side01 いらぬものの削除
学校はしばらく休校という措置が取られた。
教員が一人死亡してしまっているのだから、当たり前と言えばそうなのだが。
警察の事件としての扱いはなく、うちの高校の事件に関してはネットで調べても引っかからなくなった。
SNSも然り。そう言った投稿は順次削除された。
削除されたことにより、事件を知っているのは、身内だけになってしまっているのが現状だ。
俺のほうに特に変わりはない。
強いてあげるとするならば―――
「うーん、やっぱりうちの学校のニュースは消されてるっぽいね」
「はぁ……」
美晴が俺の家に住み着き始めたことだろうな。
正確には、毎日やってきては入り浸っている。しかも、こいつはしれっと荷物の送り先に家の住所を登録したらしく、身の覚えのない荷物がしょっちゅう届くようになってしまった。
「なによ。ため息なんかして」
「するだろ。そもそも、俺はこの家に入ることを許可した覚えはないぞ?」
「いーじゃん。別に減るもんもないし。ていうか、この家に冷蔵庫無いの?飲み物が冷やせないんだけど―」
「あるわけねえだろ。必要ないのに、そんなもの」
「えー、ジュースとか冷えたのがいいじゃん」
「スーパーでもコンビニでも探せばあるだろ。自分で買って来いよ」
「えー!買ってきてよー!」
「ああ、図々しい!嫌なら帰れ!」
俺はそう言って玄関を指さすが、美晴はその場を動かない。
それどころか、俺に反抗するように後ろから抱きしめてくる。
「いいでしょ。私たちは同じ秘密を共有した関係なんだから」
「俺の返信後の姿を見ただけでごちゃごちゃうるさいな」
「でも、リアクトってやつのことを知ってるのも私だけでしょ?」
「いや、わからないぞ。俺が関与しなくても、それに気づく奴は気づく。ただ、名を知らぬだけでな」
「むぅ……いつまでもパソコン見てないで相手してよ」
「うっさいな」
「せっかく私が来てるのに画面とにらめっこしててつまんない!」
ちっ、鬱陶しい。
あの時に、何も教えなければよかった。
それか、少しでも入れ込むんじゃなかった。そうすれば、こいつも会長のように悲鳴を上げながら逃げてくれただろう。
そもそも、俺がパソコンを見ているのは次の情報を見つけるためだ。
正確には、もうほとんど犯人は割れている。だが、かなり手の出しにくいところにいる。
そうだな、すでに俺を見てしまったものの近くにいる。というのが正解かな。
下手に手を出しにくい。完全に尻尾を見せたところで、殺すか。それとも、闇討ちで完全にバレる前に殺すか。
まあ、少なくとも何人も犠牲にしてもよいという考え方のクズなのだから、殺さなければいけないというのに変わりはない。
リアクトに変身すれば性格はより危険なものになる。
普段から危険思想を持っているような人物であれば、それは殺戮者になってもおかしくはない。
あまり長時間野放しにするのもよくないのが現状だ。
だが、それよりも前にやることをやらなくては。
俺は、スッと立ち上がり、自宅マンションから出た。
美晴は、ナチュラルについてきて、隣をルンルンで歩いている。
「どこに行くの?」
「どこでもいいだろ」
「教えてよー!」
「先刻の一件でトラウマを持った女生徒のところに行く」
「なんで?」
「アフターケアだ。余計なことを覚えている意味はないし、どこかでその影響が来ても困るからな」
歩いて20分ほど経過すると、目的地に着いた。
閑静な住宅街にある何の変哲もない一軒家。はたから見れば、この家の子供がトラウマを持ってしまい、ふさぎ込んでいるなどということはわからないだろう。
しかし、俺たちがその家の前に着いたくらいのタイミングで、中から出てくる人たちがいた。
「ごめんなさいね、あの子、あれから部屋にも入れてくれないのよ」
「いえ、由美ちゃん―――私たちも立ち直るまで頑張ります」
「ありがとうね。みんな、無理しないでね」
数人の女生徒とおそらくこの家の母親と該当するであろう人物がしゃべっていた。
「一、ここって」
「あの日、教職の死体をみた女生徒の家だ。情報操作によって、あの事件をろくに知っている者は多くないが、こういう影響はある。本当は、こんなことに力を使うのは嫌なんだけどな。やり口があいつらと同じだから」
「あいつら?」
「ここで待ってろ。さっさと片付けて戻ってくる」
「あれ?私のことちゃんと気遣ってくれるんだ?」
「ちっ、さっさと帰ってもいいぞ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が立ち入った部屋の中は、カーテンが閉められていて薄暗かった。
外は日中で明るいというのに、陰鬱な雰囲気で、たとえ元気であったとしてもきついものがあるだろう。
俺は、部屋のカーテンを開けて光が入るようにする。
それと同時に、部屋が明るくなり、その中にいた女子が反応を示した。
「誰……?」
誰、と聞かれても少し困る。
言ってもわからないだろうし、そもそも、逆のパターンでもある。俺はこいつを知らない。
まあ、目的を達成すれば、こいつも俺のことを忘れるだろう。
「お母さん?―――ノックくらいしてよ……」
「俺はお前の母親ではない」
「……っ!?だ、誰!おか、お母さん!」
「叫んでも無駄だ。一時的ではあるが、お前の母親は意識を手放している」
俺はすでにこの家にいた人間―――つまり、この女子の母親を気絶させてからきている。無論、背後から一撃で決めたため、恐怖は与えていない。
まあ、女子に対してもそれができればいいのだが。それがなかなか難しい。
そう考えながらも、俺は右手で彼女の頭をわしづかみにする。
「はぁ……」
「い、痛い!なに、なにするの!?―――まさか、私を殺しに?いや、いやあああ!」
「少し静かにしろ。つまらんことに集中力をそがれたくない。それに―――」
彼女の頭に当てられている掌の中に力を込めてていく。
それを感知できているわけではないが、何かしらの危機が迫っていることは肌で感じているのか、彼女はじたばたと暴れる。
だが、抵抗は無意味だ。
「辛く、苦しいなら、もう忘れてしまえ」
「あっ……」
俺の言葉とともに女子はその場に倒れこむ。
これで終わりだ。はたから見たら、シャレにならない現場だな。まあ、もう手遅れか。なにもかも




