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Re;Birth  作者: 波多見錘
その瞳に真実を

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side01 想われ人

 見られていた。とまでは思わない。

 よく考えれば可能性としては考えられた。


 彼女としては、この場で自分の理解ではおおよそ呑み込めないようなことが起きた。


 たとえ恐怖の真ん中にあるものでも心のどこかに残ってしまう。ゆえに来てしまったのだろう。

 しかも、その場所で爆発音が起きている。気になって入ってしまったのだろう。


 まあ、彼女が声をかけるまでに戦闘が終了したのは幸運だった。

 巻き込んで怪我でもされたら困るからな。


 「なあ、零陵―――教えてくれ。なんなんだ、あれは」

 「自分の恐怖で逃げ出したんだ。知る権利があると思っているのか?」

 「それは……だが、うちの生徒が」

 「お前が生徒会長であっても、その権限に限界はある。俺はあの学校に執着するつもりはない。別にほかの学校でもいいんだ。会長だからと、関与しようとするのはいただけない」

 「ぐ……正論ではある。だが、私とてお前が心配なんだ」

 「……これ以上話すことはない」


 話を切り上げて、彼女の脇を通り抜けようとする。しかし、すり抜け際に手をつかまれた。


 ぎゅっと握られる感覚を覚えた瞬間、彼女はなにを思ったのか即座にそれを離した。

 なにをしたいのかわからないが、表情には怯えのような驚きのようなものが浮かんでいる。なにを思ってそんな表情をするのかわからないが、早々に退散したほうがいいだろう。


 「そんな、まさか……」


 後ろの方からか弱い呟きが聞こえてくるが、俺は気にせずにその場を去っていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 彼、零陵一が例の廃工場を去った後、私は一人でその場に膝をついていた。

 彼が怖かった。それもある。あんな化け物の姿になって戦って、殺して―――怖くないわけがない。


 だが、同時にどうしようもないほどの彼が心配なのだ。


 あんなものに手を伸ばして、あれが危険なものだとわかっているはず。

 その危険性を説いて、他の生徒のスマホを破壊したという話もある。それくらい危険なものだと認知しているはずなのだ。


 だというのに、どうして。


 だが、今の私はまた違う感情に支配されている。

 今の私を満ちているのは、驚きの一言に尽きる。


 なんせ、今の今まで思い出すことはあれど、不意に記憶がフラッシュバックするような経験がなかったからだ。


 しかも、その記憶は幼い頃に一緒に過ごした男子の記憶。

 6歳ごろまで妹とともに一緒に遊んでいた男子―――


 「雄真……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「いつか奈央姉ちゃんと結婚する!」


 そう大きな声で宣言したのは、年下の男の子だった。

 身長は私よりも頭一つ分くらい低く、まだ成長期前だからか小柄という印象だった。


 しかし、なんだかはきはきとしゃべることが多く、体格以上に大きく見えていた。

 私もそん彼に小さい頃ながら、心惹かれていた。


 だから、先の宣言もやぶさかではなかった。

 ただ、一つ懸念点を挙げるのだとすれば、私の妹だった。


 一つ年下の妹は、彼と同学年で距離も私より近かった。

 そんな彼女は彼に選ばれなかった。当時の私は、ものすごく悩んだ。このまま一緒になっていいのか。それこそ、子供ながらに結婚していいのかまで。


 だが、事件が起きた。

 いや、事件かどうかすらもわからない。


 ある日突然、彼が行方不明になった。


 私が6歳で、彼が5歳のころだっただろうか。

 親戚の結婚式に行くと残した後、彼が帰ってこなかった。


 最初のころは彼が帰ってこないのを心配し、母親に何度も何度もいつ帰ってくるのかを聞いた。知ってるはずがないのに、母には何度も苦しい顔で明日にはきっと、と言わせ続けてしまった。

 1日、また1日と過ぎていき、私も彼は帰ってこないと察せてしまった。


 だが、妹はそうもいかなかった。

 それからなんだかふさぎ込んだように読書に入り浸り、明るかった表情が、陰鬱な印象を持たせるようになってしまった。幸い、私がこういう性格だったおかげか、彼女はいじめられることはなかったが、いつでも壊れてしまいそうな、そんな不安に駆られるものだった。


 妹が暗くなり、いつしか母は妹をよく見るようになった。決して私を蔑ろにしたということはないが、それでも寂しさはあった。


 そんな私は、ついぞ正しく厳格にという正確に育った。

 明確にそうなった理由も記憶もないが、強いて言えば、しっかりして家族を助けなければという意識があったのだろう。


 そうして強くあり続けようとする私に父は、優しく接してくれた。

 両親の経営する喫茶店にて、よくコーヒーを飲ませてくれる。今でもそうだ。


 テイスティングかなにかの大会に優勝したらしく、実力は折り紙付き。だが、最近はそうとも言えない。


 私に、もう一つの不幸が襲った。


 2年前、突然妹と母が行方不明になったのだ。

 そのショックもあってか、父のコーヒーの腕が大きく下がってしまった。


 無理もない。

 あれほど繊細な味を出せるコーヒーを作るのだ。ちょっとした衝撃で崩れてしまうもの。


 最近になって出てくるコーヒーはただ苦いだけで、おいしくない。

 ただ、それは本人もわかっているようなので、毎日どうにかごまかしている。


 中学も卒業間近だった私なら、なんとか乗り切れたが、やはりつらいものもある。

 なんとか記憶の片隅に追いやれた好きな人のことも、思い出してしまう出来事。しかも、警察の捜索は進展せず、実質取り下げのような状態になっている。

 もう1年以上もだ。


 そんなときに出会ったのが、零陵一という男。

 名前も、性格も、雰囲気も―――思い出が美化されていたとしても、似ても似つかない。そんな男。


 私が彼が気になって仕方がない。


 彼と話すたびに、思い出されるあの時の気持ち―――同級生のモテ男にもなびかなかったこの気持ちが、彼に揺れ動く。

 だが、彼は化け物だった。


 人間の皮をかぶった化け物だった。


 それがどうしようもなく怖い。そんな化け物が、当然のことのように私の手を取ろうとしたのが。

 だけど、彼のことが気になる。だから、九段の廃工場の近くにまで来た。


 すると、爆発音がして、急いで中に入ると―――彼がいた。


 そう、化け物の彼が。

 声は出た。だが、彼に拒絶される。


 もうどうすればいいのかわからない。


 そんな私は思い出の想い人に助けを求めてしまった。

まあ一応

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