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29話 幕間:友人

「──クソだーーっ!!」


 まっ昼間。絶賛講義中である校舎内校庭にて。

 異世界より帰還せし男子生徒一名、罵声を叫ぶ──。


 * * *


 おーっす、みんな。

 この入りも久しぶりだなぁ。


 どうした? 付け合わせの卯の花みたいな顔して。

 オレだよ──。


 大輔の友人、木村(キムラ) 頌路(ショウジ)だよーー!!


「デェェーーーーン!!」

「うぜぇ」


 相変わらずローテンションな大輔。

 まあ、勉強してなかったら不安になる気持ちはわからんでもないがな。


 約三か月の失踪。

 

「今回は長かったな、前期テスト追試だぞ」

「マジかよ、ちっくしょう。働きたくない」


 なんだなんだ、こいつちょっと見ない間に荒んでしまったな。

 まあ、この前みたいに憔悴して泣いちゃうよりはマシな感じだけど。

 良い異世界だったのかな?


「今回元気じゃねーか、良い異世界だったのか?」

頌路(ショウジ)


 オレの何気ない一言に、大輔は真面目な顔をしてオレの肩をがっしり掴む。

 待って、オレそっちの趣味はないわ。


「良い異世界なんかない!!

異世界はクソだ!!」


 ……。


 一言で吐き捨てられてしまった。


 * * *


 ──超常現象研究会にて。


「大輔よー、異世界には当たりはずれがあるのかもしれないけどさー。

当たりもあるんだろ?」

「ない」


「いやいや、今回お前どっちかって言うと残りたそうな顔して帰ってきてたぞ」

「だから、残りたいと思っても強制送還されるんだって」


「やっぱり残りたい程、良い世界だったんじゃんか!」

頌路(ショウジ)……お前どうしてそんなに異世界に行きたいんだ」


「そりゃあな、日本は平和だよ? だけど、刺激がないじゃん。

オレは異世界で異能を使ってバリバリ活躍したいわけよ」

「異能が使える異世界とは限らないだろ。

刺激が欲しけりゃ戦場カメラマンにでもなって紛争地域に行けばいい」


「イヤー、オレ思うわけ。ゆえにオレあり」

「なんだよそれ」


「このまま年取ってさ、社会人になって、毎日満員電車に揺られて、会社員とかになって、他人と競争したり、人のわがまま聞いたりしながら、つまんねー生活を送りたくないわけよ」

「お前が言ってるの、満員電車以外は異世界そのものだからな」


「日本には刺激が足りないんだよ、非日常感っていうかさぁ!」

「日本が一番だよ。真剣で立ち合いしないし、後ろから斬られないし、いきなりクビ切られないし」

「いや、クビは切られるかもよ、解雇的な意味で」


「……あのな頌路(ショウジ)。召喚ってのは(てい)の良い誘拐なんだぞ。

俺の失踪、知ってるだろ。目の前で召喚も見てるし」

「おおよ、すげえよな、なんだろな、あれ」


「アレな、逆らえないんだ。どこでナニしてようと、絶対召喚される。

そして自分の意思では戻ってこられない。送還条件を満たすまではな」

「ほう、送還条件とは?」


「その時々によってまちまちだ。前回は"満足させる"とかいうひたすら意味不明な内容だった。俺は送還条件の事をクエストって呼んで、少しでも楽しくしようとしてるけど」

「ああね、クエストって単語だけで、めっちゃ楽しくなるのヤバイな!

緊急クエスト発生! 緊急クエスト発生!って」


「今、目下の緊急クエストは追試だけどな」

「可哀想に。オレも手伝ってやるからな?」


「それにしても……最近召喚頻度が多い気がする。

異世界に何か起きているのか?」



 なんかブツブツ言い出したぞ。

 単語が単語だけに、さすがに中二病っぽさが抜けきれなくて、自然と笑えてきてしまう。

 いや、大輔は真面目なんだ、笑ったらいかん、いかんぞ。


「それとも何か起きているのは俺の方か……」


 プッ! おまっ、それ卑怯!



 * * *



 ──そして何も起きないまま、約一年が経った。


「もう9月なのに、まだ、あっちーな」

「ああ」


 オレたちは、というか大輔は無事に三年生へと進級した。

 ここ最近、こいつが失踪することもなくて勉強も順調のようだ。


 オレ?オレはこう見えて留年とは程遠い優等生なんだぜ。

 ……言うて提出用のレポートは溜め込んでいるんだけどな。


 この前、辞典の内容を書き写したら「ネットでヒットしたぞ、やりなおし」って言われて凹んだぐらいの溜め込み量だ。


 例えがいまいちわからないって?

 まあ、モチベないってことよ。


 というわけで、気分転換が必要だな。


「大輔ー、今日お前ん()に行っていいか?」

「いいぞ、ゲームでもするか」


「おおー、スマブロしようぜ!」

「ふっ、久しぶりに腕が鳴るな」


 などと、いつも通りの会話。


 大輔と下校を共にする事はそう珍しくもないが、お互い違う駅だから毎日ってわけじゃない。

 講義の時間もずれてる事が多いし、サークルで会えたらってぐらいのペースだ。


 だけど、今日は前回の転移から一年以上経ってる。

 大輔の話の通りなら、そろそろ何か起きそうな予感がするぜぃ。


「最近、召喚ないな? そろそろじゃね?」

「……このまま召喚なんてされなければいいんだがな」


「またまた~、本当は異世界が恋しい癖に」

「馬鹿言え。大学に入ってからのペースが早すぎたんだ。

前も言ったと思うが、召喚は大体一年に一回ぐらいのペースだった。

半年に一回なんてペースで召喚されちゃ単位足りないだろ」


 それもそうか。

 でーも、なんかいいこと起きそうな予感がするんだよなぁ~!


「おっ」


 早速いいもの発見!


「見てみろよ、川に反射した夕陽が綺麗だぜ」

「子供かよ、まったく……!?」


 その時だ。


 大輔を青い光が包んだのは。


 召喚だ、召喚の光が現れた!

 本当に現れやがった!


 異世界! オレも! 連れて行け!


「大輔!!」

「なっ!?」


 掴んだ! 大輔の腕!


 おおっ、光がオレにも!


「離せ頌路(ショウジ)っ──!」


 これが、召──。



 * * *



 ──訪れる静寂。


 今しがたまで、騒いでいた大学生たちがいたはずの場所は、何も変わらず、初めから何もなかったかのようにただ、静かに……。


 夕陽を照り返す川。

 眩しいまでに赤々とした光を反射する川に、一匹の魚が跳ねる音がした。


 

二話更新といいましたがあれは嘘だ……三話更新しました。


四章へ続く

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