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32話 魔界最強の戦士たち

「……はっ?」


 そんなの詐欺だろ、あんなに強いんだぞ。

 一体倒せるかどうかも怪しい相手だというのに、あんなのが複数いるって?


 お、落ち着けオレ。自棄を起こすな。

 よくよく二人の会話を思い出してみれば、確かにそうだ。

 唯一神とかいうのを倒せとは言われてないが、オレたちは「天使を倒せ」と頼まれたはずだ。


 だがその天使が何体かは聞いていない。

 大輔も聞いていないし、リトちゃんも言っていない。


 確かに。

 

 冷静になって考えてみれば、至極当然の結論だった。

 でも……。


「あんなの、何体倒せばいいっていうんだよ……」

「全部だろ。数の指定はされなかったんだ。

安請け合いするからだぞ」


 ああ、安請け合いするなって、そういうことか。


「……そりゃ、勝手に受けたのは悪かった……。

けど、全部って、何体だよ?」

「俺が知るわけないだろう。

何千、何万、何十万かもしれない」


 何十万!?

 一体でもあんなにむちゃくちゃだったのに!


 今更ながら凄く後悔していた。


「む、無理だ、そんなの!」

「ああ、無理だ。だが受けた以上、やるしかない」


 オレが……調子に乗って受けたばっかりに。


「なぁ、ここってさ」

「?」


「"はずれ"の異世界?」

「……ああ。"大外れ”の部類だな」


 やっぱり、か。


「そんなに落ち込むなよ。召喚された時点で、クエストは強制なんだから抗えない。

だが、逆に送還条件さえ満たせば俺たちは帰れる。

その送還条件達成までの道のりを緩くしたかったから、最初は断ってただけだから……悪あがきみたいなものさ」


 大輔にしては饒舌に語っている。

 ああ、こいつなりに慰めてくれてるのか。


「大輔……オレ、この世界で生きていく自信ないわ……」

「俺もない」


 即答。

 こいつの考えてること、よくわからなくなってきた。

 どうやって送還条件を満たそうって言うんだ。


「……もう帰りてぇよ」

「わかる。異世界にくる度に、いつもそう思ってる」


 いつもの大輔の調子だ。

 大学で、変な絡み方して、ぼーっとしてる、いつもの大輔の調子。

 その様子に、安心しているオレがいた。


「俺な。10歳の時、やべえやつに召喚されたことがあるんだ」

「えっ?」


「目的は、異世界人の人体実験」

「……はっ?」


 聞き捨てならない単語が聞こえてきた。

 だからこいつは、こんなに強いのか?


「来る日も来る日も、実験されたよ。

何かを注射されたり、身体を刻まれたり、脳をいじくられたり」


 なんで。

 なんで今そんな凄絶な話をするんだ。


「一生続く地獄だと思った。送還条件もわからないし、何を聞いても言葉は通じないし。

来る日も来る日も痛みに耐え、絶望しては泣き叫ぶ日々」

「……」


「で、もう限界、死ぬって思った時、送還が始まったんだ。

戻ってみれば、いじくられた身体は元通り」


 そうか、スキルや魔法が引き継げないから、身体の状態も引き継げない、いや、引き継がずに済んだのか。


「たった二週間だったけど、真の地獄だったよ。

そこに比べたら、ここは自由意志で戦うことができる。まだ有情だよ」


 もし、オレがそんな思いしたら……異世界、嫌になるだろうな。

 ああ、そうか。今まさにそんな思いをしてるんだ。


 もう、帰りてーよ。


「もう、帰りてーよ」

「だろうな」


 声に出しちまった。

 仕方ないだろ、救世主だって言われたのに、特にスキルもチートもないし、相手はむちゃくちゃ強いし、数もいるかもしれないって言うし。

 こんなのオレの望んだ異世界転移じゃねーよ。


「帰るには、送還条件を満たす必要がある」


 何度も聞いたよ。


「そのうちのひとつ、天使の討伐。

これは割と無理だ」


 ああ、そうだよ、無理だよ、あんなの。


「もうひとつ……召喚主、この場合はリトだな。

あいつに頼み込んで、送還してもらう方法がある」

「なっ!?」


 そ、そんな簡単な方法があるのか!

 それなら帰れる!!


「す、すぐ行こう!」

「いや、天使に見つからないようにしないと」

「そんなんもういいじゃねーか、早く!」


 帰れる! 帰れる!



