side02 一緒ではない
「創造神……?なに言ってるんだ?」
彼女はそう疑問を口にするが、事実はそれ以上の言葉では解説はできない。
一言で言い表すと、というだけだが。
「だけど、百歩譲ってあたしが実験体だとして、お前も実験体なんだろ―――じゃあ、なんで戦うんだ」
「君たちがコアに達しないで、奴らにエネルギーを与え続けるだけの炉と化してしまっているからだ。僕たちはそれを許さないし、僕たちの目的の邪魔になる。そんなものは排除するしかない」
「奴ら……?本当に何を言ってるのかわからないな」
「僕はそれよりも驚きのほうが勝つ」
「あ……?」
「君は自分が実験体だと思えるのか―――たかだか百歩ごときで」
「っ!?―――殺す!」
そう言って彼女は僕に向けて手をかざしてくる。
しかし、僕も対応して先ほど変形させた銃―――ショットガンを構えて、即座に撃ち放った。
解き放たれた弾丸は放射状に広がるが、近距離にいる彼女の腹部を全段が捉えて、もう一度体を浮き上がらせる。
そこに追撃を叩き込む。
もう一度引き金を引き、銃を空中に置く。
そのままそれは落下してしまうが、今の僕には必要ない。
体がくの字に曲がったまま上昇を続けている彼女の体を掴んで、一気に僕の体を回転させて振り向いた。その時に発生するエネルギーのまま、彼女の体を地面に叩きつけた。
土を陥没させるほどの威力でたたきつけられた板倉芙美は、どうにかそれを我慢しようと悶絶する。
しかし、その暇すらも僕は与えない。
仰向けで倒れている彼女の顔面を鷲掴みにして、後頭部を接地させたまま走り出す。
直線状の溝のような穴を作りながら、彼女の頭を削りつつ近くの樹木に叩きつけた。
それで止まらずに、背中に木の幹にこすりつけながら立ち上がらせる。
「ぐっ……は、はなせっ!」
「君のすべてを否定する―――僕にそんな意図はない。ただ君が実験体として生きてきたのだという事実を突きつけているだけだよ」
「それ、でも―――あたしは、雄馬のことが……」
「何度でも言おう。神代雄馬という男は存在しない。世界調律を起こした僕たちが一番理解している」
「そういうことじゃ、ないっ!あたしは雄馬が好きだった。それを!その気持ちを!否定だけは―――させない!」
「そうか……」
これ以上は聞く必要もない。
彼女は、進化できない。
僕は、彼女の腹部に銃口を押し当て、そのまま射撃した。
変形させた後の物―――ショットガンより連射速度が遅いなんてこともなく、弾数が少ない分、精密度が高い。
まあ、押し当てているから射撃精度などは関係ない。
ガガガ、と何度も着火しながら破裂する音が響き、彼女の腹部に攻撃を叩き込み続ける。
後ろにのけぞろうにも木の幹が邪魔をして、彼女はうまく体を動かすことができない。そのために、受けているダメージをそのまま感じることしかできないのだろう。
「かはっ、ぐっ……あああ!」
「無駄だよ。僕がその力に触れていいる限り、君は力の行使ができない。言っただろう?僕は君たちの創造神だ」
「なにが、創造だ。お前なんか、悪魔だ」
「まあ、好きに呼びたまえ。まあ、君の行いはそんな悪魔よりよっぽど薄汚れているけどね」
「どういう、ことだ」
質問を返してきたところで、僕も彼女を解放する。
これ以上の攻撃はあまり効果がないようだからね。なんせ、彼女は幾度かの攻撃のうちに無傷にするほどではないが、対処法を見つけた。
ゆえにこれ以上は、彼女を苦しめるだけで、大した意味はない。
「言葉通りさ。逆に聞くけど、僕が言ったことに嘘があったかい?
まあいい。君が殺した雨宮柚葉の一派―――正確には、卒業済みの男子生徒たちについてだが、神代雄馬が存在しなかった、ということは君に殺されるいわれはないはず」
「そうじゃなくても、花音をいじめたことに―――」
「君はそれを自身の正当化のために使っているに過ぎない。なんせ、彼女たちは追い詰めはしたものの殺しはしていない」
「だけど、虐めの正当化は―――」
「殺しの正当化も同様だろう?今回の一件、唯一殺しが許されたのは、彼女―――雨宮柚葉だ」
「は……?」
疑問符を浮かべる彼女に、僕はつい先日の一件の話を始める。
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事は数週間前
とある暴力団の事務所にいた構成員全員が死亡する事件があった。
リアクト関係の事件であったがために、あらゆる捜査が打ち切られてしまい、色々な事実がわからなくなっている。ちなみに、その事務所となっていた建物は解体されている。
僕もリアクト関連ということで、いくつか調べてみたのだが、不可解なことに事務所から爆弾などの兵器が消失していた。
しかし、それは先刻の戦闘で雨宮柚葉が使用したことで、盗んだということは発覚した。
確かに建物の解体時に押収された武器等は多岐にわたる。
ライフルやショットガンなどの銃器。爆弾や催涙ガスなどの爆発物。
おおよそ日本で必要にならないものばかり。
高天の暴力団は武装勢力として、仕出かす可能性が高かった。
状況的に見てもであるし、雨宮柚葉本人がなにかを見た可能性があった。
彼女が武器を調達したのは、板倉芙美を迎え撃つため。その過程でたまたま見つけたもの。
後は突発的だったのだろう。彼女の暴走しかけていた理性と残っていた薄い理性が―――殺したいという衝動的な本能とどうにかしないと、という思いが奇跡的にかみ合ってしまった。
故の結果だ。
僕はリアクトを使った時点で悪だと考えているが、この行い自体を悪だとは思わない。
それどころか、正義と称えられることでもあるだろう。
それに比べ、板倉芙美はどうか―――
「なあ、どう思う?」
「うるさい……」
「そして、彼女は絶望に襲われたさ。なんせ、その暴力団に武器をそろえるための資金を与えていたのは、高天市なのだから。殺しても殺してもキリがない。自分の世界を―――残った自分の恒久的に守るために、殺すしかないのに」
「それでもあたしは―――」
「君は、自己満足で殺した。迷いもなく―――いや、そこはどうでもいいが、僕には理解ができない。法は守るべきというのが、この世界考え方ではないのかい?」
「お前も人のこと―――」
「僕の力は根本的に君たちとは違う。一緒にされるなんて心外だね」




