side01 断絶
俺が顎を打ち抜いたことで、相手から鈍い音を出させる。
舌を出していたらかみちぎっていたであろう力で殴ったので、それなりの勢いで相手の首は後方に振りぬかれる。
その勢いに押されたまま、奴の体も後方に傾くものの、うまくバク転を決めて体勢を立て直してくる。
「爆破しか手札はないのか?だとするのなら、お前は俺には勝てない。まあ、そうであろうがなかろうが、結果は変わらないが」
「うるさいなあ……こういうのは準備だろうが。お前に能力が通じないのなんかわかり切ってることなんだから」
「なにをしてくるかは知らないが、やる前に片づけてしまえば終わりだ」
少し煽りを込めて、攻撃を誘ってみるものの、手札を持っていることは確かなのか特に動きはない。
それほど自信があるのか、増長しているのか。
色々思考を回してみるが、戦う方が早い。
そういうわけなので、俺は右胸部の外殻を剥がす。
はがされたそれは、いつも使用するものよりも面積が大きい。つまり、刀剣にするには不向きな形。
だが、俺の武器は決して剣だけではない。
はがした外殻の面積を広げて、自身の体を覆えるほどのに変形させて構えを取る。
発生させた”盾”を武器にし、相手の動きを見る。
「なんだ、剣じゃないのか?」
「斬るだけが、刺すだけが戦いじゃない。むしろ、手を変え、品を変え―――それが戦いだ。お前のように力に頼り切る行動は負けを招くのみだ」
そう言って俺は大地を力の限り踏みしめて、前へ駆け出す。
盾を前に構えながら突進して、それ越しに衝撃を与える。
月野はそれに対応して盾を爆破しようとするが、爆破せず、肉薄している状態から離脱することができない。
「なっ!?なんで爆発しない!さっきの剣はできたじゃないか!」
「なにを言っている?俺は盾を手放していない。こいつは俺の体だ」
俺の体で生成し、俺がまだ触れている。
ただ伸びているだけの、俺の腕―――俺の武器は、俺の体。誰の支配も受け付けない。
肉薄した状態で、盾の下側蹴り上げて回転させる。
その力は盾にしっかりと触れている奴の体にも伝わる。つまり、盾の回転運動に合わせて、奴の体も回転を始める。
ほんの数瞬の出来事であれど、完璧に態勢を崩された相手の隙は、素人でも簡単に一撃を入れられるレベルの物。
素人が一撃を入れられるのであれば、俺は十でも二十でも攻撃を決められる。
体勢を崩しているところに、俺は盾を持ち方を変えた。
攻撃を防ぐために、相手を制圧するための持ち方から、上部を両手で持ち、振り下ろすために思いっきり持ち上げる。
振り下ろされたことにより、月野の体はさらに地面に叩きつけられる結果を招く。
「かはっ!?」
「休む暇があると思うな」
そして、俺は前述の通りに攻撃のラッシュを始める。
倒れこんでいるところにマウントポジションを取って、逃げられないような状況で拳を振り下ろし続ける。
なんども拳を振りぬき、頬を捉え、右へ左へと顔を震わせる。
しかし、それだけの攻撃をしても諦めの色はない。
「腐っても、不良たちの中で頭張れるだけのことはあるってか?」
「そうだなっ!」
月野はそう絶叫し、奴の触れている地面を爆散させる。
さすがにそんなことをされれば、俺とてその勢いに飲まれる。
マウントポジションはおろか、近くにいることすら不可能になり、股も距離をとられる。
まあ、俺に力が使えないことがわかっているのなら、それを回避や緊急行動にしか使いづらいのはよくわかるが、少し芸がない。
さすがに見飽きてきた。
「さっきも言ったけど、芸がないな」
「黙っとけ。もう準備は終わった」
そう言うと、月野は指を鳴らす。と、その瞬間、俺の背後が爆発した。
爆風も、何もかも俺に当たらない。だから、振り返るまでもなく前にのみ集中すればいい。ただのようどうだと、そう判断した。
だが、それは間違いだった。
一瞬、そう一瞬のうちに展開は決まっていた。
俺が周りが暗くなったことに気づいて、それに対応しきるまでに時間がなかった。
起こったことの結果だけを伝えるなら、俺は瓦礫に埋められた。
おそらく先ほどの爆発は校舎の一部を破砕するためのものだったのだろう。
いつ、そんなものを仕込んだ?あの口ぶりから、事前にそういったことができるようにしていたという感じではない。
どうにか次の一手を考えるが、それもすぐに理解できることになる。
なんせ、俺を埋めている瓦礫が熱を持ち始めたのだから。
―――二段目の爆発だ。
さすがにまずい。地面以外のすべての方向から爆破の衝撃が来る。さすがに土の中に逃げ道を作るしかない。
が、そう思ったときには地面すらも熱を持っていた。
つまり俺は、爆弾にくくりつけられているのと同じような状態。
逃げ道がない。
どうする?
さすがにこんなものを食らえば、次の瞬間に立っているのかもわからない。
胸部の外殻を使って防ごうにも全身を覆うほどに広げるのは難しい。せめて、先ほど使わずに、両方の胸部を防御に回せていれば、簡単に対策はできた。
俺に今残っている武器は、剣しかない。
先ほど武器は剣だけじゃないと言った矢先にこれだ。
格好付かないな。
まあいい。一か八かだ。
「断絶」
その瞬間、俺を包む瓦礫と大地は爆発を起こした。
「ふっ、ここまでやれば死んだだろ」
この現象にさすがに自信をもってそうだと言える月野は、余裕そうに言う。
しかし、奴は気付かない。
―――自身の左腕がないことに。
「あれ……?」
そして、自分の腕に違和感を覚えた月野がようやくそれを認識したことによって、忘れていたかのように血を吹き出し始める。
「え、は……?」
「ずいぶんと、反応が遅いな」
「お、お前、死んだんじゃ……」
「たしかに食らえば危ない。そして、脱出の手段も残りひとつまで封じられた。すごいさ。俺をここまで追い詰めることができるのは。俺に力を使わせるまでに達したリアクトは過去何例もない。本当にすごいことだ。だけどな―――」
ああ、本当に心から称賛する。
心から―――
「―――死ぬと思わせるくらいじゃ、生ぬるいな。今のお前みたいに死ぬことすら気づけない。そんな地獄に連れていってやる」
ああ、本当の恐怖とは不幸とは、なにも知覚できないこと
「人知超越体コア、第一号『破壊神』―――零陵一
なぜおまえが俺に勝てないか教えてやる
俺がお前たちの力の始祖だからだ」