 * * *



 膝をつき、こうべを垂れていた。

 二人共、だ。


 一人はオレ。

 もう一人は……。


「もうしわけございません。

わたしたちも、生き残れるかどうか、ぎりぎりで……。

今、救世主さまがたをお帰ししてしまったら、わたしたちはみんな……」


 リトちゃんだった。


 言ってる事はわかる。

 この子だって必死だ。

 オレ以上に、死が間近に迫っている子なんだ。


 だけど、オレはこんな世界で死にたくない、死にたくねーよ……。


「まあ、予想はしてたが、無理だったな」


 くっ! こいつ!!

 知ってて希望を持たせたのか!!


「大輔ェ!」


 大輔の制服の首を掴み、壁に押し付ける。


「お前! なんでそんなに冷静なんだよ!」

「10歳の頃の話、しただろ。

あれがあったから、多分、俺の心は死んでるんだ」

「くうっ……」


 希望を持たされて、絶望させられるって、なんて残酷なんだ。


 いや、違う、異世界に来たがったのはオレだ、オレ自身だ。

 こんなの、ただの八つ当たりでしかない。


「あ、あの……」


 いつかのように、リトちゃんがおずおずと言葉を紡ぐ。


「救世主さまがたでも太刀打ちできなかったのですか?」

「はい」


 大輔が答える。

 オレに答える気力はない。


「そんな……」

「召喚は禁呪なんでしょう?

役立たずが来る可能性を考えなかったんですか?」


 ああ、やめろよそんな言い方、真の役立たずはオレだけなんだから。


「そんな、役立たずなんて……。

ですが、魔界が滅ぶ可能性もあるという禁呪だと、遥か昔、天界より伝わったものとされています」

「天界から……? 天界って、あの天使たちの拠点でしょう。

よくそんなものを使う気になりましたね」


「わらにもすがる思いだったんです。

もう、わたしたちに、のこされた選択肢は多くありません」


 重い雰囲気が場を支配する。


「そうですか。しかし残念ながら、我々二人がかりで天使一人も仕留められませんでした。

何か有効な手立てはありませんか?」


 すごいな、大輔のやつ。

 話をしながら、何か譲歩させようとしている。

 大丈夫、こいつに任せれば、帰れる、帰れるはずだ……。


「それでは、拠点の守りについてもらっていた、現魔界最強格の三人をおつれください」

「強引な攻めに出るのですね」

「そうなります」


 大輔は送還条件を何とか満たそうとしている。

 オレは喚いて叫んで、迷惑をかけただけだ。


「我々の世界の言葉に、虎穴に入らずんば虎子を得ずという言葉があります。

大きな成果を得ようとするならば、危険を冒さなければならない、という意味です」


 そうだ。リスクをとらなければ、リターンは得られない。


「今のわたしたちに、ぴったりの言葉ですね」


 もう一度、やってみよう。


「わかった、リトちゃん。

その三人と一緒に、天使を倒してくるよ」

「ショウジさん……どうか、どうか、お願いします」


 * * *


 リトちゃんが呼んでくれた三人は、現在の魔界では最強格とのこと。

 ただし、あくまで「現在の魔界」の話であり、元々最強だった戦士たちは皆、既に戦死したとのことだ。


「彼女らには、この拠点のまもりをお願いしていました。

しょうかいします。暗黒のモント、烈風のシャアト、劫火のギラファト」


 リトちゃんの紹介で姿を現した三人は、浅黒い肌の美人のおねーさんたちだった。

 魔界最強格で美人の三人と一緒に戦えるなら、何も怖くないさ。

 立ち上がれ頌路(ショウジ)。まだ終わっちゃいねー。


「暗黒のモントです。特に闇が得意というわけではありませんが、気配を消しての不意打ちが得意です」


 銀髪でおかっぱ頭のおねーさん、暗黒のモントさんは、リトちゃんが大きくなったらこうなるのかなってぐらいの美人さんだ。

 若干胸の露出した紫色のスケイルメイルがセクシーだぜ。


「烈風のシャアトです。私も風を操るのはそんなに得意ではありませんが、突撃が褒められてこの二つ名を頂戴いたしました」


 こっちはセミロングの黒髪をリボンで結ってるのが特徴のおねーさんだな。

 で、紫色のスケイルメイルか。標準装備なのかな?


「劫火のギラファト! この中では一番新参だけど、私は二つ名の通り劫火を操る事ができるよ! あと、武器戦闘は苦手です」


 他二人に比べ、軽妙な口調が特徴的な、ウェーブのかかったロングヘア金髪おねーさん。もちろん紫色のスケイルメイルを身に着けている。

 少し自信がなさそうなところも、庇護欲をそそる。


 彼女たちが、現在の魔界最強格なんだよな。

 頼れるぜ。


「どうか、お願いします。

全ては、救世主さまがたに……」


 リトちゃんの悲痛な願いがオレの心に再び火を点ける。


「任せとけ!」



 だが、悲劇は始まったばかりだったのだ……。


 

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