりもない。
鼻、頬、胸、肩、腹―――体の各部にわたり、急所だろうが何だろうが、縦横無尽に打撃を入れる。
最後には回し蹴りで、側頭部に叩き込む。
拳を入れられて、すでに体勢が崩れていたところの蹴りなので、容赦なく地面に倒れ伏せる。
だが、ダウンなんて誰が許す?
俺は奴の触覚に握りしめて無理やり立ち上がらせた。
「お前たちのグループ―――『DeadHell』、それが出した被害数は俺が確認しただけでも796件。活動期間2年ほどでこの数。笑えるほどの愚劣だな。内訳は窃盗654件、強姦42件、殺人38件、その他犯罪62件。まだまだ余罪がありそうだが、もう調べるのが面倒だ」
俺は被害者の声は一つも聞いていない。
しかし、調べただけでこの数。それを助かったと思う人物がいたとしても、その反対に恨みつらみを重ねている者も多いはずだ。
こんなクズに生きてる価値はない。
―――皆殺しで問題ないだろ。
そう、皆殺し。
すべての人間が納得する形はそれしかないんだよ。
民意だからいい。そういう考えが危険?
違うな。
介在する余地のないほどの正義感が集団の悪意を招くだけ。
復讐の民意は、必ず正解を生み出すさ。
なんせ、人は本能で争い合う生きもの―――そういうものだから。
「覚悟はいいか?」
「げほっ、うげっ……」
返答はない。まあ、待つ気もない。
俺は奴の胸を貫くつもりで足を振り上げる。
そして、なんの容赦なく振り下ろし―――
「まだだ……まだ終わらない!」
「っ!?」
―――防がれた。
しかも、奴の胸が赤く発光している。
まさか、着火した?
いや、そんなはずはない。この男にそれだけのポテンシャルがあるわけは―――
「まだだ―――俺は俺のために!すべてを!」
「しゃらくさい!」
俺は奴が完全に進化する前に決めようと、左手を前に出して心臓を掴もうとする。
だが、奴のほうが一手早かった。
彼の目が光り、鮮烈な力が俺を駆け抜ける。
―――まずい
俺は即座に後退し、落ちていた剣を拾う。
違和感が走っているのは―――いや、違う。違和感じゃない。この感覚は簡単にわかる。
左手が発熱している。
つまり、奴の能力が俺に浸食を始めている。
理解よりも前に振り上げていた剣を即座に使って、左手を斬り落とす。
俺の腕から離れたそれが地面に接地した瞬間に爆発する。
さすがにこの至近距離での爆発は防げない。
なので、俺の体は浮き上がり、偶然にも生徒会室へと突っ込んでしまった。
バリィィン!
「きゃああああ!?」
「いちいち喚くな。うるさい」
おそらく同学年である女子が叫んだ。
少し周りを見ると、すまし顔で俺を見る女に、会長と美晴。
叫ぶなとは言ったが、あれが一般人の通常の反応のはずだが。
まあいいか。こいつらは普通じゃないってことで。
そう思っていると会長が俺に駆け寄ってくる。が―――
「そ、そのだいじょ―――」
「ハジメ、大丈夫!?」
それよりも早く美晴が割り込んできた。
不躾に俺の体を触るが、すでに左腕は生やしている。もう彼女が心配する場所はない。
だが、しくじったな。
奴の動向を見守るべきではなかった。
進化したか―――
―――レベル5『コア』へと




